プロローグ
嵌められた!
それに気が付いた時にはもう遅かった。
『今回の生贄は……オスだと?』
一体誰に、なんて考えるまでもない。
連中に決まってる。
『俺様は魔力溢れるメスの肉を寄越せと通達したというのに、舐めた真似をしてくれおって!』
ロクでもないことしくさりやがって糞野郎どもが!
陰気で陰険で陰湿なクズ共が!
テメエの不出来を人のせいにしかできない能無し共が!
『っ?!なんということだ!このオス、魔力の底が見えん!魔力量だけならば、彼の魔王に匹敵するやもしれぬぞ……』
だが、そもそもこんなことになったのは、元を正せば俺が連中に気を許したせいだ。
異世界に召喚された同士だと思い込んでいた所為だ。
ああ、俺の大馬鹿野郎!
『これだけの魔力を糧にできたならば、あの婆に成り代わり、俺様が龍王になれるやもしれぬな』
畜生!
違うだろ?!
後悔なんかをしている場合じゃないだろう?!
そんなことじゃなくて―――
『人間のオスよ、感謝するがいい。食通の俺様は普段ならば、糞にも劣る人間のオスなんぞには食指が動かぬが―――』
俺が今考えるべきことは、どうやって目の前のこいつと戦うか……違う!
『その深淵とも呼べる魔力量を以って、俺様の成長の為の糧となるべく―――』
どうやって目の前の怪物を殺すか……違う!
『肉の一片、血の一滴まで残さずに喰ろうてくれよう』
どうやって目の前の絶対的捕食者から逃れるかだ……。
頭の中の妄想を形にしてみようと書いたものです。
今はまだ生き生きと書いてるけれども、きっと時間が経ってから読み直すと頭をかきむしることになるんだろうなあ……。