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龍、異世界に行く

龍のお話ですね。長いお話の始まりです。

まぁ、途中で、希望のあった奈緒が子どもを産むところや妊娠中のシーンなど、そういった話も書くかと思います。

あと、4章に出てきた世界の後日談も書きたいですね。

 第二次世界大戦末期。神風特攻隊の特攻機に乗り込み、彼は特攻する。だが、大日本帝国も、アメリカ合衆国も、世界中の誰もが信じられないような体験をした。

 彼と戦友だった者は死に、軍は特攻機に乗せたことにより、行方不明だったことから戦死した旨を家族に伝えていた。

 そのため、彼が地球から姿を消したことに、気付く者はいなかった。



「なんだっ!? くそっ、どうなってやがる!」


 積乱雲で姿を隠しつつ、アメリカに大打撃を与えようと思い突入したものの、彼は乱気流に舵を取られてしまう。

 そこまではよかった。推測し得た事態であり、さほど驚くことでもない。

 だが、突如として太陽の光が彼の両目に差し込み、目が眩んでいる間に機体が安定し、ようやく目を開けてみると、敵艦隊上空ではなく視界一面に原っぱが広がっていた。


「ここはどこなんだ!?」


 頭は混乱しながらも、体は操縦を覚えているため、墜落はしない。

 だんだん落ち着いてきた彼は原っぱの上空を飛び回り、一際大きな建物が目に入った。いや、あれは建物というより。


「万里の長城みたいだな……」


 規模はこちらの方が圧倒的に小さいが、街を大きな壁が取り囲んでいる。

 地上何mまであるのか、目測では10m程度だろう。


「街か……? 見たことがない類のものだな」


 しかし、そこに救援を求めるしかない。

 特攻機はどの道、片道の燃料しか入っていないのだ。このまま街に特攻するか、着陸して街に命乞いをしに行くかしかなく、周りを見ても、先ほどから試している通信にしても、仲間がいないことは確実である。

 恋人もいない。いたら特攻機になど乗っていないが。ならば、敵前逃亡だと言われて撃ち殺されることも、自爆攻撃をして死ぬこともない。


「着陸態勢に入る」


 見知らぬ土地での着陸。もしかしたら、降りた直後に攻撃されてしまうかもしれない。

 だが、そんなことは些細なこと。本来なら死んでいた命だ。いまさらどうと言うこともない。


「……ん?」


 着陸態勢に入って少ししてから、街の方へ向かう乗り物が10数個もあることに気付いた。

 焦っているようにも見える。あれはなんだ……? と目を凝らし、乗り物の御者が鞭で叩いているのは馬だと判明する。馬車とは、いまどき珍しい。

 されど、彼らを追っているあの怪物はなんだろうか、と疑問は尽きなかった。


「あんな動物いたか……?」


 見たことがない姿形。耳は長く、4本足で駆け抜ける巨大な怪物だ。長い尻尾は3本あり、異様さを醸し出している。


「とりあえず、低空飛行に移行だな」


 目の前で、あんな怪物が人を殺すところなど見たくない。もし怪物が彼らに追いつきそうなのであれば、効果があるかどうかは置いておいて、仕留めてやろう。

 彼は望遠鏡を取り出して、怪物を観察する。


「速度は……大したことはなさそうだな。……なんだ? あの爪と牙は」


 あまりにも長く尖った爪と牙。あんなもので切り裂かれたら、この特攻機も危ういかもしれない。牙に関してもそうだ。上下合わせて4本の牙は、それだけで途轍もない武器。


「こりゃあマズイな」


 怪物の観察を終えて、ちょうど馬車の直進方向の位置についたため、馬車の内部までもがハッキリと彼の瞳に映し出される。

 瞬間、彼の動きが一瞬止まった。


「……よし」


 先頭を走る馬車の中にいた、金髪の女性の名前はなんだろうか。


「行くぞ、相棒。あの怪物ぶっ倒して、あの人を助ける」


 彼は方向を変え、馬車の数十m離れたところを飛翔する。その様子を馬車の御者たちは、目を見開いてみていた。

 タイミングを合わせて操縦桿を下げ、機体を上向きにする。

 砂埃が舞い、怪物に襲いかかった。けれど、怪物は物ともせずに突き進む。


「なんて奴だ」


 最短距離で旋回した彼は、怪物に照準を合わせて、後方からの射撃に転じた。


「くっ、かてぇ!」


 全ての弾が弾かれ、針が敷き詰められたような背を前に、彼は驚愕する。

 機銃の他の兵装なんてものはなく、彼は彼女を助けるために特攻を決意した。

 元より片道切符の乗り物である。死ぬ気で乗り込んだのだ。いまさら恐れることは何もない。ましてや、彼女のためならば。


「うぉぉぉぉおお!!」


 怪物と最後尾の距離は、もうそれほど空いていない。

 彼は怪物の上空を飛行し、あまりにも低空での宙返りを奇跡的に成功させた。

 しかも従来の上への回避行動ではなく、下への攻撃行動である。

 無我夢中で操作し、知らぬうちにそんなことを成し遂げていたことには気付かない。

 突如目の前に現れた謎の物体に驚愕した怪物は、足を止める暇もなく、凄絶な激突音を響かせた。

 機体も、怪物も、その息の根を止める。あまりの衝撃に肉片と機体の残骸が飛び散り、彼は機体の外へ投げ出される。

 だが、彼の意識はない。直撃の瞬間、脳震盪を起こして気絶してしまったのだ。



「……なに? いまの音」


 彼が一目惚れした、金髪の女性が馬車を停止させる。

 全ての馬車が止まり、彼女たちは怪物の脅威が消えたことに乾かしながらも、音の原因を突き止めるべく引き返すよう命じた。


「これは……」


 引き返して怪物と機体の残骸を見た者たちは、信じられない光景に畏怖する。


「なんと言うことだ」


「まさか、先ほどの奇妙な生物がこれと衝突したのか?」


 そうとしか考えられず、彼らは一様に同じ推測をしていた矢先、報告が告げられた。


「姫! あちらで傷だらけの男が倒れているようです!」


「っ、すぐに案内して! その方が私たちを救ってくださったのかもしれません!」


「はっ! こちらです!」


 姫と呼ばれた金髪の女性は小走りで現場に向かう。

 そして、坊主頭に少し黒髪が生えてきている、倒れている男に手をかざした。


『光よ、癒したまえ』


 彼の体が仄かに光り、外傷が全て消え去った。それでも目を覚まさない彼を、馬車に積み込むよう指示を出す。


「一度、城へ戻ります。この方を馬車に乗せて、治療院へ送り届けてください」


「かしこまりました」


 近くにいた御者に頼んだ彼女は、この報告をどうしよう、と思い悩んでいた。

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