【主な登場人物 用語 序章あらすじ】
【序章の主な登場人物】
【フェイヴァ】
年齢(外見年齢)15歳程度/身長157糎
・鋼鉄の骨格に人工皮膚を被せて人間を象った、死天使と呼ばれる人型殺戮兵器。
目覚めた時には何も覚えておらず、自分がどこにいるのかも知らなかった。天使の揺籃という化物とふたりきりという状況に困惑する。自身を人間だと思い込んでいたが、それはテレサによって否定される。
その後、テレサと反帝国組織の兵士たちの尽力により、ディーティルド帝国から逃れる。しかし、安住の地を目指す最中、反帝国組織の兵士たちから辛辣な態度を取られてしまう。自分は化物から生み出された人ならざる者、という意識が強く、誰も自分を理解してくれないのではという恐れを抱く。
命令されるがままに動き、言葉を発することがない従来の死天使と違い、フェイヴァはテレサによって心を与えられているため、人間と同じように感じ、考えることができる。そのことが却ってフェイヴァの自尊心を傷つけていく。
フェイヴァの名前は髪の色と同じ、桃色の花から取られている。花言葉は、あなたの幸福を願う。
【テレサ・グレイヘン】
年齢23歳/身長164糎
・13歳の頃、グラード王国のグレイヘン夫妻に引き取られる。何不自由なく生活しながら勉学に勤しみ、後にディーティルド帝国の兵器開発部門に迎え入れられる。23歳という若さながら兵器開発責任者まで上り詰め、天使の揺籃を使いフェイヴァの製造に着手した。
フェイヴァを造り出して間もなくディーティルド帝国からの脱走計画を実行に移しており、自身の持つ死天使の知識と引き換えに、自分たちの当面の安全と脱走計画への助力を反帝国組織に仰いだ。
人間の女では考えられぬほどの膂力と俊敏さを持ち、死天使と天使の揺籃を破壊している。光を盾状に構築したり、剣にまとわせて敵を焼き斬ったりと不可思議な力を使うが、彼女のような力を持つ者は珍しくないのだという。他者の心を読むことができ、度々フェイヴァが言おうとしたことを読み取って先回りする。レイゲンに並々ならぬ同情を寄せているのも、彼女が他者の心や記憶を読めるためである。
フェイヴァを何故造り出したのか、彼女が言う心とはなんなのか。フェイヴァに話していないことはたくさんあるが、それは彼女を思えばこそ語らないのであり、秘密はすべて冥界に持っていく覚悟がある。
【レイゲン・デュナミス】
年齢16歳/身長177糎
・反帝国組織の指導者、ベイル・デュナミスの養子であり、兵士見習い。しかしその実力は正規兵を圧倒している。一体倒すのに何十人という兵士の連携が必要な死天使を、レイゲンはひとりで屠ることができた。
フェイヴァの監視と緊急時の破壊を命じられており、都市に降りた際にはフェイヴァたちに同行した。
フェイヴァを他の死天使と同じように扱い、彼女が喋るたびに不快げに表情を歪める。けれども、命令により否が応にもフェイヴァと関わらなければならず、その過程でレイゲンは少しづつ変わっていく。
【ラスイル】
・テレサの脳裏に語りかける謎の声。男女の区別のつかない声音をしている。年齢も性別も不明。
【ベイル・デュナミス】
・反帝国組織の指導者。昔は気骨のある子供を引き取るため、孤児院を巡っていた。そこで目をつけたのが、レイゲンともうひとりの子供であった。レイゲンに戦いの技術を仕込み、人生という荒波を生きるための心構えも教えた。
【序章に登場した用語】
【死天使】
・機械の骨組みに人工の皮膚を被せ、人間と遜色ない外見をしている。背に内蔵された金属の翼で空を翔ることから、神話の天使に準え【死天使】と命名された。
命令のままに対象を殺戮する。
フェイヴァも死天使と同じ身体を持つが、彼女には心を納める器が内蔵されており、それにより自分の意思というものを持つ。死天使には厳密には二種類が存在し、量産が可能で、物言わず命令のままに行動する者と、心を設定者から与えられ、自らの意思によって行動する者がいる。フェイヴァは後者である。その心は一体、どこから来たのだろうか──?
