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世界開放戦線 〜レイヴンハンターズ〜  作者: とある世界線の艦載機乗り
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リフレッシュ・オン・ザ・リバー

テスト前13日目

死にそうです(主に疲労で)


「ねえ、外の山がきれいよ!

っていうか川の崖の上にホテルがあるわね...危なくないのかしら。」


「設計がしっかりしてるはずだから大丈夫!

秋なら紅葉とか綺麗だぞ〜」


車で4時間かけて着いた、川の流れているこの街は川の崖の上にホテルが沢山並んでいるのが特徴的で、滝や湖といった自然や世界遺産のような史跡もあって観光するには困らない。

...山がちで標高が高いために交通の便があまりよろしくないのが玉に傷だが。


「今回泊まるのはこのホテルよ。

ほら、荷物下ろして。...何やってるのよ伊吹。いくらなんでも着替えを嗅ぐのは...」


「ナチュラルに冤罪擦りつけんのやめてもらってもいいですかね?

...不知火。嬉しそうな顔しない。」


義姉の車のトランクから荷物を取り出す。

各自自分の着替えやら何やらを持って案内された部屋に入る。

そこのホテルは完全に和といった感じの雰囲気で、大きな木でできた彫刻や鎧、昔の通帳のような物も展示されていた。

部屋も綺麗だ。

大きな窓が部屋の奥にあって、そこから鬼怒川が見えている。

近くにある山には雲の影が綺麗に映っていた。

到着するまでに時間がかかったので少し日が傾いてきて、いい感じに夕焼けが綺麗だ。

荷物を下ろして窓の近くにある椅子に腰掛けて窓の外を眺めていると、摩耶もまた隣の椅子に腰掛けてきた。

どうやら俺と同じく外を眺めにきたようだ。


「...綺麗...」


ふぅ...と息を吐くかのように優しく静かな声。

思わず俺も息を呑むほど、その時の摩耶の横顔は綺麗だった。


「摩耶も景色見るの好きなのか?」


「そうね...好きよ。特に戦闘以外で高いところから見下ろす景色は。」


話しかけてもこちらに顔が向かない。

しかし今頬笑んだのはわかった。

まあ、景色を見ていたいんだろう。

しかしまあ、人間である以上は動かないと眠くなってくるわけで、そろそろ散歩にでも行こうかなと思っていたところで、小鳥と不知火と義姉が


「私たちはお風呂に行ってくるから。

散歩に行くなり何なり行ってらっしゃい。

あ、この部屋の鍵は私も持ってるから遅くなっても大丈夫だからね〜...せっかくあなたのために旅行をプレゼントしたんだから、楽しんでちょうだいね。」


と言ってきた。


「ん。そうさせてもらいますよ〜っと。」


俺は座ったまま了解の意を示した。

バタン。とドアが閉まる。

その時に気づいたが、テーブルの上には「誘う事‼︎」と強調されたチラシが置いてあった。

何でも、川にさまざま色を発する明かりを入れたボールを流すイベントを今夜やるらしく、

そのチラシには去年の様子を収めた写真が掲載されていた。

テーブルの方まで歩いてそのチラシを手に取り、手をあげて摩耶に示す。


「なあ、このチラシって...」


振り返った摩耶はそのチラシを見た瞬間に、

豆鉄砲を撃たれたハトのような顔にをして、

つかつかと俺の方まで歩いてきて俺の手からそれをシュバっと取った。


「一緒に行きたいな、って思ったの。

だから大きく書き込んでおいたんだけど...

バレちゃったものはしょうがないか!

私とこれ行かない?私ね、伊吹君と行きたいの。あ、嫌なら断っても...」


「わかった。いいよ。

それってどの辺かな?散歩感覚で行ける?」


そう答えた瞬間に摩耶の顔が一気に明るくなった。

俺の手を取って立ち上がり、目を輝かせてさっさと着替え始める。


「よしっ!どうせなら浴衣で行こう!ほら着替えて着替えて!」


「いや俺いるから!女の子の浴衣って下着脱いで着るんでしょ⁉︎」


「パンツくらい履くわよ!見て確認する?

私は構わないわよ?」


「そっちの方がダメだろ⁉︎」


なんていう感じで、グダグダだったが着替え終わった。着替え終わるなり速攻で俺の手を取り、


「早めに行って寄り道しよっ?」


なんて言ってどんどん俺を引っ張っていく。

周りの目は気にしないらしい。

すれ違った人たちから

「あらあら」

「仲がいいねぇ」

という声がかけられてきた。

あー、恥ずい...


屋台やらが並んでいるところに到着した時刻は午後7時。

イベントが始まるのは午後8時からだ。

なんとちょうど1時間の暇ができてしまった。

摩耶が懸命にチラシの裏を確認して次々といろんなお店に寄っていく。

明日の昼食に寄る為のお店を探したり、近くにあった駄菓子屋さんでアイスを買って食べたりした。

はたから見たらただの恋人に見えたと思う。

...周りに人だかりができていなければ。

というのも俺らが東京防衛に成功したというのは、当然ここまでニュースやら新聞やらで伝わってきていたらしく、どこに行っても特別待遇だったり、こうして人だかりができたりするのだ。

本音を言うとすごく動きづらい。


とりあえず会場に戻ってきて、ここに来てやっと周りの人との距離が普通になったが、まだボールは流れてきてはいない。

川に流れる水の音と、優しく吹く風の音。

月明かりが川の水面を照らし、虫達の声が辺りに響き渡っている。

人が近くにいないのも相まって神秘的だ。


「ごめんね、付き合わせちゃって。

...まだ時間あるけど、行くところもないし、ここで待ってようか。」


「ん、そうだな」


ちょうど近くにあったベンチに座って待つ。

あの戦いからまだ1日と少ししか経っていないのに妙に落ち着いた気分だ。


「私ね、すごく悔しいの。

あの時、あんな無差別に放っただけの攻撃に当たってそれだけで退場したっていうことが。

それしかしてないのに、私まで英雄って呼ばれるの。

そんなふうに呼ばれる権利は、私にはないのに。」


「...お前は重要なことを見落としてるぞ。」


「...え?」


「生きて帰ってきた。それだけで大手柄だ。

どれだけ戦果を上げても、どれだけ味方を救っても、自分が死んだら意味がないだろ?

お前は英雄だ。胸を張って誇れ。

選帝侯を相手にして生きて帰ってきた英雄なんだから。」


「わかった。...ありがとうね。」


正直、あれが慰めになったかはわからない。

選帝侯を撃破した俺に言われたとして、嫌味に思われるかもしれない。

でも言わないという選択肢はなかった。

言わなければ、摩耶はずっと自分を責め続けたと思う。

それは嫌だった。

どうしても立ち直ってほしかった。

摩耶も、小鳥も、生きて帰ってきた。

それだけで十分だったのだから。


「あ、流れてきた!」


「本当だ...綺麗だなぁ。」


赤や青に緑など、様々な色の光球が川を流れていく。

幻想的な、そして摩耶にとってはずっと続いて欲しいと感じる時。

流れ終わるまで、摩耶はその頭を伊吹の肩に預けていた。


次の投稿は少し後になります。

ではまた!

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