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Crossing Worlds――交差するセカイの物語  作者: 零零機工斗/金薙/ポテ塩 八夜/勇輝/蓑虫/唄種詩人/Sky Aviation/鴉臨/ミナ
第一章
16/20

契約

今話担当:妖火強風さん(元・八夜 ポテ塩さん)

我が家に居候ができて二日経った。

 特に何か良いことがあったというわけではないが、悪いこともなかった。

 自分の分の食費を出してくれるので食事はただ一緒に食べるだけで余計にお金がかかるわけでもない。


 ただ、(キクト)が居候になって、放課後は異世界人探しを日課にすることとなった。

 どうせ放課後は暇だからいいのだが。


「昨日は捜索が捗らなかったけど、今日はしっかりやりますよ!」

「いやお前がクロと遊んでたからだろ」


 実は昨日、説明とか必要なときにキクトが猫と遊んでいて、殆ど捜索できなかったのだ。


「もふもふは正義! よって僕は無罪!」

「いや、お前自身はもふもふじゃないから正義じゃないだろ」

「うぐっ」


 この仕事に不安しか感じてないのは俺だけなのだろうか。

 そもそも最初から不安しかないのは事実だが……ん?


「なあ駄神」

「駄神いうな!」


 怒りで声を荒げる駄神を無視し、俺は今更気づいた違和感に対して疑問を述べる。


「俺が最初に異世界人と遭遇したのを見てたんなら、なんで捕まえなかったんだ? 確か、ご都合主義な魔法で干渉を不可能にするんだよな? その時に捕まえればいいだけのことじゃん」

「僕戦闘できないので」

「戦う前提かよ!」


 もし俺が戦わなきゃいけないんなら手伝えないことは確定だ。


「勿論、相手が混乱して襲いかかってくる可能性は十分ありますので、その場合の無力化に協力してもらいたいんです」

「俺は無力な一般人だからパス」

「僕も無力な神なのでパス」


 ガシッ。


 肩を掴まれ、笑顔で鞘に納まった刀を手渡されても尚、警察を呼んでいない俺は末期なのかもしれない。




 ***    


「ふふ、仲良さそう」


 私は空から人間二人を見ている。

 たまたま見掛けて気になったからさっきからずっと観察している。

 初めて見る光景。


「あの二人、面白いことしようとしてる」


 何やら面白そうなことをしようとしてるみたい。

 片方は人間じゃないみたいだけど。

 どういう存在か気になるけどもう片方の人間は人間で普通じゃない気がする……。

 凄く気になるし見てて面白い。


「う~ん。でも二人とも、まだ私と戦えるほど強くない」


 この世界の鳥は弱かったけどあの二人はそれに毛が生えた程度。

 飛行能力がインプットされてる私なら不意討ちも簡単に出来そう。

 ただ……


「あの道具、気になる」


 私の記憶(メモリ)に無いもの。

 気になる。

 ナイフに似てる。

 でもナイフよりずっと大きい。

 まず間違いなく武器。

 私の知らない武器。

 しかもあの二人実力を隠してる可能性、高い。

 それに――


「このまま観察するの、面白そう」


 強い人を見つけてくれたら私、戦いたいし。

 しばらく様子見で良いかな?

 あっちの人間より強くなると私は嬉しい。


「いつか、私に武器を抜かせてくれる実力になると、嬉しい」


 この世界、武器や物、見てるだけで面白い。

 生き物も珍しい。

 色んな形してるし、変わってる。

 空は青いし、翼竜(はねむし)が飛んでない。

 雷が色々な所に感じられる。

 ここの人は天災すらも制御出来るのかな?

