星空との約束 プロローグ
「恋って綺麗だよね」
夜風を浴びるため夜の散歩をしていると何故か一緒についてきた作楽が唐突に意味不明な事を言ってくる。作楽稜。彼女は僕の幼馴染であり男と女と言う異性を超越した高校時代からの親友である。なんの縁か高校生までの関係だと思っていたのだけど大人になった今でもこうして友人として居る。お互いに好みも違えば価値観も違う。なのにどうしてか波長が合い心地良い。第三者から見ればどうしてこの2人は仲がいいの?なんて思われることが多い。俗に言う腐れ縁と言うヤツ。実際に高校の時はよく他の友人から言われていた。
「急にポエムみたいな事を言うね」
「だってそう思わない?」
「恋が綺麗ってこと?恋をしている人じゃあなくて?」
彼女は僕の問いかけに少し黙り考え込む。なにを思いついたのか急に顔をこちらに向けてくる。
「あのさ!晴樹のそう言う面倒くさいところがメンドクサイ!!そう言うのは感覚でいいのよ!感覚!分かる?!」
急に考えることが面倒になったのかぷんぷんと頭から湯気を出す勢いで急にどなりつけてくる。第三者から見たら急に怒り出した女性、としか見えないだろうけれどこれが作楽。別に本当に怒っている訳じゃあない。ただ、面倒くさい事を考えるのが嫌いなだけ。久々に合ったのに相変わらずな彼女にふと笑ってしまう。すると何を感知したのかそっぽ向いていた顔がまたまたこちらを向いてくる。
「何で笑ったの?」
「笑ってないし」
「いーや!晴樹は笑ってたね!ちょっとだけにやりって言う効果音が聞こえたもん」
「なんだそら」
「ふふっ」
なにが面白いのか分からなかったのだけど二人して顔を見合せながら笑ってしまう。大人になってしまったけどこいつと一緒に居る時は何故か学生の気分に戻ってしまう。なにも考えずに喋れると言うか気を使わないで良いと言うか。
「晴樹さ?」
「ん?」
「高校の時にさ、肝試ししたの覚えてる?」
「肝試し?」
大体のイベントは覚えているつもりだったのだけどどうしても彼女が言う、肝試し、と言うイベントだけは思いだすことが出来なかった。と言うよりも高校生活で作楽と一緒に、肝試し、をした事なんて無い。きっと彼女は誰か他の人と間違えているのだろう、と思いその事を口に出すと一瞬だけ表情が停止、した気がしたのだけどすぐに笑いながら肩をバシバシと景気よく叩いてくる。
「あれ?そうだったっけ?あははっ!私が誰かと間違っていただけかー!そっか、そっか!」
「痛いなー!」
叩き終わると満足したのか夜空を見上げながらうん、うんと頷き始める。良い奴だと言うことは重々承知しているのだけれどたまに意味不明と言うか理解不能な行動をするのでテンションがついていけれない時がある。すると、一度大きく深呼吸をすると真面目な表情でこちらへ向いてくる。
「晴樹にお願いがあるんだけど、良いかな?」
「ん?なに?・・・あ!お金貸してとかは無理だよ!僕だって今月は厳しいんだから!」
「あははっ。晴樹にそんな事頼まないよ。私の方が収入はあるんだし」
「流石、有名編集者は違いますねー」
「って、そんな事はどうでもいいんだって!」
ため息混じりに彼女は脱線し始めた会話を切り本題へと路線変更してくる。
「実はさ・・・この写真を見てほしいんだけど」
そう言うと彼女は一枚の写真を手帳から出し手渡してくる。男女二名ずつが寄り添い楽しそうに写っている。作楽も随分とご機嫌な表情で美人と言う単語の前に面白いと言う単語が出てきてしまい笑いそうになってしまう。ただの旅行自慢かと思い感想を言おうとした瞬間に彼女の人差し指がある場所へと指される。
「晴樹って霊感あったよね?ここら辺になにか写っていない?知り合いにも霊感が強い奴が居るんだけどなんだか嘘くさくて・・・でも晴樹が言うことならちょっとだけ信じれるからさ・・・」
「ちょっとだけかよ!」
ツッコミを入れつつも彼女が指す場所を見てみると・・・確かに写っていた。それも、亡くなった霊ではなく一番面倒くさい生き霊の分類だろう。それも愛情や心配で憑いているプラス側ではなく憎悪などマイナス側の方の霊だった。
「あー確かにいるね」
「やっぱり・・・それって小さな女の子?」