こんこんこん
こんこんと咳をする。
咳をしながら学校に行くと、周りがくすくすと笑っている。
いつもの寝癖が酷いのだろうか。そんなことを考えながら。
「とうとうなっちまったんだなぁ」
そう親友にニヤニヤとした声を掛けられ、はっとなってトイレの鏡を目指した。
あぁ、どうしよう。
受験も控えているのに。
トイレを目指すその間もこんこんと咳は出続ける。
だんだんと身体が前屈みになり、足で立っているのが辛くなってきた。
ちょっと休憩しよう。焦ったらだめだ。廊下だけれど、まずは腰かけてみよう。
そうだ、ちょっと手をついて、床の冷たさを感じて冷静になろうか。
「おい、大丈夫か」
先生が声を掛けてくる。
大丈夫じゃない。
「こりゃぁ、手遅れだな…」
小さく先生は呟いた。
「証明写真、撮り直そうな…?」
やめて。
そんな声で、顔で、そんなこと言わないで。
やっとの思いでトイレの鏡の前に立ったとき、僕は狐になっていた。
え?
嘘だろう?
無意識に鏡を触ると、手がふにふにとしていた。
あぁ…。そんな…。
最近流行ってきたんだ、狐病。予防接種を受けておけばよかった。
受験のときに、面接官にも笑われるんだ。
あぁ、なんてことだ。
ただ、冷え症にはとても優しいんだな…。
「やっぱりだめだったよ」
教室に戻ってきて親友にそう告げると、そうだなぁ~と返事があった。
不意に親友が咳をする。
まさか。
こんこんと、教室のいたるところでみんなが咳をしている。
しまった…。
このクラスの予防接種は明日だった。
こんこんこんとみんなが口にする。
咳が出たら要注意!!