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第十二話 私、SNSはやらないんで

『お前はなんっ……!!』


 鬼は私に向かって罵声を発しようとしたみたいだ。

 だけどその時には、私が力を纏わせた買い物かごが飛び出している。


『ごおおああああっ!!』


 買い物かごを振り払おうとした鬼。

 だけどその手は、かごの中にすっぽり収まってしまった。

 かごは鬼の腕を納めたまま、ピクリとも動かなくなる。


『うっ、腕が! 腕があーっ!?』


「ほうほう、買い物かごだとこうなるのね」


「マサムネ、次のかごだ!」


 次のかごを受け取る私。

 木刀の時は、木刀の強度を高くした。

 チョークの粉の時は、触れたものを溶かしてしまう効果だった。

 買い物かごは、動きを妨げるようになるみたいだ。


「毎回、力を込めたときの効果が違うみたいだけど、何か法則があるのかなっ……と!」


 振り回された、鬼のもう片腕をかごに収める。

 よし、これで両手はアウト!


「恐らく、マサムネがどう意図したかで効果が変わるのだろう。ゾンビの時はやる気だっただろう?」


「そう言えば」


 姫の分析に、なるほどとうなずかざるを得ない。


「よっしゃ、クレーマーの動きが遅くなったぜ!」


 立ち上がったのは、剣を持っているお兄さん。

 私の横を走っていくと、両腕を封じられた鬼目掛けて剣を叩きつける。


『ぎゃああああああ!! 暴力はんたーいぃぃぃぃ!!』


「お前が言うなよ!?」


 剣で切りつけられ、鬼が転倒した。


「よっしゃ、チャーンス」


 セクハラお兄さんは、槍を振りかぶると、鬼目掛けて投げつけた。

 宙を舞った槍が、鬼の胸に突き刺さる。

 真っ青な血が、噴水みたいに吹き上がった。

 鬼の絶叫が聞こえる。


『ひ、ひどい!! どうしてあたしがこんなことにいいいい!! 何も悪いことをしてないのにいいいい!!』


「いい加減、あれの口をふさぐぞ。サイレンス」


 姫が魔法を使う。

 すると、鬼の周りの風が止まり、悲鳴がこっちまで聞こえてこなくなった。

 私は三つ目のかごを手に取ると、


「よーし、それじゃあ……買い物がしたいし、鬼は退治しちゃう」


 両手でかごを掴んで、やる気を込めた。

 さらば、クレーマー!!

 かごを持って、突撃をする。

 まずは鬼の足がかごに収まり、次にもう片方の足が。

 腰までがかごに飲み込まれ、鬼がばたばたと暴れた。

 暴れる度に、胸の槍から血が吹き出す。

 お腹まで飲み込むと、鬼は私を見て何かパクパク言っている。

 聞こえなーい。

 あとは一気に、頭までかごのなかに収めてしまった。


 二つのかごと、槍が地面に落ちる。

 私が振り上げたかごは、赤く光ってはいるけれど、そのどこにも鬼の姿は無かった。


「消えた」


「収めたものを消してしまったのだろう。終末の魔女の本来の力は、その対象としたものを終わらせてしまうことだ。それがモンスターであれ、国であれ、世界であれ」


 今、姫が洒落にならない事を言った。

 私は実際には、この目の光がモンスターを消し飛ばしたところを見ていない。

 だからどれほどのものなのかは、まだあまり分かっていないんだけど。


「ヒュウ!! 凄いな君! あのクレーマーが消えてしまった! まるで手品か、そうでなければ魔法だな! そうか、君は魔法使いだったのか」


「あ、はい、そうでーす」


 そう言うことにしておこう。

 何ていうか、私の力は危険だな。

 何かを消すっていうことが、とっても軽くなってしまう力だ。

 やる気にならないようにしなくちゃ。


「それじゃあ、お手伝いも終わったので、私たち買い物に行きますね」


「うむ、ご苦労であった、戦士たちよ」


 姫のねぎらいは、なかなか貴族っぽさが出てる。

 セクハラお兄さんはでれでれしてるなあ。

 もうひとりのお兄さんは。


「君! ええと、道満さん」


「あ、はい」


 やな予感がするぞ。


「君の力を、正義のために活かしてみないか? そう、具体的には、我がG.O.D.に参加しないか?」


 目をキラキラさせて、私を勧誘してくる。

 いやあ、そういうの駄目なんだよね。

 私、他人とつるむのが基本的に苦手なのだ。

 特に、チームとか仲間とか強調するようなのは鬼門。


「あー、その、私一応学生なんで、勉強とかしないといけなくて……」


「むっ、そうか。それほどの力を持ちながら、惜しいな。だが、無理強いするのは俺の趣味じゃない。気が変わったならいつでも連絡をくれ! ruinトークはインストールしてるかい?」


