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幻覚さん、こんにちは

 

 さて、目を開けると視界いっぱいにもふもふ天国が広がっていたんだけど、これからどうするか。


 そんなこと一択である。


「もふもふー!!!!!」


 もふもふに向かって飛びつく。さすがに猫とか犬とかに飛びつくのは危険だから、羊に飛びついた。


 うん、安定のもふもふ。


『メエエエ!』


 ああ、可愛い、癒し。もふもふだぁ。てか、もふもふって凄いよね。鳴き声ですら可愛いとかなんなの?


『人間さんなの〜』


 あー、また何処からか可愛い声が聞こ……ん?可愛い声?おかしいな?ここにはもふもふしかいないはずだぞ?そして、もふもふは喋らないぞ?


 そう疑問に思いながら、声が聞こえた方へ目を向ける。これでただのガキとかだったら許さん。……いや、声は可愛いから許すかも。


『あ〜、ほんとなの〜』


『人間さんなのね〜』


 目を向けた先にいたのは、空に浮かぶ、恐らく手のひらサイズの小さな、そう、小さな子供。

 その背中には、多分宙を浮くための蝶々のような羽が付いている。


 その小さな子供がなんなのか、頭で理解しかけた時、私は顔を羊の体毛の中に埋めた。


 そう、あれは私の脳が作りだす幻覚なのだ。ここはもふもふ天国なのだから、もふもふ以外がいるはずがない。

 そう、あれは己のテスト勉強からの疲れが生み出した幻覚なのだ。しっかりしろ、綾音。


『大丈夫なの〜?』


『疲れてるの〜?』


 しっかりするんだ綾音!!あれは幻覚!!もふもふで癒されたら直ぐに聞こえなくなる!!


 ………さすがにずっと顔を埋めているわけにはいかないので、声が聞こえなくなってしばらくしてから顔をあげる。


『あ、起きたなの〜』


 幻覚さん、こんにちは。


 思わずもう一度もふもふに顔を埋めた私は悪くないと思う。

 だって、さっき見た時は二、三人しかいなかったのが、今見たら多分五十以上はいるんだよ?

 普通は目を逸らさない?


 てか、いい加減現実逃避は辞めたほうがいいかもしれない。私はどちらかというと非科学的なことは信じないんだけど。


『どうしたの〜?』


 さすがにこれは現実離れしてるわ。

 もふもふ天国は嬉しいけど、さすがに現状を理解していないほど私は馬鹿ではない。


 チラリとある猫に視線を向ける。

 頭部が大きく、広い額にアーモンド型のつぶらな瞳。それに加えて長く真っ直ぐなしっぽ。


 直毛でサイズが大きく、メイクーンやノルウェージャンフォレストキャットに似てるけど、その二種に比べたら、この子の方がより丸い。


 この特徴から予測するに、この猫はサイベリアンだろう。


 ロシアの極寒にも負けない、ハイスペックなもふもふである。

 そう、ロシアの極寒にも負けない……


「私が住んでるのは日本の千葉なんだけど。」


 東京ネズミーランドがある千葉県なんだけど!?

 いや、光に引き込まれたからここが自宅ではない何処かだとは覚悟してたけど、ここ何処だよ!!


 知ってるか!?今は冬だから向こうにチラッと見えた熊なんかは冬眠してんだぞっ!!

 そして、ロシアは今すっごく寒いんだぞ!!こんな暖かくてたまるか!!


『ちば〜?』


『ちばってどこ〜?』


「千葉は東京の隣!!」


『とうきょうってなに〜?』


 おおう、東京を知らないときたか。喋ってるのは日本語なのに。

 さて、どうしようか。ここが日本どころか地球でもない可能性も出てきたぞおい。


 じゃあなんだ?異世界なのか?だったら私なんで異世界に飛んじゃったの?


「てか、本当にここ何処だよ。」


『ここはね〜、幻想の高原なの〜』


『始祖神さまが動物や魔獣のためだけに作った高原なの〜』


 はい!出ました、ファンタジーでお決まりの魔獣!!これもう絶対異世界確定じゃんっ!!

 てか、もうこの子供達は幻覚じゃないな。うん、諦めよう。そして認めよう!!


 私は階段を飛び降りたら異世界に引き込まれたとっ!!!


『ほら、貴方達はそれくらいにしておきなさい。』


 不意に、女の人の声が聞こえた。

 振り返ってみると、そこにいたのはもふもふである。

 なんだろうこの子。狼なのかな?それとも犬?ううん、それより…


「も、も、もふもふが、喋ったあぁぁ!!!?」


 もふもふが喋るとか、異世界すげえ!!

 もしかしたら、さっきの羊も喋るのかな!?そう思って抱きついてた羊に話しかけてみたけど、返って来るのは『メエエエ?』という鳴き声のみ。だが可愛い……


『ああ、その子は喋らないわよ?だって普通の羊だもの。』


「え?じゃあなんで同じもふもふの君は喋れるの?」


『私は上位妖精だから。上位の妖精と妖精王は意識伝達の妖術を使えるのよ。』


 んー?つまり、喋ってるけど、ホントに喋ってるわけじゃなくてテレパシー的なあれ?てか、妖術なんだね、魔法じゃなくて。


「じゃあ!君はどんなもふもふなんだいっ!?君みたいなもふもふは今まで全国の何処でも見たことないよっ!!」


 ついでに世界の珍しいもふもふってサイトにも載ってなかったから、完全に初見だ。

 狼犬とはちょっと違うんだよな……そして、なんか狐の尾みたいなのが九本あるし……


 あ、ここ異世界だから九尾って可能性もアリ!?



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