危険な航海
SFは武器や装備を楽しめそうですね。
次の日、6人はハイドラントの巨大宇宙船に乗って惑星ラムウに向かうことにした。
宇宙を眺める白銀の操縦室ではアルティオが空中に浮遊するパネルに触れて操縦している。みんなはエポナと一緒にソファーに座ってその様子を眺めていた。
「アルティオ、この巨大な宇宙船を2人で操縦してるの? 」
「はい。操縦は意思を伝達するだけであとは人口知能が補正してくれます。と言ってもエポナは多くの時間を寝ているか遊んでいるので実際は僕が1人で操縦しています」
「余計なことは言わなくていいのですぅ」
エポナはふくれっ面で目線を逸らしている。ギアは巨大船の操縦室に目を見開いて周囲を見回していた。
「この船は砲撃や魚雷もついてたよな」
「電磁砲と電磁魚雷です。宇宙はとても危険な航海です。あなた達の船やあなた達自身も軽装で武器を持ってないのは僕にとってはとても不思議です」
「……今まで他の惑星の人と会ったことが無くて。宇宙が危険だということを知らなくて……」
ソレイユが言った通り武器を持ってるのはライセの日本刀だけ。考えてみれば他の惑星が地球のように安全な訳が無い。6人が不安な表情を見せているとアルティオが気遣ってくれる。
「そうですか。今から向かうラムウも安全とは言えません。船内の装備室にご案内します。そちらでお好きな武器を装備してお使いください」
船体を自動操縦にしてアルティオとエポナは装備室へと案内してくれる。そこは部屋の壁全てのショーケースに武器が並べられた広い空間。奥には射撃場も見えていた。
「す、すげぇ……」
「銃はハンドガン、マシンガン、ショットガン、ライフル、レールガン、ロケットランチャー。レーザー銃と物理銃のものがあります。各種近接武器や防具もあります。まずは未知の惑星に降りるにはその軽装から着替えた方がいいでしょう」
それぞれが壮観に並ぶ見たことも無い武器に唖然としているとエポナは女子3人を女子用の装備室に連れて行く。
ライセはハーフコートを着て、ギアは緩めのジャケット、クライスは短めのジャケットをそれぞれ白銀の服装に着替えると居並ぶ武器を手に持ってみる。
「これ撃ってみてもいいのか? 」
「はい。気に入ったものを試してみてください」
ギアは射撃場でいくつかの銃を試し打ちして選んだのは弾丸が自動装填の物理拳銃を2挺。クライスはアルティオに聞きながら命中精度の高いレーザーライフルを選ぶとライセはそれを見ているだけだった。
「ライセは選ばないのですか? 」
「僕はこれでいいや」
アルティオに刀袋を解いて日本刀を見せてみた。
「……ふむ。ちょっとそれをお借りして良いですか?原型を変えずに強化してみましょう」
「ありがとう」
刀を預けるとアルティオは装備室を出ていく。同時に女子達が装備を着替えて入ってきた。
「お前らどんな武器選んだんだ? 」
ギアが聞くとエポナのような可愛い服装に着替えてご機嫌の女子達は1人ずつお気に入りの装備を披露した。
「どうです? これよく切れますのよ」
エレミアは白銀の上着にショートパンツを身につけて、両足の太もものベルトに掛けた柄を両手に持つと刃渡りが広い青いレーザーブレードを2本光らせた。
「このレーザーは強度が調整できて殺傷能力もあるみたい」
ソレイユは白銀の上着とスカート。胸のポケットからペンを出すと、それはポインターのように直線の緑の光を発していた。
「これは閃光玉や催涙玉とか麻痺玉とか火炎玉とかいろいろあって、あっ……」
ティアリスは上下繋がった白銀のワンピース。ポケットからコンパクトのような小さな箱を取り出して、そこから丸い玉を指で摘んで見せていると白く小さな玉がティアリスの手から床に落ちていく。コロコロと転がる玉はギアの足元に止まると辺り一面に眩しい閃光が光り出す。
「うぁああ! 」
その場にいる全員の目に光が差し込み一瞬で周りが見えなくなった。
「目がぁ……目がぁぁ……」
みんなでお互いにぶつかりながらふらついているとアルティオが日本刀を改良して戻ってきた。
目を閉じて装備室をふらついてるみんなを見て呆れた表情でエポナに言った。
「エポナ、またおかしな遊びをしてるのかな? 」
「私じゃないのですぅ……目がぁ目が見えないのですぅ……」
アルティオは日本刀を改良して肩に担げるようにリュックに入れてライセに渡した。
「少し改良して超音波刀にしてみました」
「超音波刀?」
「持ち主の意思に反映して刃先の粒子が超音波に振動して鋭さが増します」
「すごい! ありがとう! アルティオ」
視力が戻って操縦室に戻ると巨大船は惑星ラムウに着いていた。
それは緑の惑星。距離を縮めて大気圏に突入すると空はエメラルド色。空も地上も緑に包まれていた。緑あふれる惑星を見下ろしながらライセはアルティオに聞いてみた。
「アルティオ、なんで僕達をこの惑星に? 」
「あなた達を最初に見た時に、この惑星にかつて生きていたラムウ人とどこか似ている気がしたのです」
「僕達と? 」
「かつてこの惑星に生きていたラムウ人はとても精神性の高い種族でした。しかし今はこの惑星にはいません」
「この惑星にいたラムウ人はどこに行ったの? 」
「生き方の違いで別の惑星に移住しました。私達ハイドラント人はラムウ人と交流が無いため惑星を降りることができません。しかしきっとあなた達なら……」
水草に敷きつめられた海から陸を探すとアルティオは上空で停泊する。
「他の惑星からの来訪者の情報によると、かつて宇宙の知識があったのはこの辺りの地上になるそうです」
6人を代表してソレイユが笑顔で返事をした。
「ここまで送ってくれただけで助かります。あとは私達で探してみます」
「終わりましたらバッジの通信装置でお知らせください。僕とエポナは周辺宙域を警戒巡航しています」
「何かあったらすぐに知らせるのです」
「はい。ありがとうございます」
6人はバッジの転送装置で蔓草に覆われた惑星ラムウの地上へと降りて行った。
海外のSF映画や小説も読んだりしますが、なぜか主人公や人物がおじさんだったりする。ハゲてたりヒゲだったりアメコミのSFや宇宙に行くのは大人というのが基本設定なのかもしれませんね。
高校生や子供なんて宇宙に行けるはずないといったいろいろなSFの常識を破りたいですね。