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Crossing Worlds――交差するセカイの物語  作者: 零零機工斗/金薙/ポテ塩 八夜/勇輝/蓑虫/唄種詩人/Sky Aviation/鴉臨/ミナ
それぞれのトリップと出会い
9/20

地球のイージス艦艦長、安佐山謙介の場合

今回担当:Sky Aviation

―西暦20XX年 7月某日 PM12:30 房総半島太平洋側沖合35海里地点 DDG180たかお艦橋―






「目標、全弾撃墜確認。教練対空戦闘配置解除」


すぐに俺、『安佐山謙介』は副長からの報告を受ける。

とりあえず訓練での成績は上々だが、ダメコンの対応にまだ少し不安があるということで、そこは副長から各担当乗員に言っておくということになった。


この日は太平洋沖合いでの単艦の戦闘訓練だった。もちろん、哨戒もかねているが。

近年活発になり始めた近隣各国での動きもかんがみて、どうやら日本政府では例年以上に警戒態勢を強化するようだ。こうやって太平洋沖合いでも警戒態勢を万全にとっている。

俺たちもそうだ。そして、その乗艦であるこの、イージス護衛艦『ほたか』は、俺が艦長になって初めてのイージス艦だった。


自慢じゃないが俺はまだ若い。

たったの35。

こんな若造にまで艦長やらせないといけないとか、今の海自はそんなに人材がないのか。


とにもかくにも、俺の成績が認められたのかこうして高性能な主力護衛艦の艦長をやらせてもらっている。

といっても、艦長になったこと自体つい数ヶ月前の話なのだが、大分この艦にも慣れてきた。

俺自身いつも汎用護衛艦の乗員ばっかりやってたからなのだろうが、最初は特にこいつの戦闘能力には驚かされる。

やはり最新鋭あたご型のイージス艦の中でも一番の最新鋭か。


まあ、自己紹介もあんまり長くやると堅苦しい。

とにかく、今俺たちは近海哨戒を含めてこの太平洋沖合を航行している。


「了解。皆お疲れさん。とりあえず休憩に入ってくれ。哨戒担当は交代でやってくれよ」


そういいつつ俺は座っている艦長席の背もたれに思いっきり寄りかかると、軽くつぶやくように言った。


「……はぁ、ま、哨戒っつっても、あんまりここいら辺船舶通らないんだけどなぁ……」


俺がそんなことをつぶやくと、隣にいた副長がとがめるようにいった。


「しかし艦長、そういうときこそ何かが出てくるものです。ここは我慢を」


「それはわかってるんだけどなぁ……。まあ、そうはいっても、この哨戒任務ももう少しで終わりだ。今日の午後には帰れるんだろ?」


すると副長は「はい」と返事しつつ、ポケットから手帳を出して中身をペラペラとめくり始めた。


「……えっと、今日のの午後2時から3時ごろを頃合にして、近海哨戒任務を汎用護衛艦の『あきづき』に引き継ぎます。その後は、本艦は一路横須賀に向けて帰頭の予定です」


「よ~っし、じゃあさっさと終わらせて横須賀帰ろうぜ。もう疲れちまったよ」


そういって右肩を左手で軽くもんだ。

結構肩こってるわな。

まったく、最近動きすぎたか。


「……しかし、艦長もお気楽ですね。もう少し緊張感もっても良いのでは?」

「ほう?」


そう隣にいた航海長が言ってきた。

俺は少しフッと笑うと、一言航海長に言う。


「まあまあ。こういうときこそリラックスだぜ航海長。なに、別に任務を怠るつもりはねえって」


「はぁ……まあ、いつもどおりとはいえ、艦長も変わりませんね。いろんな意味で」

「深く考えちゃダメかな?」

「どっちでもどうぞ」


そういうと航海長は少し呆れ顔でふと、航海レーダーをのぞいていた。

……まったく、もう少し肩の力抜きなって。それじゃこういう集中力使う任務も長続きしな……


「……ん? おい、これなんだ?」


「え? ……あ、ほんとだ。なんでしょう? ついさっきまでは……」


「おう? どうした航海長?」


すると、航海長がなにやら不審そうに艦橋内に備え付けられていた航海レーダーを覗き込み、その担当の乗員と話していた。

そしてそこにいた乗員をいったんどかせ、自らさらにその中身を見る。


少しして、航海長はいった。


「……航海レーダーに反応があります。大型のものが一」


「なに? こんなところにか?」


俺は艦長席から降りて航海長の隣に立ち、その航海レーダーの表示されている中身を見た。

副長も覗き込む。


みると、どうやらそれは本当らしく、本艦の真正面の方向数十km先に大型の反応が一つあった。


しかし、なんだってこんなところを。ここいら辺は大型艦どころか船舶1隻すらあまり通らないぞ? まさか今時遠洋漁業はありえまいて。


……さらに、俺たちを不審に思わせる点があった。


それが――


「……なんで表示が『UNKNOWN』なんだよ?」


その船舶の表示が不明を示す『UNKNOWN』だった。

これはさすがにおかしい。民間船舶ですら、反応が漁船だってわかるように表示が出るはずで、すぐに向こうの周波数に確認できるようになっている。

だが、それすら出ずに不明だと?


……なんだこれは?


「艦長、どうします?」


副長はこの航海レーダーを見つつ怪訝な顔で聞いてきたが、俺はすぐに指示を出した。


「ふむ、国籍不明となれば、もしかしたら大型の不審船の可能性もあるな。副長、日本政府にこのことを報告してくれ。あと、今こっちに向かっている『あきづき』にも連絡して、こっちとの合流を急いでくれと」

「了解」


副長はすぐに指示通りに動き出した。

俺はさらに航海長に対して指示を出す。


「とりあえず、こいつの動向はマークしておけ。何か動きがあったらすぐに報告を」


航海長も詳細を書き留めるための紙を取りに、少しどかせていたレーダー担当の乗員に軽く指示を出した後ここを離れた。


俺はそのレーダーを凝視しつつつぶやいた。


「……う~ん、なんだってこんなところに船舶が……?」


不審に思ったが俺はすぐにCICにも報告をするためにこの場を離れる。


しかしこれが後に、大きな驚愕の事実を持ち込んでいることを知ることになるとは、このとき誰も想像していなかった…………。

2月21日、イージス艦の名前を「DDG173こんごう」から「DDG180ほたか」に変更。

3



月19日、イージス艦の名前を「DDG180ほたか」から「DDG180たかお」に変更。

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