 知りたいこと、いっぱいある。

 決めた。

 しばらく気配消して、空からこの二人をこっそり観察する。

 あ、でもただ観察してるだけじゃつまらないからたまには地上に降りて植物や生き物の観察する。

 まだ彼らと接触をとるのは早い。

 私忙しい。


「ふふ、楽しみ出来た」


 このまま私、以外に別のところから来た人と会えたらそれも嬉しい。

 それか面白い生き物とかでも良い。

 弱い人は嫌い。 

 でも強いは好き。

 面白い人も好き。

 でも恋ではないはず……これは好奇心。

 そう好奇心という感情の一つ。

 人の感情。

 こっちに来てからの方が感情をよく学べる。

 道具である私にちゃんとした居場所が作れるかも知れない。


「ふふ、ここは。あそこよりずっとずっと面白い」


 元の世界、嫌い。

 全て頭にある、つまらない。

 新しい物、何もない。

 全て色あせてる。

 あっちの人も嫌い。

 何か諦めたような目をしてる癖に私を作った。

 何かと思えば私に全てをやらせようとする。

 何もかも。

 私から希望を見ようとした。

 所詮は人形の私からは――道具の私から希望等見えるはずはないのに。


 だから世界を越えた。

 私には無価値な世界を捨てて。

 自分たちが作りだしたモノ

・・

を神とする実に愚かな人々を捨てて。

 私の渇きを潤す為、何もない所から抜け出すため。

 所詮、私も私のことしか考えていない。

 でも、娯楽は人に必要なこと。

 私、好奇心押さえられない。

 だから……私にも必要なこと。


「世界を越えて、来た意味あった。私、嬉しい。この世界灰色じゃない。光がある、あらゆる生物から。この場所から命感じる」


 もっと、もっと色々な物をみたい。

 色んな事してみたい。

 記憶が欲しい。

 こっちの人とお話してみたい。

 とにかく、色々な事がしたい。

 もっと新しい物、私が知らない物体、私が知らない事を知りたい。

 だから――


「だからこの私に見せて? あっち側の世界しか知らないこの私に、貴方逹がこの世界良いところや面白い出来事、新しいことを」


 この私、鳳楽に。


 必ず……ね?


  * * *


「……!」


 背中から変な汗が出てくる。

 何か……こう、見られてる気がする。


「駄神! 今何か感じなかったかっ!?」

「駄神言うなっ! で、何かって何ですか?」


 気付いたのは俺だけか。

 気のせいか……? 

 いや、でも――


「……さっき、視線を感じたような気がするんだ」

「視線? 気のせいじゃないですか? 僕には何も――」


 駄神が突然口を閉ざす。


「どうした?」

「……どうやらいきなり当たりを引いたようですよ。 僕達」

「それって……」


 まさか、異世界人がもう見つかったのか。


「空から少しですが異様なモノを感じ取れました。 あり得ない力を感じるのですが、異世界人でしょう。 相手は恐らくこちらの様子をうかがっているのだと思います」

「……どうするんだ?」

「それは勿論貴方に戦って頂きます」

「駄神、貴様俺に本気で戦わせる気でいたのか!?」

「……え、言ったじゃないですか?」


よし、殺るなら駄神からだ。

俺は刀を鞘から抜き、駄神に向ける。


「ちょっ何で僕に向けるんですか? 僕は只の非力な神ですよ!? 他人に任せて当然じゃないですか!?」


駄神が青ざめた顔で何かいってくるがこの際どうでも良い!

只の一般人に戦闘を任せようしたことを悔やむがいい!


「五月蝿い、俺は一般人だぞ!? 戦闘なんか出来るか! さっきは何か流されて刀を渡されてしまったがこうなったらこれで貴様を始末する」


俺は刀で駄神に斬りかかる、がそれは指で誰かに止められた。


「私の観察対象二人が、仲間割れ、面白くない」


刀を止めているのは十代半ばくらいの可憐な少女だった。

しかし、その背中には鳥、特に鷲に似た翼を生やしている。


「観察対象?」


駄神がこのタイミングで少女に疑問を投げ掛ける。

……馬鹿か?

タイミングおかしいだろ!

ええと普通ならもっと……焦ったりビックリしたりするだろ……?


