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生みの親はやはりキレていた! 名作シリーズの軌道修正と銀河一の賞金稼ぎの悲哀

 リメイク、リブート、リファイン。

 映像作品というものは国内外を通じて様々な言葉で作り直されることがある。


 そんな中で「作品単体はよそにシリーズとしては最低のリブート」と称されて、それが多くの者に支持される実写映画シリーズがある。


 いわなくてもわかるだろう。

 スターウォーズだ。


 2001年宇宙の旅といった名作映画が宇宙とSFという存在を定着させて以降、様々なSFシリーズが展開された。

 中でもアメリカでは二大巨頭といえるのが「スターウォーズ」と「スタートレック」ではないだろうか。


 筆者はあまりスタートレックについては詳しくないのだが、スターウォーズについてはかつてEP1の頃にレゴ社がルーカスフィルムと組んでキャンペーンとして開催していた「レゴで作る新スペースシップ募集コンテスト」に応募して見事に落選するなど、それなりに熱中していた時期がある。


 ちなみにこのレゴのキャンペーン、実際に誰か受賞してEP2に採用されたりしたのだろうか?

 触れ込みは大賞受賞者は劇中に登場するとのことだったが、実際にそういう話がEP2以降にあった記憶が無い。


 誰かその後の展開について知っていたら教えていただけると幸いである。


 それはそれとして、スターウォーズについてはEP8公開前後で、こんな噂がまことしやかに囁かれていた。


「一連のシリーズにルーカスが激怒しており、EP7~EP9までのシリーズは無かったことになるかもしれない」


 こういう話である。

 私はこの話を見たときは「さすがに希望的観測に基づく妄想も甚だしい」と考えていたが……


 どうやらこの噂、一部は事実であったようだ。

 ただし、当人が激怒したのはEP7~EP9ではないことをこの場で述べておく。


 その上で彼が一体何に激怒し、その結果ディズニー社がどういう軌道修正を迫られたのかについて改めて国外の情報をまとめてこの場にて説明しよう。


 その結果誕生した大人気TV実写シリーズと、その煽りを完全に食らった悲しき人気キャラクターを中心に語ることにする。


 さて、ルーカス本人が激怒した作品、それは一体何かと言うとスピンオフ映画である。

 当然にしてローグワンではない。


 ローグワンについてはむしろEP7~EP9よりも評価は上だし、ルーカスも極めて好意的で「主役を殺さず、後のシリーズを展開してもよかった」――などと述べるほどである。


 一方で今日までにルーカスが一切コメントしていない作品がある。

 もうここまで語ればある程度のファンならばおわかりであろう。


 そう、「ハン・ソロ」だ。


 正直言ってこいつが全ての元凶であり、ディズニー社が様々な意味で頭を抱え、さらに最終的にEP9以降の新サーガ形成すら頓挫させた存在である。


 といっても本スピンオフはディズニー社に権利が移動してから作られたものなので、ある意味自業自得なのだが……


 だとしても、これによって彼らはスターウォーズというのは絶対に手を抜けない作品なのだということを再確認したのは間違いない。


 このハン・ソロの映画についてなのだが、これは一体何なのかといえばディズニー社に権利が移って移行に計画された一連の「スピンオフ」シリーズであり、スターウォーズの今後はEP7~9、そして次の新サーガを放送しつつもそのスピンオフを隔年でもって公開していくという「アヴェンジャーズ」などのマーベルヒーローシリーズのようなことをディズニーが計画して製作、放映された映画だ。


 一連のスピンオフは往年のファンを惹きつける目的で、新サーガは新たなファン獲得を目的に製作され、実際にハン・ソロは公開にまで至ったのである。


 どうなったかについてはおわかりであろう。

 あのルーカスすら激怒するほどの内容で、往年のファンからは「絶対に認めたくない」というような内容になった。


 なるべくネタバレは避ける方向性で語るが、本作品の最大の問題点はハン・ソロの人間性やその他よりも「EP4」と完全に矛盾する描写、そしてEP4~EP9に至るまでの辻褄が合わぬ描写が散見されることである。


