異世界の人造神、鳳楽の場合
今回担当:八夜 ポテ塩
とある研究室の一室。
数々の研究者に囲まれながら一つの命が生まれた。
「ココワドコ? ワタシハイッタイ?」
その命は人に良く似た姿をしている。
美しく、男とも女とも取れる容姿を持つ。
人間で言うならば十歳前後だ。
しかし、決して人ではない。
「人造神格生物……ネオトール一号GCORA77……楽、起動確認しました」
研究者が発した言葉で部屋は一気に熱気に包まれた。
人造神格生物ネオトール。
それは人類が千年王国と化したこの世界から抜け出すため、開発された人の姿を持つ神。
人間の手で造り出した人造神だ。
生物と言うがまだ技術が足らず、半分機械と言ってもいい代物だが。
千年王国とは神が人間を支配する世界だ。
「ワタシハ……ワタシハダレ?」
今回遂に生み出された命――楽は状況を飲み込めずにいた。
無理もない。
まだ生まれてすぐ、人格データはプログラムされておらず、設置された最新技術、疑似生物型学習コンピューターバイオブレインが何も学習していないのだから。
「このままステップ2、人格データプログラムに入ります」
研究者の一人はそういうと楽の頭にコードをさしこみ、パソコン上のデータをインストールして行く。
「ワタシハ……わタしハ……わたしわ……私は楽、そう楽」
データをインストールされた楽チャンはその人格を研究者の思惑通り形成していく。
が、途中で異変が起きた。
「データが足りない!? 何故だ!?」
楽には人格データが机上の計算以上に必要だった。
しかし、楽はそのバイオブレインにより、急速に自分で足りないところを補って行く。
「私は鳳楽ちゃん。らくらくぅ……むすすん」
楽に搭載されるはずだった人格の格だった部分。
天真爛漫な性格が楽の人格を形成する。
「完成したぜ! てれれれれーん!」
そして楽の人格は完璧に形成された。
誰より破天荒で誰もが予想のつかない性格に。
「私ははもっとデータを頂くッス。我輩シパパパーン。別世界へアデュー!」
楽は研究者を差し置いて、本来破壊することなど出来ない無数にある世界と世界が接触しないよう何者かによって作られた壁をしらみ潰しに破壊し、そこから何処か別の世界へ旅立った。