「やー、私、SNSはやらないんで……」


 グイグイ来るなあ。

 苦手なタイプだ。

 いや、私が苦手じゃないタイプの人ってほとんどいないんだけど。


「マサムネ。この者たちはなかなか使えるぞ。連絡先を記録するくらいはしてもよいのではないか?」


「なら姫がやんなよ。楓のスマホがナップザックに入ってるはずでしょ」


「おお、そうなのか!」


 姫は、ナップザックをごそごそと漁る。

 すると、そこから可愛い柄のスマホが出現した。

 私は彼女に操作方法を教えつつ、お兄さんとの連絡先交換をしてもらう。

 うん、まずは電話とメールのやり取りまでにしておくべきだよね。

 SNSはヘタをすると、24時間繋がっちゃう。


「マルチ・バースは便利なのだな! 大したものだ!」


 むふーっと興奮に鼻息を荒くする姫。


「必ず電話してくるのだぞ! んっ、私から電話するという手もあるのか。そうか、電話、電話か!」


 いかん。

 なんだか、姫がやる気になってしまっている。

 これ、やぶ蛇だったのでは。


 そして、彼らと別れて私たちはお買い物をすることになった。

 いやあ、スーパーを利用するだけで、これだけの大騒ぎをすることになるなんて。

 本当にこの世界、どうなってしまうんだろう。

 大体、これだけめちゃくちゃになっているのに、スーパーには普通に電気が来ているし。

 品物は買い占めが始まってるみたいだけど。

 誰も彼もが、両手のかご一杯に食料品を買い占めている。

 災害が起こったのと同じ気分なんだろうなあ。


「よっしゃ、私たちも買うよ! 日持ちするものを中心に。とりあえず、女子とおばさんの三人だから、そこまで大食いじゃないのはラッキー。姫、かごを持って!」


「あ、ああ」


 スーパーの中には、店長さんと見られるアナウンスが響いている。


『大変な状況の中、本日はご来店ありがとうございます! 品薄につき、お買い物はお一人様かご一つまでとさせていただいております! かご一つまでとさせていただいております!』


 レジでは、かご二つを抱えたおばさんやおじさんが、店員に断られて何か叫んだりしている。

 ははは、マナーを守らないからよー。


「ええと、まずは加工食品はなし。と。水と電気は通じてるし、いざとなれば姫の魔法でなんとかする。姫、火の魔法は使える?」


「うむ。五大元素魔法は全てマスターしている」


「なら、お料理はOKと。日持ちする材料から買って、後はお料理して冷凍保存、と。じゃあ、これとこれとこれと」


「む、む、む」


 私が手に取る品物を、姫と自分のかごに振り分けていく。

 メインは野菜。

 それと大豆加工品。

 それからそれから。

 インスタントラーメンは全滅かあ。

 お菓子の類もやられてるなあ。

 じゃあ、小麦粉。

 お米。

 卵に……調味料っと。


「うぬぬぬぬーっ! マサムネエーッ!! 重い、重いーっ!」


「あっ、ついに姫が限界に。じゃあここまでかあ」


 かごいっぱいに食料品にその他もろもろを買い込んだ私たち。

 マナー違反でレジを使えない人たちを尻目に、悠々と買い物を終えるのだった。


「くっ、これほどの荷物を持って帰るのか。持ってくれよ、妾の両腕……!」


「姫、大げさすぎない?」


 外に出てきた私たち。

 入り口に立っていた二人の戦士に挨拶をして、帰ろうと思ったのだけれど。


「あっ、その子たちが(さとる)の言ってた魔法使い?」


「そうそう! 絶対、G.O.D.に迎え入れるべきだって思ってさ!」


 増えてる!!

 おもちゃみたいな、キラキラした杖を握った女の人に、小学生くらいの男の子。

 これはいけない。

 思った以上に、ゴッドとか言う勢力は人が多いみたい。

 自警団をやろうっていう、お兄さん……悟さんの意志に共感した人たちが集まってるのね。

 ここは愛想笑いでもして、さっさと離れていくに限る。

 ……と思ったら。


「うむ! いつでも妾に連絡してくるがいいぞ!」


「やめるんだ姫! あーっ! 期待に満ちた目でこっちを見てるうー!!」


 姫が暴走してしまった。


「あっ、エルフ!!」


「エルフってなんだ? うっわ、すげえ外人だ! あと、姉ちゃんおっぱいでっけえ!」


 小学生ーっ!!

 もういい!

 こんなところにいられるかー!


「姫、逃げるよ!」


「むっ!? どうしたマサムネ、すごい剣幕で、うわわわっ!」


 私は姫を連れ、全速力でその場を後にすることにした。

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