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恋鱗  作者:
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2

次に目が覚めたとき、人がどこにいるかなんて普通は眠りに着く前の記憶次第。

けれど時に、その記憶が頼りにならない日も存在する。

そうね。例えば、飲酒をした日とか、喧嘩をして殴られた後とか、ほかにも色々。

それぞれの事情もあるでしょうけど、大抵は、理解できる理由のもとに事件は起きるものだと私は思う。


「でも、今は違う」


誰か考えたことある?

目覚めたら、人間以外の何かに成り代わっていた。なんてこと。


「なんで。どうゆうこと」


目立った特徴を上げればキリがない。

外見的特徴は、まず肌の色が真っ白でところどころ水色の魚っぽい鱗が生えてるし。髪の色も深い藍色。瞳の色は見てないからわからないけど、きっと純日本人代表色の黒ではないことは確かだと思う。それだけでも十分驚きなのに、ここがどこなのか私にはさっぱりわからない。

見た感じ、海外ドラマで見たことある古いモーテルみたいな洋室で綺麗でもなければ汚くもないしベットは一つにバックが一つ。

荷物を漁ったら、カードが出てきた。


「んー。名前は、なまえはフィン」


女。百四十二歳......ん?

ギルドって、ゲームじゃないんだからさ。冗談でしょ。


「しかもこのカード、破棄されてる」


一緒に入っていた書類に登録を抹消したい理由とか、解約用の書類も控えが入っていた。

なんで、意味がわからない。

ここがどこかも、なんなのこれ......意味不明なんですけど。


「ほかに、なにかないかなあ」


なんて、現実逃避も甚だしいけど私はバックの底をさらった。

出てきたものは財布と乾燥した食料と鞣し革袋に入った水いれ、そしてさっきの書類と一冊の 日記帳だった。正直いけないこと

だとは思ったけど、今の私に読まないという選択肢はない。

かさり。他に人のいない室内で音を響かせ開かれたその日記には、そこには、こう書き残されていた__________。






















【芽吹きの(めぶきのき)二日


わたしにはもうなにものこされてはいない。

おやのかおもしらぬわたしには、ひごしてくれるはずのおとなのりゅうすらけんとうもつかず、もうつがいをえるにはやすぎることもないとしだというのに、じぶんいがいにひとがたをもったりゅうをみたこともない。

このくににさらわれ、しえきされつづけ、わたしはくちるのか。

さくや、あのおとこにいわれた。

わたしはもうすぐ、わたしをしいたげたひとか、ちのうをもたぬげすでかとうなりゅうのどちらかとこをなすのだと。

わたしには、もう、たえられぬ。

いつか、わたしをたすけに、どうぞくのものたちがこのくにへあしをはこぶとしんじてきたが、もう、たえられぬ。


あす、くにをでようとおもう。

みつかればころされるか、とらえられえいえんにひのあたらぬちかでこをうみつづけることになるだろうが、くににのこったとてかわらだろう。

わたしは、じぶんのうろこと、うんめいにかけようとおもう。


これがさいごになるやもしれないから、いちとだけ、のぞみをかきのこそう。


ひとめでかまわぬゆえ、ははと、ちちにおあいしたかった。

ひとことでかけらでいいから、つがいをえるしあわせをしってみたかった。


そしてのろおう。

けだかきわたしをさいあいのどうぞくよりひきはなし、ののしり、しいたげながらも、おびえ、それでもてばなしはしなかったおろかものたちを】



うん。なにも言えないわ。

ハードな人生だね。くらいかな。

最後のページを開いてしまったらしい日記内容はこんな感じで、私は正直なところぞっとした。

思わず閉じてしまいたくなったけれど、これ以外に手がかりのない私は一つため息を吐き。


「女は気合いよね」


訳のわからない言葉を呟くことで、静まり返った奇妙な部屋の空気を何とか変えて私はもう一度その日記を手に取り、今度こそ日記最初のページを開いた。

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