魔法の浴衣
お父さんに成人祝いに買ってもらった浴衣着。紺色に白とピンクの花びらが描かれて可愛いのだけど、その浴衣を着て、花火に行くと必ず不幸がある。
「呪いの浴衣」
お母さんが命名したその浴衣を着ると、彼氏と喧嘩して別れたり、突然雨が降って花火大会が中止になる。
「運命の人とだけその浴衣着れるんちゃうん?」
そう笑って話した日から約8年・・結婚をし、夫とその浴衣を着て、行った花火大会は私の暗い青春時代を溶かすように、輝いた色を放っていた。
「ジェット風船がないよー」
隣の家族から娘の泣き声が聞こえる。そっと風船を差し出す夫に、笑顔で返す母娘。
「この人と一緒になれて良かった」
大玉が空いっぱいに弾け飛ぶ。私の浴衣は幸せな浴衣へと変わったのだ。