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白い瞳のクロノス

話の中に内容を隠すのもいいですね。

 次の日の夜になってもギアは帰ってこなかった。気になったソレイユがライセに尋ねてくる。


「ギアがいないようだけど……」


「昨日、歓楽街に行って終わったら戻るって言ってそのまま帰って来てないんだ」


「そうなのね。無事ならいいけど」


 ライセとティアリスは心配しているソレイユを連れて店へと向かうことにした。店に着くとリプルは可愛い笑顔で出迎えてくれる。


「はいはーい。いらっしゃーい! 」


 席へと案内されながらギアを探して見渡すと、昨日の席のままカードゲームを続けていた。

 リプルは飲み物を持って席に来てくれる。テーブルの上に手を着いて両膝を椅子に乗せたリプルは、花の上に羽根を休める蝶のような装いを見せていた。


「リプル、ギアは昨日からずっとカードゲームしてるの? 」


「そうね。休憩はしてるみたいだけどずっと続けたままよ」


「だいじょうぶかな」


「ギアは勝ち続けてるみたいだけど、危険かもしれないわ」


「危険って? 」


「負けてる方がこのままじゃ帰れないから終わるに終われないの」


 カードゲームをしている場所に向かうと、ギアは3人に気づいて眠そうな顔で笑っている。しかし目つきは鋭く相手の手札を見逃さない。隣にはリレインがギアの肩に手を当て勝負の行く末を楽しんでいた。


「ギア! ギャンブルはダメよ。ダーメっ! 」


 ソレイユが注意してもギアはカードゲームに夢中になったまま。3人はしょうがなくその様子を見守ることにした。


 4人で勝負するゲームはギアの左右にガラの悪い2人。正面に座る灰白のフードを被り顔を隠した男とギアは話しながらカードを切っていた。


「ギア、さすがだね。君はギャンブルにおいて未来を予想すると言うより、僕の整然な未来を次々に幻滅していく」


「相手の期待を裏切る。それがギャンブルだろ? 」


「ギャンブルは相手の心の中を探って互いの時間を奪い合うゲームだ。ギア、最後に今回の全ての額を賭けてみないかい? 」


「いいだろう。クロノス、お前は何を賭けるんだ? 」


 クロノスと呼ばれた男のフードで隠した顔からは繊細な美形を窺わせていた。痩身のクロノスは落ち着いた様子でギアに呟いた。


「君の隣にいる女性を賭けよう」


「リレインを?それじゃ賭けにならないだろ」


「はぁ? なんで私? 私はクロノスのものでも無いし、賭けの対象になんてなりたくないわ! 」


「賭けるのは彼女の未来だ。ギア、最後の勝負をするのか?しないのか?」


「勝ちゃあいいんだろ。俺が楽しめるならそれでいい」


「ギア! ちょっと待ってよ! 負けたらどうするのよ」


「ではこれが最後の勝負としよう」


 怒っているリレインのことを気にも止めずにギアとクロノスは勝負を始める。

 切られたカードの最後の手札にギアはあまりいい顔をしない。諦めたように手札を出すとクロノスの手札はそれよりも悪く、ギアが勝っていた。

 最後のゲームに白けた顔をするギアは舌打ちして言い放つ。


「なんだよっ! 面白くねぇな……」


「僕は面白かったよ。君という人物に会えたことがね」


 テーブルに並べられたクロノスのカードには決して引いてはいけない『大鎌を持った死神』が切られていた。


 勝負が終わると突然、店内の明かりが全て消えて暗闇に包まれる。辺りは騒然として客の悲鳴が聞こえる中、クロノスは黙って席を立った。ギアは拳銃を抜いてクロノスの頭に銃口を突きつけた。


「クロノス! 逃げるのか? 」


「そういえば君の頬に傷を付けたネメシスは惑星カザロフにいるよ」


「なんでそんなこと知ってんだ? お前そのフード取って顔を見せてみろ」


 今にも拳銃を撃ちそうなギアの目の前でクロノスは冷ややかに笑っていた。


「君の目は誤魔化せないようだね。ギア、楽しかったよ。また刻限ときが交わる境界で……」


 暗がりの店内、クロノスはフードに覆い隠した白灰の瞳でリレインを一瞬垣間見ると、店内の暗闇に紛れて消えていった。


 店内が騒然とする中、リレインとリプルは慣れた様子でランプに火を点けている。ランプの灯火に客が心を落ち着かせると店主が声を上げた。


「またいつもの停電だ。悪いが今日は閉店にさせてもらうよ。帰りは気をつけてくれ! 」


 停電がいつものことのように帰り支度をする客を見て、ティアリスはリプルに聞いてみた。


「リプル、停電っていつもあるのかしら? 」


「そうね。所属不明の宇宙船やラーザゼル人が近くの宙域に現れると都市や街の明かりを全て落として暗くなってしまうの」


 客がいなくなる店内でランプを配り終えたリレインはため息をついてライセ達に声を掛けてきた。


「暇になっちゃったわ。あなた達、今からちょっと出掛けてみない?」


「今から!? 」


 ギアを連れて帰ろうとしていたライセはリレインの誘いに驚いていると、リプルが思い出したのように声を上げた。


「あっ! イェンツィガのこと知ってる人を見つけたよ。ここから近いしみんなで行ってみない? 」


「イェンツィガ? 私もずっと調べていたの。知ってる人がいるなら今から行きましょう! 」


 ギアを連れて帰るはずのソレイユが賛成して、ライセとティアリスは疲れて眠そうなギアを連れて、リレインとリプル姉妹と一緒に見知らぬ街のイェンツィガのことを知る人の所へと訪ねてみることにした。


クロノスは物語の狂言回しです。

度々出てくると思います。

名前の通り物語の時間の中で登場します。

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