 特にやってはいけなかったのがジェダイ関係の描写である。

 EP4で劇中ジェダイについて言及するハン・ソロの台詞に極めて矛盾的な描写がなされ、まるでEP4のソロがただの健忘症にかかったような状態に見受けられるのだ。


 また、そもそも本作はEP3~EP4の間というが、なぜかEP2~EP3のような時代背景に感じる描写が多く、こういった多くの時系列的矛盾等により酷評された。


 公開後においてスタッフは製作期間が短かったからとか、脚本がめちゃくちゃ矛盾だらけでその場で脚本を修正してアドリブ台詞を重ねたからとか言い訳に終始しているが、それはさらに火に油を注ぐ形となった。


 そして本作を何よりも認めなかったのが、他でもないルーカス本人であったということだ。

 つい先日それが事実だったことをディズニーサイド含めて公にした。


 この理由を公としたことについて説明しておくと、新サーガと一連のスピンオフ計画の予定表が撤回されたからである。


 つまり白紙撤回され、その理由が「ハン・ソロ」にあったことをディズニーが認めたわけだ。

 ただし、多くのファンはむしろディズニー側のコメントとルーカス側のコメントに安堵している。


 おまけにディズニー側も大したダメージとは感じていない。


 なぜなら、ルーカスが激怒したことで誕生した新TVドラマシリーズが本国を含め大ヒットしているからだ。


 そう、最近TVCMも見るようになった「スターウォーズ マンダロリアン」


 この傑作ドラマシリーズの人気がうなぎのぼりだったので、ディズニー側も軌道修正について認めるに至ったわけであり、ルーカス側も公にして良い時期と認めて公開するに至ったのである。


 彼らが一連の状況について説明したのは現在放送中のマンダロリアンシーズン2の放映直前。

 爆発的人気によりすでにシーズン2に至っているマンダロリアンだが、こいつの誕生経緯はルーカスが激怒したことによってだった。


 そしてその結果……銀河一の賞金稼ぎは三度主役となることができず、主人公の座をまたよくわからない似たようなヘルメットを身に着けたパチモンに譲ることになるわけである。


 ただし、筆者も含めて往年のファンはこのパチモンを「本物以上」として捉えているだけでなく、設定上もマンダロリアンの主人公は「本物」であり、真のマンダロリアン戦士である。


 パチモンはこれまで影で人気を誇ってきた、銀河一、二位を争う賞金稼ぎ「ボバ・フェット」そのものだった。


 といっても、実は彼もマンダロリアンシーズン2より登場していて……どうやら主人公ではないが主役の立場とはなれるようだ。(ついでにいうとスピンオフの主人公作品もシーズン2の後にやるようだ)


 それではマンダロリアン誕生の経緯について詳しく掘り下げていくこととしよう。


 ハン・ソロ公開後からすぐにルーカスはディズニーと交渉を開始する。


 この時のルーカスは冗談抜きで「全米中の資産家に協力を促してディズニーから版権を買い戻す」といわんばかりの気迫があり、ディズニー側も相当慎重な交渉を迫られたようだ。


 ルーカスが特に激怒しているのが、ルーカスフィルムが権利を明け渡す条件だ。


「往年のファンを大切にする」


 これはEP7公開前からディズニーに契約書を書かせたと語られるほどだが、ディズニー側は「少なくともスピンオフではこれを完遂する」と述べ、ルーカスも見守っていた。


 彼らは言葉通り、EP7~9までの間に往年のキャラのほとんどを殺してしまった一方で、ファンの期待を裏切らないとされたハン・ソロはそれ未満の駄作であり、ルーカスは「大切にしていない」と激怒。


 その上でEP8~EP9の間に放映予定だった「ボバ・フェット」「ケノービ」の二作の製作状況と、脚本について確認させてほしい旨を要求し、ディズニーはこれを認める。


 そしてルーカスはディズニーにこう迫ったのである。


「この二作は白紙化しろ、認めない。その上で緊急事態につき私が指揮をとる。新作ドラマシリーズについて製作を指導し、そのための人員も私が選択する。反論は認めない」



 ちなみに、双方の内容について判明している部分を説明するとボバ・フェットはEP2~EP4頃の若い頃の話で、ケノービはEP1より前の話であった。


 どちらも若い時代のキャラとすることで、人間性その他の描写で本家シリーズより劣っていても「若いから仕方ないよね? テヘッ」――でディズニーは済ませようと思っていた様子だ。