【天使の揺籃】
・鎧を着込んだような半身。赤い瞳に蛙のように見える顔貌。腹部には透明な球体が埋め込まれている。人の肉と金属を咀嚼し、腹部の球体で死天使の身体を構築する機構。設定者が音声入力で性別、外見を決定する。
かつて栄華を極め、滅んでしまった聖王歴の時代に造られた遺物で、何故ディーティルド帝国に渡ったのかは謎である。
【ディーティルド帝国】
・地図の西南──翼竜を真横から見たような世界の、翼竜の尾の位置する大陸。世界で二番目に広大な面積を誇る。侵略戦争に乗り出すまでは、国産の金と翼竜を主に輸出し、国は栄え民も飢えを知らない、一国家でしかなかった。しかし【死天使】の製造機構である【天使の揺籃】を手に入れてから、突如隣国のファンダスとブレイグに攻め入る。現在では世界最大の軍事国家として、各国に警戒されている。
【グラード王国】
・地図で言う、翼竜の後ろ脚の辺りに国を構えている。フェイヴァとテレサが、ディーティルド帝国から逃れる際に立ち寄った国。
芸術大国で名高く、工芸品や装飾品などを他国に輸出している。意匠が凝らされた被服や装飾品などは特に有名。
テレサが幼少期に過ごした国でもある。
【ヴェーヌ】
・グラード王国に位置する都市。フェイヴァが生まれて初めて、テレサとともに訪れた集落である。この都市で初めての買い物をしたり、レイゲンに服を選んでもらったり、細やかな人間らしい生活を楽しんだ。
【フレイ王国】
・地図で言う、翼竜の頭部から上顎の位置にあたる場所に国を構える。世界で三番目の広さの国土を持つ。農業や林業、畜産業が盛ん。他国に高品質な木材を輸出しており、調度品に加工されたり、船体に利用されたりする。フェイヴァたちが【ディーティルド帝国】から逃れ、一年間生活を送る国である。
【翼竜】
・硬い鱗に金の瞳。そして巨大な翼を持つ竜。人を襲う獣と違い躾が可能なため、神世歴の初期に人間の移動手段として確立した。現在では翼竜の卵を求めて危険地帯に足を踏み入れる者や、産まれた翼竜を躾、人間に従順な乗り物として仕込む者。そして慣らした翼竜を人間に貸し出す者。これらが職業のひとつとして数えられている。
【反帝国組織】
・ファンダスとグレイブを支配下においたディーティルド帝国を打倒するために、ロートレク国が組織した非公式の軍隊。レイゲンが所属している。
各国に支部が設置されており、緊急時には国の軍隊とも連携を取る。ディーティルド帝国が差し向ける【死天使】や【魔人】に対して防戦一方だったが、元ディーティルド帝国の兵器開発責任者であるテレサが加わったことにより、打ち倒した【死天使】の再起動が可能になった。これにより、戦局は大きく変化していくことになる。
【都侯】
・国王によって任じられ、都市の統治を行う者。農民に賦役や貢納を課し、それ以外の都民からは税を徴収する。【守衛士】の運営も都候の仕事のひとつであり、警邏や見回りにより、都市の治安を維持している。
【守衛士】
・都市の治安維持のために組織された軍隊。都市の見回りが業務の基本だが、【魔獣】が都市の防壁を越えて現れた際に討伐を行ったり、防壁の修復を行う際に職人の安全を確保したり、【狩人】同士の諍いを収めたりなど、その業務は多岐に渡る。
【聖王歴】
・約千年前。魔法のような技術で空を飛ぶことさえ可能にした、まさに御業を人間が手にしたと呼べる時代。大戦によって滅び、生き残った人々が世界各地に散らばった。それが【神世歴】の始まりと言われている。
【神世歴】
・現在の紀年。フェイヴァたちが生きる時代。
【序章あらすじ】
ディーティルド帝国の一角。兵器開発施設で少女は目覚めた。少女を敵から助けたテレサという女は、少女がフェイヴァという名前であること、フェイヴァが天使の揺籃という化物に造り出された死天使と呼ばれる兵器であることを告げる。
フェイヴァをディーティルド帝国から逃がすために、テレサは翼竜の背に乗る。二人を追って帝国の兵士や死天使が襲いかかってくるが、レイゲンという青年と反帝国組織の兵士たちがこれを撃退した。
テレサは自身の持つ死天使の情報を反帝国組織に渡す代わりに、自分たちの一年間の保護と、今回の脱出計画への協力を取りつけていたのだった。
フェイヴァとテレサは、仮の住まいとなるフレイ王国の都市まで、反帝国組織の兵士たちに送り届けてもらう。
一方、所変わって反帝国組織。レイゲンは任務の報告を、反帝国組織の指導者であるベイルに行っていた。ベイルは、フェイヴァをウルスラグナ訓練校という兵士養成学校へ通わせることも、テレサとの契約に含まれていると語る。何の対策もなしに人の中に兵器を解き放つわけにはいかない。学校に入学する前に、フェイヴァをダエーワ支部に送り、そこで兵器としての本性を暴くつもりのようだった。