銀河の交差点
アルティオとエポナ←この名前気に入ってます。
ちなみにハイドラントは発音が気に入ったので使っていますが消火栓という意味らしい…
格納されたジェネシス号に戻った2人。船内ではティアリスがクライスとエレミアの心を落ち着かせるために生体維持装置に入れて寝かせていた。頬に傷を負ったギアにも休むように話したが、ギアは2人が帰ってくるまで待っていた。
ソレイユはそれぞれに理由を話していく。ここは天の川銀河だから必ず地球に帰れると言って。ゆっくり休憩を取った後にはみんなの心は落ち着いていた。
集まってそれぞれが話をすると未知の高度な文明への恐怖心よりも好奇心に満たされていく。1人ずつバイザーをかけて惑星ハイドラントに降りる準備をしていた。
数時間後、巨大宇宙船は惑星に到着してハッチが開いて外に出てみると、ドックには同じ型の白銀の巨大宇宙船が整然と並んでいた。全員がその凄まじい規模に呆然となって眺めていると、アルティオとエポナが出迎えに来てくれる。挨拶と自己紹介をすると滞在するための部屋へと案内してもらった。
移動中にクライスは彼らと話をしてみた。
「君達の惑星ハイドラントは地球からは観測できてないようなんだがどうしてだろう」
アルティオは歩きながら丁寧に応えてくれる。
「ハイドラントはある理由で惑星全体を電磁バリアで覆っています。電磁波は惑星全体を不可視化して電波による探知もできません。許可した宇宙船のみ帰港できますが、他の惑星からの訪問を拒絶している訳では無いのです」
「だから観測できてなかったのか。高度な文明にもいろいろ理由があるようだね。ハイドラントは他の惑星との交流を持たれたりしているのかな? 」
「はい。ハイドラントは別名『銀河の交差点』と言われて、この周辺宙域には数種族が密集して互いに交流を保っています。但し、交流を持つ惑星は、機構上もしくは精神的、技術的に惑星内において種族の統一が成されていることを条件です」
「惑星内で種族の統一が成されてない場合はどうなるのだろう?」
「統一が成されていない惑星との交流はこちらからの侵略となる可能性があるため、決してこちらの存在を明らかにしないというルールが惑星間で守られています」
「アルティオ。残念だけど、僕達の地球は種族が分かれてまだ惑星内の統一が成されてない。僕達は君達と交流をしてよかったのだろうか……」
「クライス、あなた達はこの広い銀河において偶然に危機的な状況で私達と接触しました。ここで得た情報や技術はあなた達の惑星に帰って普及しても良いのですが、惑星統一が成されて無い限り、その惑星の争いや滅亡については私達から関わることは無いでしょう」
クライスは今まで地球に異星人が来なかった理由に納得していた。宇宙を航海し得る技術を持つ文明であるなら他文明への配慮ができる精神性もあることを。
ドックのエレベーターを出ると案内された高層階の部屋は壁一面が流曲面の外窓から都市が一望できた。景色は夜空に包まれて整然と並ぶ滑らかな高層建築物はどれも銀色に輝く流曲面を描いていて、夜空から漏れる星明かりを反射していた。構造物の壁が空からの光を反射し合って効率よく都市を照明して熱エネルギーも吸収しているらしい。
整然と区画された美しい未来都市を見下ろしていると、ライセが一点だけ周囲が暗く蛍光色が集中している区画を見つけた。
「あの暗く光が集まってる場所は何? 」
「あれは繁華街ですが、初めての訪問者にはあまりお勧めできません」
アルティオが応えるとエポナがポケットから金のバッジを6つ取り出した。
「自由に街を歩いてもらって良いのですが、念の為にこのバッジを付けるのです」
6人はそれぞれ金のバッジを手渡された。クライスは早速金のバッジを胸につけて聞いてみる。
「これはどういったものなんだい? 」
「これを付けて街を歩いてもらえれば居場所が確認できて他の惑星の方とも話すことができるのです」
「GPSと通信、翻訳機能だね。ハイドラントの最先端技術といったところかな」
「他にも機能があるのですがそれはまた話すのです」
アルティオとエポナはまた明日話そうと言って穏やかに笑って出ていった。その後は各自に用意された広く心地の良い部屋で美しい夜景を見ながらゆっくりと眠りに着くことにした。
心情的な描写を全てカットしました。
フェルミのパラドックス(宇宙人はなぜ地球に来ないのか)をご存知の方は考えてみて欲しい。
銀河には数十億個の地球に似た惑星があるらしいです。なぜ地球に来ないのか?まだ進化途上の無人島が遠く離れた場所にあるとしたら観察する程度かと、それが彼らと同程度の文明となった際に初めて交流することになると思います。