6つのエレメント
星の輝きに触れたライセは手を広げて感覚を研ぎ澄ます。すると手の上の量子は熱伝導を起こし赤い炎を浮かび上がらせて燃え上がる。その炎を円になって取り囲む6人の真ん中に落とし込んでみた。
「銀河の創造主は様々な惑星に介在して生命と知恵を与えたんだ……」
エレミアは6人が取り囲む炎を見ながら集中すると手の上の量子は基底し氷の結晶が凝縮する。結晶が固まり浮かび上がると八面ダイヤの氷塊を炎の中に投げ入れた。すると氷塊は回転して炎を消し去った。
「その創造主がとても緻密な設計で多くの人類をこの銀河に誕生させましたわ」
ソレイユは冷えきった氷塊に手を差しのべて重力子を操り宙に浮かせてみる。氷塊をみんなの頭上高くまで上がると重力を帯びて粉々に砕け散っていく。氷塊は砕け、見上げる星空から輝く氷の結晶が舞い降りてくる。
「この宇宙に創られた人類は惑星から解き放たれて繋がることを望んでいる……」
クライスは手の上の量子に電荷を与え振動させてプラズマを起こしてみる。みんなが取り囲む中央にプラズマを解き放ち、周囲を光り輝かせた。
「この銀河には僕達の知らない多くの未知の真理が隠されているのさ」
光を放つプラズマにみんなは目を細めているとギアは手の上に闇を創り出して解き放つ。漆黒の闇の収縮はプラズマを飲み込み、暗がりよりも暗い闇量子は収縮を繰り返している。
「俺達は宇宙を知るためにもっと進化しないとな。繁栄と滅亡。それが人類の進化だ」
ティアリスは両手を広げて手の中に白い光を創り出した。その光を放って闇を包み込むと闇は消え去って膨張する光が辺りを温かく照らしている。
「宇宙の闇から多くの光を取り戻さないといけない」
みんなが白い光を眺めているとティアリスは光量子を操り地下神殿の星空へと解き放つ。頭上の銀河の星達は強く光って煌びやかに輝き出した。その輝きが導く光に向かってソレイユは声を上げた。
「星の輝きが私達を導いてくれた。行きましょう! 星が導く白き創星イェンツィガへ! 」
6人は千年樹が見守る星空の地下神殿を後にした。それぞれが宇宙の知恵を得て進むべき道を確信した表情は希望に満ちている。遺跡を出て蔓草の空洞に入るとソレイユとクライスが話している。
「星空の神殿は私達に宇宙の知恵を与えてくれたわ。数百年前の科学と知識。まるであの遺跡は銀河の図書館ね」
「この凝縮した宇宙の知識は見る者に応じて見方を変えてくる。僕達はもっと多くのことを探求しなければならないのさ」
みんなが話しながら帰る途中、最後を歩いていたライセがふと後ろを振り返るとそこにはあったはずの遺跡は消えて無くなっている。柔らかな日差しが降り注ぐ蔓草の広場には千年樹だけが佇んでいた。
地上に辿り着くとソレイユがアルティオに迎えに来てもらおうと金のバッジに話し掛けた。通信が終わってエメラルドの空を見上げたソレイユはエレミアと話していた。
「この惑星の住人は数百年以上前に滅亡の危機が訪れた時、残った人達は自然の循環の中で永遠に生きる道を選んだみたいね」
「惑星ラムウはかつては高度な文明を持っていたようです。蔓草に覆われ空に伸びたオベリスクはこの惑星の電磁波の活用や送受信のためですわ」
「自然の中で生きている彼らは惑星と繋がり、宇宙を見ている。宇宙の事象を感じながら互いに手を取り合って生きてるのね」
「私達地球の人類には決して到達できない永遠の循環生命と崇高な精神性ですわね」
眼鏡に指を触れエレミアが知的に話しているとギアは笑って言い放つ。
「俺からしてみりゃ永遠とか言ってる時点で滅んでんだけどな! 」
女子達が呆れた表情を見せると、ギアが二挺拳銃を空に向かって撃ち放つ。クライスもレーザーライフルを試し撃っていた。しばらくするとアルティオとエポナの巨大宇宙船が上空に姿を現した。
アルティオの通信の合図で6人の頭上に光輪を重ねた一筋の金の光が降り注ぐ。転送した操縦室にはエポナが怒って頬を膨らませていた。
「エポナどうしたの? 」
「ソレイユ! 聞いてくださいなのです。アルティオが私をいじめるのです」
「え? 何かあったの? 」
「周辺宙域に不審な宇宙船を発見してアルティオに偵察に行ってくるように言われたのです」
怒っているエポナは拗ねてソファーに座っている。船体を操縦しながら聞いていたアルティオは冷静な様子で説明してくれる。
「惑星ラムウの恒星宙域にラーザゼルの船体を確認しました。停泊しているようですが不審船であるためエポナに船内に潜入しての偵察をお願いしました」
「船内に潜入する偵察は嫌いなのです。光学迷彩の装備が可愛くないのです」
ソファーに座って拗ねているエポナにアルティオはため息をついていた。
「不審船を放置すれば宙域に被害が及びます。今から僕が偵察に向かうので皆さんはこの船でお待ちください」
アルティオの言葉に壁に寄りかかって腕を組んでいたギアが聞いてみた。
「アルティオ、ラーザゼルの船なら電磁砲か魚雷で破壊しちまえばいいんじゃねぇか? 」
「船内に誰が乗っているかわかりません。状況を確認しないといけないですし、皆さんもご存知のようにラーザゼル人は電磁砲を撃つとすぐに闇に消えてしまいます」
その言葉に誰もが黙り込む。アルティオ1人で行かせるのも心配だし、この船の操縦はアルティオにしか出来ない。考えた末にライセが提案した。
「じゃあみんなでその船体に乗り込むってのはどう?偵察じゃなくみんなで乗り込めば、もし戦うことになっても勝てるはずだよ! 」
「……僕は皆さんにご迷惑を掛けることはできません」
「みんなで行くのです。みんなで行けば隠れなくていいし怖くないのです」
エポナもライセの意見に賛成する。戸惑うアルティオにクライスは笑顔で声を掛けた。
「アルティオ、僕達は惑星ラムウで宇宙の知恵と能力を手に入れたのさ。邪魔になるかもしれないがよければ君達の力になりたいだけだよ」
「わかりました。では全員でラーザゼル人の船に乗り込みましょう。彼らは何をしてくるかわかりません。準備を整えてから向かいます」
6人はアルティオとエポナに着いて不審船へ乗り込むことにした。装備と能力を手にした6人の表情には自信と決意が表れていた。
ようやく次は戦闘描写となります。
少し情報量が多くなったので次の更新は一旦休憩でキャラ紹介します。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
最近PVが落ちてきて気力を失いつつも少しづつでも書き続けていければと思っています。
ジャンルが違うと厳しいですね(←痛感!)