 それはハン・ソロでもやったことだが、ルーカスは脚本内容から完全に二の舞になることを理解し、白紙化させた。


 ディズニーとしても、ハン・ソロについてはガチで関係者の殺害予告などにも発展していたため、それを認めるに至るわけである。


 その結果、突如として登場したのが「マンダロリアン」なのであった。


 往年のファンからしたら本当に何の前触れもなく突如として登場したのだ、この作品は。

 本当にそうなのである。


 そもそも「すでにシーズン1が終わっている」ことすら知らない日本人も極めて多い。

 あまり宣伝されてこなかったためである。


 そんな時間すらなかったのだ。


 だが、そんな時間も何もかも足りない状況にて、ルーカスは自身が頼れる人材を集めて直接関与していることを伏せながらシーズン1を製作。


 そのシーズン1の製作に携わったのは、CGアニメの長編であるクローンウォーズシリーズや反乱者達の製作に関わった者や……なんとEP4の頃に関わったスタッフなどであった。


 特にEP4の頃に関わったスタッフがなぜ参加したのかについてはあるキャラのためであり後述するが……


 その結果誕生したのがローグワン以上に名作と感じられる「マンダロリアンシリーズ」なのである。


 実際の内容について触れてみよう。

 時代設定はEP6の後、EP7の前である。


 主人公はどこかで見たことがあるヘルメットを身に着けている。

 その上で賞金稼ぎである。


 あれ? などと思った方は正しい。

 実はこれ、当初はボバ・フェットでやろうとしていた作品だったのだ。

(それがゆえにボバ・フェットと関係する、とあるドロイドも別人として同一形式のものが出てきたりなどする)


 なぜ新キャラになったかというと、ディズニー側が「既存キャラだと版権的に旨みがないし、そもそも既存キャラだと今の炎上した状況では良作以上となっても凡作未満とレッテルを貼られかねない。新サーガも展開したいので新キャラを作ってほしい」――と、ルーカス側に要望を出したためである。


 そしてルーカス本人も、自身が構想していた新サーガともいえる新しい系譜において「ボバ・フェット」は相応しい人物像ではないと考えたのであろう。


 そのため、見た目がよく似たパチモンのような姿となってしまった。


 ただし何度も言うが、劇中設定、そしてキャラクターの性格その他全て含めてこの主人公は「本物」及び「本物以上」と述べておこう。


 ちなみにこれはボバにとっては通算2度目の悲劇である。


 マンダロリアンを語る前に一連のマンダロリアン戦士とボバフェットについて語る必要性があるかもしれないため、ここで触れておこう。


 ボバフェットはEP5に登場させる目的で新作されたキャラクターで、初登場はEP5の前座のアニメ作品である。


 ここで銀河でも有数の賞金稼ぎとして描写された彼はEP5で晴れて登場。

 フォースを操るベイダーの仕掛けた警戒網をかいくぐるハン・ソロを見事追撃して最終的に捕獲することに成功する。


 この時の依頼主はベイダー本人であり、その一方で彼はジャバ・ザ・ハットがソロに賞金をかけていることを知っていたため、ソロ本人の身柄をベイダーに要求する。


 ベイダーは彼を劇中「銀河一の賞金稼ぎ」と述べて快く取引に応じて身柄を引き渡し、最終的にそれはEP6序盤へと繋がるわけだ。


 余談だがベイダーがこの時に雇った賞金稼ぎは他にもおり、その中にはボバと同等かそれ以上といわれた人型ドロイドもいたりする。(同型はマンダロリアンでも登場して暴れまわる)


 だが、最終的にソロはボバ以外の賞金稼ぎを出し抜いたという意味でベイダーは彼を「銀河一」と評すわけだが……


 ここにさらに器の大きさを見せ付けてカリスマ性を描写する一連のシークエンスについては、ベイダー、ボバ双方の人気を不動のものとし、特にベイダーと劇中タメ口で会話するキャラは極めて少ないが、以前からの知り合いという裏設定によって気兼ねなく互いに話し合う姿はファンを惹きつけ……


 以降ボバのファンは彼の登場をシリーズごとに願うようになるのだ。(ため口については、台詞描写より以前から様々な人間を捕らえてくるよう依頼していた様子を示して違和感なく感じるよう演出されている)


 しかし、一連の展開が後の悲哀に繋がることを40年前のファンはまだ知らぬのだった。


 多くの要望を頂いて満を持して登場したEP6では……一矢報いるもののルークにあっけなくやられ、さらにギャグ的なドナルド・ダックのような不運にも見舞われてあっさり退場する。


