背負う者、背負われる者
すみませんでした‼︎‼︎
テスト期間で遅れてしまって...
楽しみにしてくれていた方々はお待たせしました!
初めての方もお楽しみください‼︎
6
「大丈夫⁉︎怪我は無いね?」
基地に帰還し、装備を解除して休息を取る。
...生きている。
その実感が湧かないままその場に立ち尽くす。
「...生きてる...よな?俺、生きてる?」
「うん!生きてるよ!世界で初めて、君がアイツらの侵略から都市を守ったんだよ‼︎」
そこでようやく実感が湧いてきて、2人で肩を取り合って歓喜する。
世界で初めてレイヴンの侵略から都市を守った事例で、しかも犠牲者は居ないのだ。
それこそ軽傷者レベルなら怪我人はいたが、
奴が他のレイヴンに命令したのか死人は出なかったことを考えると、奴にも...「選帝侯」にも、何か信念があるのだろうと思えてくる。
...だが、今はそれを考えても仕方がない。
「朧月」を使った反動で体温が若干下がっているし、信之や、先に帰還した小鳥と摩耶の無事も確認しなければならない。
「伊吹君!」
小鳥が駆け寄ってきた。
頬の部分や手に絆創膏が貼ってあるのが痛々しい。
「摩耶は無事よー!信之君もね!
2人とも衝撃で気を失っちゃってるけど、命に別状はないってお医者さんが。
あとは私も問題ないわ。
...伊吹君も見た所怪我はなさそうね。」
「ああ、俺はないけど、機体に少し無理をさせちゃったな...朧月を最大出力で稼働させたから装甲が傷んじまった。制服もパリパリだ。」
「ええと、何はともあれ、よく防衛しました!
生き残ったこの部隊の隊員は雪乃ちゃんからのプレゼントがありまーす♪お楽しみに!」
雪乃さん自身が「雪乃ちゃん」なんて呼ぶのは珍しい。
俺もこれまでで2回しか聞いたことがない。
「プレゼントって何?何か用意してくれてるの?」
「もっちろん!伊吹君が一番多いよ!」
...ちなみに義姉のこのパターンは碌でもないものが出てくるフラグだ。
前の誕生日にこのパターンでエ○本が送られてきたこともあった(現物は信之に渡してある)。
まあともかく、2人とも状態を聞くだけではアレなので学校の救護区画に向かう。
俺らが在籍している「国立ハンターズ養成学校」は、凄まじく設備が充実している。
医療にしろ化学にしろ訓練にしろ、だ。
そのため区画で分けられている。
普段は学校に通うことがないため、時折壁にある地図を見ながら救護区画に足をすすめていると、ここに勤務している看護師さんが案内してくれた。
「誰のお見舞いですか?その歳だと...彼女さんとか?」
「いや、同じ部隊の女の子です。
たしかに、可愛いとは...いつも思ってます」
「...そうですか。
恐らく、あなたの探しているこの病室はここではないですか?」
気づけば確かに病室の番号が、小鳥のいる場所だと教えられた番号と一致している。
「どうしてわかったんですか...?」
「もうあなたは有名人なんですよ?
都市を防衛した英雄だって。
そのおかげで、この子は今個室のベッドの上で寝ていられてるんです。
...感謝してます。
私だけでなく、この都市のみんなが。
隊員さんが傷ついてしまったというのも重要な事実ですが、あなたのおかげで助かった命が
何十万とあることを忘れないでください。
...すみません、なんか上からですけど。」
と言ってその看護師さんは頭を下げてどこかへ行ってしまった。
「英雄、か...」
そう呟き、病室のドアを開ける。
「あ!伊吹君...
お見舞いに来てくれたの?ありがとうね!」
摩耶だ。
いつも通りに声は明るいし、笑ってはいる。
顔は、という条件が付くが。
無理をして笑っている、という風な感覚だ。
頬はひきつっているし、その目は今にも泣き出しそうなほど涙が溜まっている。
なんなら涙の跡までついている。
「摩耶」
「ん?なぁに?」
「無事でよかった」
抱きしめる。
きつく、きつく、しかし限りなく優しく。
摩耶が泣いていた時、どういう感情だったかは俺にはわからない。
でも、決して良いものではないものなのはわかった。
もしかすれば、一撃も相手に入れられず悔しかったのかもしれない。
はたまた、怖かったのかもしれない。
どちらにせよ、俺の責任だ。
俺がちゃんと指揮していれば、摩耶も小鳥も落とされなくて済んだかもしれない。
ちゃんと索敵して策を練っていれば、怖がらせることもなかったかもしれない。
実際には別の原因かもしれないが隊員を守るのは隊長の役目だ。
あの時、身代わりになる勢いで守ってあげられていたら。
あの時、あの時、あの時...
後悔だらけだ。
情けなくて泣けてくる。
俺がもっとしっかりしていれば。
「ん...伊吹君、ちょっと痛い。
泣いちゃダメだよ。...私、もっと強くなるから。
もっと戦えるように、強くなるから」
後半はもう泣いてきてしまっていた。
ボロボロ涙を流して、声を上げて2人が泣いている。お互いの無念を慰め合うかのように。
小鳥たちもまた、部屋の外にある長椅子に腰掛けて、それを聞いてしまっていた。
摩耶だけではない。
雪乃も、不知火も、全員が聞いていた。
戦果だけが全てではない。
何せあれは完全に幸運だったとしか言いようがない上に、伊吹が一対一でなんとか張り合って、その結果見逃してくれただけだ。
言ってしまえば今回は全員が己の未熟を普段以上に感じた戦闘だった。
「ごめんね、みんな...!」
部屋の中から響いてくる痛切な嘆きは、
部隊全員の心に突き刺さっていた。
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「休暇?」
翌日の朝に学校から来た通達は、
『君たちの機体を一旦預からせてもらいたい。
あれだけの戦果を叩き出した部隊が普通の塗装というのはあまりらしくないと私は思う。
そこでだ。
修理ついでに塗装してしまうため君たちは1週間ほど機体がないことになる。
その間は休暇だ。ゆっくり休んでくれたまえ』
というものだった。
「白を基調に差し色として個人のパーソナルカラーを差し色として入れるらしいわね...」
「...1週間何するの?まさか連日出かけるとか...あ、伊吹君、プレゼントって何か知ってる?」
その一言を皮切りに、全員が「ガタッ」という感じの擬音が出そうな勢いで立ち上がった。
そして次の瞬間、義姉からこんな事を言われた。
「五日間の温泉旅行でーす!」
わーパチパチパチパチ...
全員の歓声。
「あ、お風呂は貸切もあるから。」
何故今のタイミングでそれを言うのだろうか。
おい、意味深な目線をこっちに送ってくるな!
まあ、そうなったら当然ながら...俺に拒否権はないだろうな...
...話をしよう。
アレは確か...2週間...いや、1週間前だったかな?
まあ、もう終わった話だが。
そう、その苦手教科の名は...数学。
はい、すみません唐突に。
テスト大変でした...
おまたせしてしまってすみませんね...(汗)
学生なのでこういったこともあると思いますが、ご理解いただけますようお願いします。
と、同時に...これからもよろしくお願いします!