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4.空賊1

 一対七の戦闘は、一方的だった。

 一人の側が5分経たずに圧倒したのである。

 先程の小屋とは違い、障害物のない平地を人間離れした速度で滑るように駆けていく少女。

 いつの間に握られたのか、その手にある黄金の棍棒は振るわれる瞬間に形状を変え、物理的に伸びて間合いの外から空賊を打ちすえて吹き飛ばしていく。

 強力な打撃に二合、三合と打ち合える使い手もいたが、間合いを詰めて切り返そうとした瞬間に地面が揺れ、体勢を崩す。

 傍目から見て理解する。

 何の動作もなかったが、少女があしばを揺らしたのだと。

 黄金の棍棒に自ら吸い込まれるようにぶつかった空賊は見事に転がり、そのまま島のへりから落下した。

 少し遅れて若干ノイズの混ざった断末魔の悲鳴が響く。

 高速で落下しながら発される叫び声は、どこか遠ざかっていく救急車のサイレンに似ていた。

 既に形勢は圧倒的であった。

 恐慌状態に陥った空賊は続けて叩き落され、二人の空賊が剣を捨て地面に伏せるのみとなっていた。


――『シマヌシだから』

 島主(シマヌシ)

 先程の言葉の意味をようやく理解する。

 本当に、あの少女がこの島を動かしているのだと。

 身体能力は圧倒的に高く、加えて地面まで操れる。

 『シマヌシ』とは、文字通り浮き島を操る超人であり、島の上では只の人間が勝てるはずのない存在なのだと。

 そして同時に気づく


 ――だから


 地に伏せた空賊の一人がこっそりと這い、にじり寄っている。


 ――それが負けるとしたら


 無論、少女は気づいている。


 ――さっきの俺が偶然とったような狭い空間での組み付きか、


 急に起き上がりタックルしようとした空賊から余裕をもって距離をとり、

 だが俺の視線はその先の空賊の島に向き、


 ――もしくは


「敵の島から狙われてるっ!」


 組み付こうとした空賊の胴体を後ろから貫通した、黄金の矢に射抜かれた。


 ――島の外からの狙撃だと。


 敵の島、船着き場の物陰にそいつは居た。

 体全体をすっぽりと覆う暗色の外套に白い仮面、そして手に持つ黄金の弓。

 目が合ったと思った瞬間、そいつは煙のように掻き消えた。

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