 ちなみに明らかに死んだように感じるが、当初は本当に死んだことにしようと思ったものの、ファンの批判により「生きています」ということにされたのはファンの中では有名。


 結果的にEP7以降の登場の機会を確保することとなった。

 だが二度目の悲哀はある程度経過してから訪れる。


 新サーガとしてEP1~EP3までの製作が決定されると、当然ボバフェットは当時は中身が人間などとは設定されていなかったために、スターウォーズシリーズでは極めて長寿な種族もいることから「EP1もそれなりの活躍をしてほしいい!」といったような要望がなされ……


 最終的にルーカスはそういったファンのために、EP1はあまりにも時代が古すぎるので出すのを諦めたもののEP2で出すこととするのだった。


 それは彼からすれば「ファンの期待を最大限に応えた描写」だったかもしれない……

 しかし、EP2では多くのファンの心にダメージを与えることになる。


 簡単に言うと「人間じゃねーか!」「ガキじゃねーか!」「なんだこのオッサン!」

 そう、これまで種族すら謎とされてきたボバ・フェットは……あっさり人間にされてしまうのだ。


 それだけでなく、本人は子供の姿で……よく似た見た目のパチモンが登場して劇中では活躍するのである。


 それもパチモンについてはある意味で「本物」であり、それどころかそれとは別に「大量のパチモン」が登場して暴れまわることになる。


 まさかそれが40年を経た大人気作で自らの立場を二度も奪うなど知る由もないのだが、ここで登場したフェットはボバではなくジャンゴといい、彼の父親で……さらに言うと彼はその父親の純粋クローンであるという設定にされた。


 一応言うとジャンゴ自体の能力は当時銀河一といわれるだけあって、あのオビワンに善戦するほどである。


 だがEP6のギャグ的な運の無さなどはここでも描写され……最終的にそれが遠因で死亡してしまう。


 一応物語の引き立て役としてはオビワンに善戦、名も無きジェダイを瞬殺、当時最強のジェダイの一角たるメイスにはあっさりやられる――と、存分にその立場を発揮して各々の戦闘力の差を見せつけ、その上でジェダイでも素の人間相手にやられることがあるという描写をしたことは一層EP2の内容を濃くしたことは事実。


 だが、ボバ本人を求めていたファンからすると「コレジャナイ」というのは言うまでも無く……


 その上、「こういうのがええんやろ?」とばかりに登場したクローントルーパーなんかは、パチモン度がさらに上がったヘルメットを身に着けた者達であり、ボバそのものを愛するファンを困惑させるには十分だった。


 そのため、一連のシリーズが終わってEP7が出ると聞いたとき、「ようやく俺たちのボバが!」――などと考えた者達もいたのだが……残念ながらEP7~EP9に出ることは無かった。


 まあ人間だからね……年齢的にはおじいちゃんだからね……無理でしょう。

 ヘタに微妙なキャラにするわけにもいかないし。


 おまけにディズニーはスピンオフでボバを推していきたかったので出さなかった。

 結果的に彼は「主人公になるから」ということでEP7~EP9で一切の登場機会を失ったのだ。


 だが、その主人公になるからという機会すら奪われた。

 それも奪ったのはルーカス本人の手によってである。

 引導を渡されたと言った方がいいのかもしれない。


 本来ならボバのファンは激怒してルーカス側に抗議してもいいぐらいな状況なのだが……


 多くのファンは現在、このような評価を下している。


「は? ボバフェット? そういえばいたっけな、そんな脇役」


「俺の知ってるマンダロリアンの主人公はマンドだから。あいつは真のマンダロリアンで銀河一の賞金稼ぎだから!」


 ボバが好きな多くの信者を虜にした存在、それこそが「マンダロリアン」の主人公である「マンド(本名は別にあるが、劇中ネタバレとなるので解説側でも使われるマンドと本エッセイでは呼称)」なのだ。


 さて、彼は一体どういう人物なのかというと……銀河一、二位を争う賞金稼ぎである。


 もちろん、そんなことを言われれば「いやいやいや、ボバがいるだろ! こんなパチモンしらねえよ! 誰だよ! 今まで一度も出てきてないよ!」――ってなる人もいるだろう。


