紅月の夜
もっと、描写を酷くしようと思ったのですが流石にやめました。
私もかなり、自分の中では謎の話なんで続きが浮かびません‥‥
という訳で短編で終了します。
静かな住宅街で起こった事件は、世界を揺るがせる猟奇的で残酷な殺人事件だった。
築7年の新築アパートの一室でそれはおこった。
壁、床全てが白に整えられたワンルーム。
成人の男女二人づつ、床に倒れている。いや、寝かされていると言った方が良いのかもしれない。
まるで、そこに寝るために存在しているのだというほどぴったりと、壁側に寝かされている。
4人で一つの四角形を作っているような感じだ。
しかし、遺体は首から下がバラバラに組み替えられているのだ。
ぐちゃぐちゃにではなく、他人のものと綺麗な状態のまま入れ替えられている。
まるで、元々その体だったかのように。
4人の死体の真ん中に銀のアルミで出来たバケツが5つ並べてあった。まるで花のように綺麗に並べてあった。
その中には並々とたっぷりたくさんの血が入っていた。
この光景を1番はじめに見たのは大家の倉橋という中年男性だ。
倉橋は目の前に広がる光景と鼻を伝う死臭に耐えきれず、その扉を閉めた。
倉橋は自分でも怖いくらい落ち着いていると感じた。
そして、その扉の左側にあるもう一つの扉をそっと開ける。
「‥‥あああああああああああ!!!!!」
その刹那、倉橋は扉の向こうへ無残な悲鳴を残し消えた。
数日後、悲鳴が聞こえたという部屋の前に2人の警察官が見回りに来ていた。
「すみませーん。××交番の者ですが」
何度ノックしても、インターホンを押しても全く反応がない。
見かねて、片方の警察官がドアノブを回した。
ガチャリ‥‥と簡単に開く扉。嫌な汗が、警察官の背中を伝う。
「‥‥赤平さーん、いませんか?」
この家の持ち主、赤平芳樹は25歳のフリーターだ。
「おい、この匂いって‥‥」
嫌な臭いに紛れて、鉄臭い匂いもする。
警察官は手前のドアを開け、その衝撃的な光景を目の当たりにした。
「おい、本部に応援要請しろ」
「は、はい!」
吐きそうになった胃酸を必死に飲み込みながら、片方の警察官は無線を飛ばした。
無線を飛ばすため外へ飛び出した警察官。
残ったもうひとりの警察官は微かな物音を耳にする。
どうやら、こことは違う別の部屋らしい。
4人の死体がある部屋を離れ、隣の部屋の前に行く。
ドアノブを回し、ゆっくりと扉を開けた。
「‥‥っ!!!」
思わず言葉を呑んでしまう。あまりにも酷かった。
全裸で手足を拘束され、目隠しをされ倒れている中年男性の姿があった。まだ、息があるらしい。
「大丈夫ですか!?」
隊員がそう言うと、中年男性は口を開いた。
「誰ですか‥‥ま、舞姫様はどこですか‥‥」
酷くかすれた声だった。
「警察です!しっかりしてください」
身元を伝えながら、目を隠されている包帯をほどく。
だが、すぐに辞めてしまった。目が、まぶだがしぼんでいた。これは、眼球がないことを表していた。
「舞姫様‥‥舞姫様‥‥私に、もっと‥‥」
男は何を聞いても、狂ったようにそれしか言わない。
10分後、応援要請で駆けつけた警察官達が集まった。
「何を聞いても、"舞姫様"としか言わないんです」
あれから、自分の名前を聞いても答えてはもらえなかった。
不意に、部屋の奥が開く音がした。他に扉はなかったはず。
開いたのは、クローゼットの扉だ。
そして、出てきたのは‥‥10歳と見られる少女だった。
「こんな所に子供が‥‥」「すぐ、保護しなければ」
警察官達がざわめき始めた。
「お名前言える?」
一人の警察官が少女に近づくと、
「さわらないで!!!」
そう叫んだ。その瞬間、今まで何を質問しても"舞姫様"と言っていた中年男性がガバッと体を起こし、興奮したように叫んだ。
「舞姫様!!!私を、殺してください!!!」
唾液を垂らし、必死に訴える様は警察官達を呆気にとらせていた。
少女は、中年男性にゆっくりと近づき頬を撫でたあと満面の笑みで言い放った。
「まだよ。楽しみが減るじゃない」
【追記】
クローゼットは4畳ほどの部屋になっており、そこに赤平芳樹と見られる青年の遺体を発見した。
彼もまた、全裸で内蔵をえぐり取られており、取り出された内臓はガラス張りのショーケースにディスプレイされていた。
その後の調べにより、少女は赤平芳樹の実の娘であることが判明した。
少女の母親は、父親である赤平芳樹が娘に性的暴行を繰り返していたことに腹を立て、娘を置いて自殺していた。
母親が死んだため、赤平芳樹の行動はエスカレートした。そして、少女はそのストレスにより犯行に至ったと話している。
最初は父親だけ監禁していたが、それだけは物足りなくなり家に尋ねてきた様々な人を招き入れ殺したという。
取り調べをしていた刑事に、反省をしているか聞かれたところ
「どうして?私が殺した人達はみんな願って死んでいったのよ?」
そう言ったそうだ。