女の子
担当:愛莉
大きい通りを行けば、そのうち分かる道に出るだろう。そう思いながら歩いていく。
手にしているのはボックスだけで、ポケットには携帯電話も財布もない。
部屋で普通に過ごしていたから、どちらも机に置きっぱなしだ。
どっちかがあれば、家に連絡して迎えに来てもらうことができる距離なのに……。
前方で歩行者信号が点滅し始める。
自然と掛け足になり、渡りきったところで歩くペースを戻した。
車だったら一時間もかからない距離のはずだけど、さすがに徒歩はキツイよな。
思わず大きい溜め息をついたとき、横から「すみません」と声を掛けられた。
声を掛けてきたのは、俺と同じくらいの歳に見える女の子だった。
肩にかかるくらいの黒いストレートヘア、化粧をしているわけじゃないけどクリクリした目、ほんのり赤みを帯びた頬。なかなか可愛い。
「何ですか?」
立ち止まって問い返すと、彼女は「それ」と呟きながら俺の手にしているボックスを指差した。
「どこで買ったものですか?」
唐突な言葉に、思わず「は?」と声を漏らす。
「可愛いジュエリーケースだなと思って……。私、アンティークっぽい小物が大好きなんです」
「あ、いや。これは買ったヤツじゃなくて。てか、ジュエリーケースなんて洒落たモノでもなくて」
彼女はジッとボックスを見つめている。欲しそうな顔をしていた。
だがこれはただのボックスではないし、拾い物だからといって「はい、どうぞ」と渡すわけにはいかなかった。