 当然ちゃんと劇中内で描写されている。


 題名につくマンダロリアンというのは元々スターウォーズシリーズで一貫して設定されていた種族だ。

 惑星名であり、その一連の種族名である。


 この惑星の種族はみな賞金稼ぎであり、政府が認めた賞金稼ぎを「マンダロリアン戦士」と呼んでその能力にお墨付きを与えているのだ。


 ちなみに政府の中枢にいる族長が認めた者だけが「マンダロリアン戦士」を名乗ることができる。

 一連の設定はクローンウォーズなどで実際に描写され、実はマンダロリアン戦士は実際にCGアニメ作品で出てくる。


 その上で一連のスピンオフでは「ジャンゴは出身者だが族長に認められていない」「当然ボバはマンダロリアンでもなんでもない」――などという描写がなされた。


 一方で、主人公のマンドは序盤に出会った人物からこういう台詞が投げかけられる。


「あんたマンダロリアンか? 本物か?」

「そうだ。正真正銘のマンダロリアンだ」


 これはおそらくボバなどの活躍により偽者が多く現れてマンダロリアンのイメージが崩れている一方、少なからず存在した本物の腕前はどれも一級品で評価されていたことを表しているのであろう。


 実はこの主人公、「族長」が認めた「マンダロリアン戦士の中のマンダロリアン戦士」なのである。


 実際にホームページなどでは「銀河一、二位を争う賞金稼ぎ」と語られ、劇中の描写についてはこれまでのスターウォーズ登場キャラの中でもメイスなどの一部最強格を抜いたらガチで最強と言える圧倒的強さである。


 まじめな話、本気の彼はEP2のオビワンすら倒せそうな勢いすらある。

 わずかEP1~EP5までの中で50人近くの敵を葬り、一切の容赦が無い。

 しかも対峙した敵はやられ役のストームトルーパーだけではないのだ。


 銀河一といわれてまったく違和感を感じない強さである。


 ではなぜ、これまでボバが銀河一といわれていたのか。

 それは彼の過去の出自に由来する。


 クローン大戦中に誕生したマンドは、かねてより銀河帝国の様々な悪行を目にして育った。


 母国ともいえるマンダロリアンは銀河帝国の枠組みに入れられたものの、族長など多くの者が銀河帝国に完全に従うそぶりを見せず、彼本人もEP4~EP6の間は銀河帝国とは縁を切るために隠居同然の立場で何かやっていたようである。(彼の過去についてはシーズン2にて判明する)


 ともすると「反乱軍」側にすら加わってそうな設定の余地すら残しているが、おかげで銀河一はボバに譲ったわけであり、マンド本人はまるで知られぬマンダロリアン戦士となったわけだ。


 彼が活動を再開したのがEP6以降。

 つまりルークがベイダーをジェダイへと帰還させ、アナキンが皇帝を葬ることで崩壊した銀河帝国によって解き放たれてからである。


 そんな彼はこれまでの人生経験からドロイドも大嫌いで、そういった一連の設定から従来までのスターウォーズの主人公像である「人間ジェダイ+ドロイド」といったような王道を蹴り倒すような設定となっているものの……


 物語の王道から外れない設定及び性格がゆえに全く違和感を覚えず、むしろレイのような微妙すぎるキャラクターが、いかに縛りが多すぎてメアリー・スーともいえるほど微妙な存在として誕生してしまったのかを証明してくれる立場にある。


 とにかく劇中の動き、台詞は渋い。

 言葉数も多くない。

 だが、ヘルメットの奥にある熱い感情は少ない言葉などから読み取れるのが面白い。


 そんな彼を見るとつい浮かんでくるのが……西部劇のキャラ、もといマカロニウェスタンの立役者、クリント・イーストウッドだ。


 素顔が判明しない頃の多くの二次創作にてその顔がイーストウッドにされていたのも、仕草などが大きくインスパイアされているからだが……劇中の射撃時の姿勢などから、明らかにマンドは「西部劇の主人公」のようなモーションを行うのである。


 特に早撃ち対決などでは完全に動きがリボルバーを操るガンマンそのもので、レーザー銃なのにも関わらずやたらと格好いいのだ。


 ジャンゴやボバがあくまでオートマチックピストルを撃つような姿勢で射撃していたのとは大違いなのである。


 またカウボーイ的な要素も入れたいのか、これまで敵に巻きつけるだけでしか使わなかったワイヤーを用いたCQBを多用し、接近戦も非常に強い。(特にCQBについてはボバと違い直伝の技がある模様)


 どうやらこれは意図的な演出であるようで、シーズン1の舞台であるタトゥイーンを荒野に見立て、宇宙西部劇をやりたかったというのがマンダロリアンスタッフの思いらしい。(シーズン1のポスターなどでも明らかに夕陽のガンマンなどを意識している)


