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恋鱗  作者:
3/16




「ただいま」

 

がちゃり。音と共に住み慣れた古めかしいマンションへと帰り着いた私は、いつもの習慣でどさりと音を立てて荷物を床におろし、長ったらしい独り言を言う。

こんなことは、日常茶飯事。だって、一人暮らしの独り者でだあれも話す相手がいないんだもの。


「ほんと、天涯孤独の辛いところよね。友達もいないし。人さみしい時に話す相手がいないなんて」


自分だけの家は居心地がいいけど、ふとした時に寒々しさを感じて嫌になる。

こんな時、知り合いの結婚話を耳にしては羨ましくて、家族が欲しくてたまらなくなるけど。

……私は家族の作り方も知らないし、きっといざとなったら意気地をなくしてこのマンションへ戻ってくるしかなくなるのだと思うと外に出る勇気も失せる。


「いっそ、何もかもなくなったら」


本当に、仕事もお金も気薄ではあるけど人間関係さえ、このマンションも残さず消えてなくなったら……そうしたら、私はどうするだろう。

落ち込んで自殺するのか。

それとも前向きに生きていこうと努力するのか。


「でも、少なくてもこの停滞した人生を過ごさなくてよくなりそうね」


ふと、床に置いた荷物の横に転がるスプレーを見た。

昨日の帰り道、近所のドラックストアで見つけた売り出し中の消臭除菌スプレー。色んな香りのが売られていて、少し前の新商品はお日様の香りだったのが、今度は草原の香り。

すっきりした香りが好きな私は新商品でセールしてたし、まぁお試しにと思って買っては見たけどまだ使ってなかった。


「変なこと考えるのも空気が悪いせいね。気分を変えるのにも良さそうかも」


しゅ しゅ とスプレーしてみたら、これがお試しだなんてとんでもないくらい良い香りで大満足。

買ってきたコンビニ弁当とお茶を飲んで、タバコを吸いながら、混ざり合う香りを楽しんでたはずなのに……私の記憶はそこで途切れた。
































 =====サイド???


 さぁ、めをとじて


 これからおこりうるすべてのことは、まぶたをひらけばきえてしまうはかないゆめ


 まるでらくえんにいるようにこうふくにつつまれることも


 じごくにおとされたかのようにくつうにさいなまれることもある


 どちらにころんでも、まるでげんじつせかいのように、あなたをなやませることでしょう


 けれど、すべてはげんそうであり、くうそうであり、はかないゆめ







 ゆめのせかいは、むげんにひろがりをみせ


 ゆえにひと とよばれるしゅぞくはひとつではなく


 ちのうをもついきものはあふれるほどそんざいする


 けれど、いのちがそだつにはあまりにもかこくなかんきょう


 あなたがゆめみるせかいのなは 「          」


 さえぎるもののないこのゆめのなか


 ゆらゆらたゆたうあなたのこころは、このゆうだいなるせかいのうみで


 なにをえますか?


 


















そのふしぎなこえを、わたしはいまでもおぼえてる。





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