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不死の肉体

戦闘描写です。

 暗闇の通路にレーザーの光と音が交差する。

 数人との撃ち合いになった瞬間、通路の先のラーザゼル人はこちらを睨んだまま空間に溶け込むように消え失せる。するとクライスの隣に黒い影が現れた。


「クライス! 逃げて! 」


 黒い影はクライスの目前、転送して姿を現すとサーベルを振り翳し斬り掛かる。避けるクライスは腕を斬られ、咄嗟にライセは刀を抜いた。


  ──キィーン……

 空間に振動する刃先の高音。

 ライセの意思に反応する改良された超音波刀。

 刀は振り掛かるサーベル諸共、相手を斬り裂いた。


 ライセが斬った相手は床に倒れると、傷を負ったクライスは腕を抱えてしゃがみ込む。ティアリスがすぐに治療キットを開いた。


「クライスだいじょうぶ? 」


「……あぁ。か、かすり傷さ……」


 クライスの顔は青ざめ震えていた。ティアリスは医療キットで傷口を塞ぎ、止血の布を腕に巻いている。

 その時、ライセに斬られて倒れていた相手が突然目を見開きティアリスの服に手を掛けた。


「きゃあ! 」


 エポナは振り向き様にレーザーブレードを抜き刺し目を開けたラーザゼル人を仕留めると、闇に散って消えていく。


「ラーザゼル人は確実に仕留めるのです。彼らは自ら闇に転送する能力を身につけているのです。仕留めなければ時間を置いてまた再生することもあるのです」


 ライセ達は戦う相手の未知の生命力に驚いていた。確実に急所を狙って倒さなければ自分達が命を落としてしまう。死を恐れない相手への非情の覚悟を思い知らされていた。



 通路を進むと敵の気配が無くなっていく。進んだ先の暗い通路の壁や天井には菌類が緑に光っていた。


「……なんか気味悪いね」


「あまり趣味がいい場所とは言えないわね」


「菌類は独自の意思と伝達プログラムを持っているのです。複雑な迷路を解いたり離れた場所に突然現れることもあるのです」


 緑に光る通路を辿った先に広間が見えてくる。

 4人はその光景に驚き、通路の陰に身を隠した。

 緑の菌類が怪しく光る広間には数十体のラーザゼル人が切り刻まれ傷を負って倒れていた。その1番奥の一段上がった先、影に映る男が命乞いをする男の胸ぐらを掴んでいる。


「ガイウス! 儂を味方にすれば知識が手に入る!お、お前は惑星の、いや宇宙の力でさえも手に入れることができる! 」


「その傲慢プライドは醜いな」


 逃げ惑う男の胸ぐら掴み、ガイウスの左手は容赦なく相手の胸を突き破る。男はぐったりと意識を失うとガイウスは男の胸から緑の炎を取り出した。左手に掲げた翠炎は生きているかのように天井高く細く揺らめいている。炎を手にするガイウスはゆっくりと隠れていたエポナ達に目を向けた。


「お前ら……どうやってこの船に入ってきた? 」


 エポナは姿を現し、即座にアームのレーザーライフルを撃ち放つ。立ち上がったガイウスは的確に狙うレーザーを右手で軽く払い除けた。


「同族殺しなのです」


「お前らハイドラント人には関係ない」


 暗闇の中で翠炎を持つガイウスの白く光る目はライセとティアリスを睨んでいた。


「そこの刀を持った少年と金の髪の少女を置いていけ。でなければお前を始末する」


「置いていく訳が無いのです」


 エポナはアームのレーザーライフルを向けたまま、後ろにはライセとティアリスが、クライスは隠れたまま震えていた。


「……その少年はこの俺に名誉と屈辱の傷を付けた。相応しい死を与えてやる」


 命を奪い炎を手に浮かべたガイウスの愉悦の表情。

 菌糸が光る暗闇の中であの時の恐怖が甦る。

 暗闇に光る白い眼はライセを睨んでいる。

 眼前には狂気の足音が迫ってくる。

 恐怖に飲み込まれそうな感覚。


「それ以上近づくな!」


 ───キィーン……

 ライセは心を研ぎ澄まし刀を薙ぎ払い恐怖を振り払う。闇を斬り裂く刃動は空間に共鳴し、脳量子共鳴サイコシンパサイズは熱伝導を起こしガイウスの足元を燃え上がらせた。

 暗闇の檀上に赤い炎が燃え盛る。炎に包まれながらもガイウスは不敵な笑みを浮かべていた。


「このようなもので俺を倒せるとでも思ってるのか? 」


 炎の中でガイウスの体は焼け落ち再生を繰り返していた。

 紅焔に包まれた悪魔のように翠炎を手に掲げ笑みを浮かべる姿にライセ達は愕然としていると、武器を構えたアルティオ達が転送してくる。


「標的確認。一斉射撃します」


 アルティオは膝を付き体を固定する。両肩のレーザーランチャーとミサイルランチャーが敵を確認し照準を合わせ一気に発射し始める。ギアも両腕を伸ばして二挺拳銃を撃ち続け、エポナもレーザーを連射した。転送したソレイユとエレミアも周囲を警戒する。


 一斉射撃が炎に包まれた悪魔に命中する瞬間、ガイウスの体から黒い渦が膨張する。体を囲う黒い円はレーザーの光も物質も吸収し、悪魔の周囲に黒い光が滲み飲み込んでいく。


「……ハイドラントの子供じみた科学技術など無力だな。今からお前達が恐怖に慄き死に縋るよう1人づつ壊してやろう」


 レーザーも銃弾も炎も効かない。

 次元が違う能力。現実を凌駕する不死の肉体。

 見ていた全員の足が竦み、恐怖が心を支配する。身動き1つで悪魔に切り刻まれる。広間に横たわるラーザゼル人のように……。誰もが茫然としていると。


 闇に支配された空間に黄色い閃光がほとばしった。

 全員が振り向くと、震えて隠れていたクライスが姿を現しレーザーライフルを構えて立っていた。


 全身にスパークするプラズマ。響き渡る炸裂音。

 紳士なクライスの恐怖心が頂点に達して激昂する。


「お前が不死身ならその体ごと量子崩壊させてやる! 」


 クライスのプラズマの激昂がライフルに込められる。全身全霊を込めて放った一撃はガイウスの足元に炸裂し空間を埋め尽くす迅雷が広間を揺るがした。


 広間に激しい衝撃が走り巨大な穴が開くとガイウスの体は一瞬で消滅した。

 空間を消し去るような電撃が爆散した広間。みんなが唖然としているとエポナが呟いた。


脳量子共鳴サイコシンパサイズを利用したハイメガプラズマランチャーなのです……」


 プラズマの衝撃に広間の壁がひび割れ始めていた。アルティオは慌てて転送地点をダウンロードする。


「おい! この部屋壊れるぞ! 」


「広間が壊れます!宇宙空間に放り出されてしまう前に船内に転送して戻ってください! 」


「みんなすぐに転送して船に戻って! 」


 ライセとティアリスは力尽きてしゃがみ込むクライスに寄り添った。


「クライス立てる? 」


「……あぁ……」


 無事を確認した全員は転送バッジで船内の操縦室へと戻って行った。


文章、段落の構成を変えました。

読みやすく面白くをイメージした試行錯誤の結果です。戦闘描写は好きなので楽しく書かせてもらいました。しばらくあとにも怒涛の戦闘描写があるので書くのを楽しみにしてます。

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