 台詞回し、動き、話の展開がいわゆるマカロニウェスタンと類似するのもそのため。

 ただし、マンドのキャラ付けについてはイーストウッドだけでなく、強くインスパイアされているのが他にもある。


 それが「子連れ狼」の「拝一刀」と、座頭市シリーズの「市」だ。

 どちらもスタッフ側から「強く影響を受けた」と明言されている。


 実際に劇中では子連れ狼同然の立場となるし、座頭市の市のような人情物の展開、そして単なる賞金稼ぎではない人情あふれるマンドの姿を見ることができる。


 おそらく筆者が強くひきつけられるのは、この双方を合わせたキャラだからなのだろう。


 元々用心棒の三船敏郎などをイメージの1つに据え置いたベイダーなど、日本の実写名作映画のキャラはスターウォーズと深く関係があるのだが、マンドも例外ではないのだ。


 ルーカスは当初からこういうキャラを求めていたというのだが……


 これがボバとは矛盾するために新キャラを作りたかったとされる。

 ディズニーの要望に対し、ルーカス本人も同様の考えを持っていたのだ。


 それこそがボバは「金のために動くアウトロー」で、ベイダーから慕われるような純粋アウトローとして描写された賞金稼ぎ。


 いわゆるGTAシリーズなどに出てきそうなキャラという点だ。

 マンドのような言動だと「ならばなぜソロを!」ってなる。


 でもマンドの徹底した描写だと各種説明の説得力が増すのだ。

 マンドという新キャラクターを創造したからこそできる芸当といっていい。


 彼は劇中、マンダロリアンというのは「血でも血脈ではない、承継され続けた伝統と思想だ」――といったような言葉を述べる。


 実はマンダロリアンというのは種族問わずに世界各地から孤児を保護して、その中でも優秀な人材を賞金稼ぎとして育て上げて各地に派遣し、惑星そのものを成り立たせていたのである。


 ゆえに彼は特に子供に対してとても優しく、とにかく子供を守ろうとする。

 これはマンダロリアン全てにあてはまることだと述べ、次の世代を担う幼い命を無碍にするような者を否定しようとするのだ。


 こういった人間味溢れる描写をボバでやられても「なんか綺麗になっちゃった」――などとなって違和感を感じるのは間違いない。


 そして、一連の描写が見事だからこそあっちで爆発的な人気で脚光を浴びる主人公となったのだろう。


 おかげでシーズン2に出てきたボバさんはなんか普通に脇役になっちゃったよ!


 スタッフのお遊びなのかシーズン2の台詞を見ると明らかに「これまでの悲しき経緯」を意識したようなものがあり……主人公が困惑する1シーンがある。


 一部のボバ一途なファンを代弁したのだと思うが、でも多くのファンが銀ピカのアーマーを身につけた謎多きマンドに傾いているのは言うまでもない。


 そしてそんなマンドは単純に賞金稼ぎ仕事を劇中やっているわけではない。

 実際の主軸となっているのはもう1つの存在……そして子連れ狼からインスパイアを受けた理由がある。


 実はマンド、王道の物語とするために設定は賞金稼ぎだが、物語の展開の主軸を担っているのは彼ではない。


 一連の設定はスパイスでしかなく、シーズン1ではとりあえず賞金稼ぎの依頼こそ受けてストーリーがはじまるものの、実際に彼がやっているのはそのための仕事ではなく……子供を守るという純粋な王道物語なのだ。


 彼が守る子供というのが……50歳児のエイリアンである。

 自分より年上なのだが、子供なエイリアンである。


 一体なにか?

 ポスターを見れば即わかるであろう。


 ヨーダと同一種族の子供である。

 900年以上を生きるとされるヨーダの種族は、ヨーダの設定が深く掘り下げられた頃から150年ぐらいしないと成人できず、人間の10倍老化が遅いとされていた。


 ゆえに50歳といっても人間年齢5歳ぐらいである……実際には3歳ぐらいに感じるが5歳ぐらいが生物としての年齢である。


 そんな彼はなんとフォースが使え、それが物語に大きな影響を与え……奪い合いが生じるのである。

 その力を手に入れて銀河帝国を再興したい側と、単なる賞金稼ぎだが将来のマンダロリアンをも視野にいれ、そして生来のマンダロリアンの伝統と自らの人生経験より子供を守るという強い意志を持つマンド。