「ん、私貴方達空から見てた。本当はずっと観察してるつもりだったけど貴方達が」


少女は無表情で口だけを動かしながら駄神の疑問に答えた。

彼女の声は綺麗なソプラノボイスで、見た目も相まってアニメのキャラクターみたいだ。

瞬きをしていないのが少し怖い。


「……キクト、こいつは異世界人だよな?」

「はい、間違いないです」


 やっぱりか。

 こっちの人間なら翼生えてたりしないよな。

 あの異世界人は空から俺達を見ていたと言った。

 さっき感じた視線はこの異世界人だろう。


「いつから俺達を見ていた?」

「ん……君達が言い合いしはじめてから」


 結構前から見られているな。

 空からって事はやっぱりあの翼は本物か。


「何故俺達を観察していた?」

「ん……面白かったから、ただの好奇心」


 答え方がまるで機械みたいだ。

 少し、気味悪いな……。


「では僕も少し質問良いですか?」


駄神が左手を上げて異世界人に言う。

……お前は小学生か! と思ったが話がややこしくなると思い、口には出さない。


「……ん、構わない」

「あなたは僕達を襲う気……僕達と戦う気でいますか?」


駄神にしてはいい質問だな。

確かに聞いておいた方が良い、少なくとも聞かないよりはずっとましだろう。

……相手が心理戦に強いと不味いとは思うが


「ん、今は戦う気なし。でも私と戦えるくらい強くなったら襲うつもり」


淡々と恐ろしいことを言う彼女に俺は少し恐怖を感じる。

……でも、ここで引いたら俺や駄神は危ない。

俺は何とか頭に言葉を作り、口に出す。

得体の知れない者と話すのはもうごめんだな。


「今は? どういうことだ。後私と戦えるくらい強く? 今の俺達ではまるであんたに歯が立たないみたいな言い方だな?」

「ん、今の貴方達では私に勝てない。少なくとも私の見立てでは。だからまだ戦わない」

「理解出来ないな。今、俺らがあんたに勝てない、そう感じたから戦わない。そういう風に聞こえるが?」


異世界人はよくわからない。

……こいつは何を企んでる。


「そう、だから戦わないの。貴方達が私を倒せるようになるまでは」

「僕達が貴方に勝てるようになるまでは……? 僕達は貴方と戦う気はありません。僕達は異世界人、貴女のような人を保護するために動いてるんです。できれば……戦いたくはありません」


駄神がまともな事を言っている、とつい思ってしまったが口には出さない方がいいだろう。

……絶対に。


「ん? やっぱり私以外にいるんだ別世界の者。ふふ、面白い」


こいつ、自分以外にも異世界人がいるのが分かっているのか。


「やっぱりとはどういうことだ」


あくまでも俺は強気に奴に言葉を掛ける。

まだ警戒心を解かないべきだ、と体も言ってる。


「私以外のこの世界とは違う異質な力薄々だけど感じてた。 やっぱりいるんだ。ふふふ、これは面白くなる」


声は笑っているようだが、顔は無表情のままで固まっている。

……見てるこっちとしては気持ち悪い。


「面白くなるってどういうことだ? あんたは何を望んでいる」

「ふふ、ボクはただ、飢えているだけさ。あっちは暇でしかなかったからね。私がしたいのは君達の言葉で言うなら……『暇潰し』だよ。あっちは退屈しかなかったんだ。私の娯楽は観察と戦いだけそれ以外、望まない」


声が……変わった?

さっきまで完璧に少女の声だったのに少年のように低くなった。

一人称もボクって一度あいつは言った。

いったいなんなんだこいつは!?

保護任務ではこんなのと何回もあわなきゃいけないのか。


「……一つ提案がある」


さっきから話してて俺は閃いた。

こいつなら多分乗ってくる。


「何?」

「俺達はあんたみたいな異世界人を探して保護する目的があるんだが……キクト――こいつが言うには混乱し襲い掛かって来る可能性があるらしい。そこでだ、あんたにこれからの異世界人探しについてきてもらいたんいんだ。ついてくればあんたは戦いが出来るし、俺らは比較的安全に異世界人の保護が出来る。 どうだ?」


これに乗ってくれれば――俺はだいぶ楽が出来る。

「貴方って案外頭良いんですね」


 余計な事を言うな駄神。


「…………面白そう。 いいよ、貴方達についてく」

「なら、決まりだな」


そう言いながら俺は右手を前に出す。


「この右手は……?」


 相手はきょとんとしている。

 もしかして異世界には握手の文化はないのか。


「握手だよ。握手、分かるか?」

「あ、そういうこと。ん」


彼女の右手が俺の右手をしっかりと握る。

心なしか少し冷たい気がした。

まるで人の手ではないかのように。


「これから宜しくな……ええと」 

「ん、鳳楽。 それが私の名前」

「ああ、宜しくな鳳楽」

「宜しくお願いします鳳楽さん」


俺達はこの時まだ知らなかった。

異世界人達にはことごとくこの世界の常識が通じないことを。


・編集者コメント

企画進行遅くて本当にすいません

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