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生き血を啜る敵

「ようやく落ち着いてきたようですね」


「……そうだな。だが、まだ体制が整ったばかりだ。これからも予定外のことは多いだろうな」


 ペルセウス殿は新しく作られた共和堂を見つめる。リステリア様のおっしゃられた共和国というものを目指すため、共和堂というものを作ったのだ。

 この共和堂は、所謂リステリア様のおっしゃっていた議会と同じようなもの。

 あれから既に三年もの時が流れ、私たちはスツェル殿を隊長に据えた殲滅隊を結成し、1ヶ月ほど前に残っていた吸血種を全てこの世から消し去ることに成功している。


「新生、太陽と月の国、か」


「建国祭というものを致しませんか? 確か古では毎年開かれていましたので、この機に復活と新しく生まれ変わった国を祝うために」


「それは……いいかもしれないな」


「では、準備をして参ります。そちらはお任せしてもよろしいでしょうか?」


「構わない」


「ありがとうございます」


 王宮を見ると、そちらは解体作業中。王のいない国なのだから、王宮は必要がない。一度解体し、新しく作られた共和堂に全てのシステムが移行していた。

 建国祭。太陽と月の国が生まれた日にする行事ではあるが、この機にすることを、ご先祖様は許してくださるだろう。

 それに、行事を復活させていくことこそが、私の本来の使命。このカイゼル、ユースタフ様の御意志をいまこそ成し遂げてみせます。

 建国祭の準備のため、私が歩き始めた途端、空が真っ暗に染まった。同時に地面が大きく揺れ始める。


「地震……!」


「大きいぞ……!」


 私はペルセウス殿を守るため、瞬時に大地の観測を始めた。

 どこが震源地なのか、どの程度の揺れがあり、本震はどうなるのか。


「……これは! ペルセウス殿! これは地震ではありません!」


「どういうことだ? 実際に揺れている!」


 確かに、確かに揺れている。だからと言って震源地のない地震など――


「震源地がない……つまりこの星そのものが揺れている?」


「どういう……意味だ、それは」


 ペルセウス殿が言葉を失くす。

 こんなことは、歴史上起きたことはない。


「何だ、何なんだこの光は!?」


 慌てる声が聞こえ、空気振動により位置を割り出そうとして――


「なんですと!?」


 空気が振動し過ぎていて、私の出す振動では消されてしまう。

 というよりも、これだけ大きな振動なら生身の人間は……!


「くぅっ、鼓膜がやられた!」


「やはり!」


 刹那――私も光を見た。先ほどまでの記憶通りの位置にペルセウス殿がずっといたのであれば、その辺りにいるだろう、と近付こうとしていた場所に。

 淡い光が天に昇っていく。


「くっ……いったいなにがどう――」


 視界が切り替わった。

 日常が戻る。


「カイゼル!」


「ペルセウス殿!?」


 生きておられた。よかった、本当に良かった。いまのこの国に、この方なくしては存続できない。


「なんだこの記憶は……」


「どうかされたのですか!?」


 ペルセウス殿に駆け寄ると、困惑したように問いかけてきた。


「カイゼルには、こちらの世界の記憶はないのか……?」


「こちらの世界……ですか?」


「いや、その反応だけで十分だ」


 いったいどうしたのだろうか。

 私の疑問に答えるよう、ペルセウス殿が言う。


「私の中にはいま、カイゼルがいた世界とカイゼルがいないこちらの世界の記憶がある。民も混乱しているだろう。見てみろ」


 指し示された先を見れば、確かに混乱しているようなそぶりを見せていた。

 私だけが、記憶を保持していないということか? いや、待て。もし、もしも私がこちらの世界とやらで作られていない存在なのだとしたら……。

 機械である私に記憶など関係ないのかもしれないし、全ては憶測の域をでない。しかし、そうだ、と謎めいた確信を持っている。


「いまは、そういうことにしておこう」


「何か気付いたのか?」


「いえ、ただの推測です。お気になさらず」


「しかし」


「それよりもいまはすべきことがあるのでは――」


 そのとき、反撃の砦(アグネスアングリフ)の周囲に巨大な大理石で作られた壁があることに気付いた。同時に、向こう側に生体反応を数千体も観測する。


「何かが壁の向こうにいるようです。ペルセウス殿」


「ああ、そのようだ。奴らとは戦争している状態であるらしい」


「そうなのですか」


「奴らは人の生き血を啜るらしい。この世の道化だ。全軍を集め、すぐにでも殲滅しよう」


 簡単に言っている。敵の強さはわかっていないというのに。


「案ずるな。奴らはスコール2にも満たない。ただし、こちらも魔法は使えないようになっているが……。カイゼル所長、貴方に兵器開発をしていただきたい」


 その言葉で、全てを察する。

 魔法は使えない。だが武器は必要だという。魔力を使う必要のない科学の産物がいるのだろう。


「承知」


 私はすぐに、新しく建造された研究所へ向かう。クリスさんにも連絡する必要があるだろう。

 そういえば、私のきたいに流れる魔力が告げている。外部に魔法はない、と。

 研究所に入り、全員が集まっていることを確認して集合を呼びかけた。


「所員の諸君、全て察しているだろう。これより、生き血を啜る敵を殲滅するための兵器を創り出す。……敵はスコール2だ。あまり強力な武器は作るなよ?」


 私の戦いはここだ。

 指揮はペルセウス殿、戦闘はスツェル殿に任せるとしよう。


はい、あの世界です。4章の。


この続きは……どうでしょうね……()

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