 双方のぶつかり合いが主軸。

 そして恐ろしいことにこの子供……ジェダイではない。

 シスでもない。


 ……にも関わらず「どちらの能力」もフォースとして使えるのだ。


 劇中「フォースチョーク」などの明らかに暗黒面の技も使うが、一方「フォースヒーリング」などのライトサイドの究極系すら使える。(実際にヒーリングはダークサイドという話もあるが、もしかするとどっちでもないフォースの究極系という話なのかもしれない)


 まじめな話、こいつヨーダより上じゃない? といったような人物がいるのである。


 一応言うと、クローンウォーズにて「ザ・ワンズ」と呼ばれるどちらも極めようとしたジェダイでもシスでもない一族がいたことが語られ、アナキンは修行を続ければこの領域に到達できるとされていた。


 劇中最強のジェダイと呼称するルーカスが新たなサーガとして誕生させたのは……そのアナキンすら超えそうな何かなのである。


 このキャラ、ルーカス本人が考えたのいうのだから恐ろしいのだが、劇中の動きを見るとルーカスがこれまで描写したキモカワエイリアンに通じるところがあるので可愛いっちゃ可愛い。


 ちなみにCGではない。

 全て人形で動かしており、完全な実写である。


 しかもスタッフはE.TやスターウォーズのEP4で人形を動かし、人形時代のヨーダを動かしていたベテランもといいぶし銀な方々である。(ゆえにE.Tをインスパイアしたシーンがいくつかあるが、ルーカスはE.Tにも関与している)


 それが今の時代において全く時代遅れと思えぬ動きをするのは、人形自体が技術的発展によりより高度に動かせるようになったかららしい。


 あえて人形としたのはルーカスがEP3までのヨーダを演出している際に「俳優がヨーダと演技をする時の表情がうそ臭く感じたから」――で、リアルに動く人形を前にしたほうが演技がより引き締まるからだという。


 そのためだけに古きスタッフを呼び寄せてまでザ・チャイルド(こちらも後に本名が判明)と呼ばれるキャラを描写したのだ。


 実際に本編を見ると確かに俳優はザ・チャイルドに向けて様々な表情を見せる。

 ヘルメットで見えないマンドも例外ではない。


 やはりよくわからない何かに語りかけるのと、そうでないのでは演技を行う側の意識も変わってくるのだろう。


 こういった一連の努力により、傾きかけたスターウォーズはよみがえった。


 ルーカスはどうやら以降も積極的に関わるようで、実はクローンウォーズ・ファイナルという2020に公開されたCGアニメシリーズでも原案と称して積極的に脚本内容に介入して監修を行ったことを認めている。


 そしてマンダロリアンの次のシリーズである「オビワン」の実写ドラマも同様に事実上の監修を勤めるようだ。(その前の段階でボバのスピンオフもなんだかんだやるようだ。マンダロリアンシーズン2の後の時代であるようだが)


 オビワンに関しては事実上のCGアニメシリーズの反乱者達達の続編とも言える内容で、ダースモールとオビワンのラストバトルが描写されることがすでに予告されている。


 反乱者達のラストでもそれは描写されたが、あのED描写からオビワンに繋がるまでにかなりの時間の経過があり、そこをオビワンを中心に描写するようだ。


 本国ではファンから「これならば題名をベン・ケノービとするべき」という者も多く、オビワンがベン・ケノービとして隠居していく過程が描かれるのであろう。


 しかしこうなってくるとディズニーがやりたかった新サーガについてはどうなるのだろう。

 一旦白紙なのは事実だが……やるならルーカス存命中にやってほしいと思うのは筆者だけではないはずだ。

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[良い点] >ボバ・フェット >さらにギャグ的なドナルド・ダックのような不運にも見舞われてあっさり退場する。 『Star Wars バトルフロント: ゲームプレイ ロンチトレーラー』 で、彼の「もう…
[良い点] ちょうど旧三部作でボバ・フェットを演じた、英国俳優のジェレミー・ブロックさんが亡くなられたというニュースを目にした日に、このエッセイを見つけました。  スターウォーズはあまり知らないので…
[良い点] 「マンダロリアン」をすごく見たくなった点 評価が高いかの「クローンウォーズ」のメンバー再集結とかロートルじじいが「やれやれ」って言いながら前線に復帰する鉄板ながら激燃えの展開じゃないです…
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