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悪役令嬢ですが、呪ってません!~断罪回避のため闇魔法を隠していたら、王子に正体がバレました~  作者: 志熊みゅう


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22/30

22. 襲撃

 放課後は生徒会室に向かう。今の幹部は三年生だが、この数週間はリュカが王家特権で貸し切りにしてくれているそうだ。


「兄上の解呪を陛下と母上に隠密で報告した。その大部分は既に解呪済みだと。レナ嬢の名前はまだ出していない。母上は泣きながら喜んでくれたよ。」


「陛下たちはその説明で納得してくれたんですか。」


 私は少し驚きながら聞いた。


「ああ多分、招聘した優秀な闇の術師と言ったから、ルブタン教授が解呪したと思っているんじゃないか。解呪後、体調を崩した従者の資料を渡したら、今まで黙っていたことも了承してくれたよ。ジュベール公爵家の手の内の者たちだからね。そちらについては影を動かして調査してくれると。」


「そうですか。」


「次の作戦も、初めは反対されたけど、魔王の復活を阻み、兄上を守る唯一の方法だと説得したら、最後は納得してくれたよ。」


「ありがとうございます。」


「この作戦はタイミングが全てと言っても過言ではない。色々な状況を考えて実戦練習をしよう。」


 私たちはハンドサインを決めて、技のタイミングを合わせる練習をした。アランも禁術がだいぶ上達したようだ。


「もうこんな時間か。僕たちは生徒会の仕事が残っているから、レナ嬢、今日はこれで。」


「この部屋を貸し切りにしている以上、殿下も生徒会の仕事はしないといけないんだ。レナ嬢も来年、生徒会に入らない?万年、人手不足で困っているし。」

 

 アランは本当に私に手伝ってもらいたいそうだが、面倒事はごめんだ。思いっきり首を横に振って、生徒会室を出た。外はすっかり日が暮れて真っ暗。リュカたちの言う通り、だいぶ遅くなってしまった。廊下を走って、迎えの馬車に向かう。馬車の前には見覚えのある銀髪。いつも帰りは別なのに、シャルル兄様が学園の玄関で待っていた。


「は?何で待っていたんですか?」


「何でもだ!遅い!帰るぞ。」


 私たちは喧嘩しながら、馬車に乗り込んだ。ふくれっ面のままの兄と一緒に乗る馬車は少し気まずかった。


「だから、何で待っていたんですか?」


「待っていたんじゃない!お前があまりに遅いから、迎えに来たんだ!」


「シャルル兄様が!?」


 私は思わず、目を丸くした。


「――また、殿下か?」


「王家の諸問題について少し相談受けていまして。」


「それ、お前じゃなくちゃいけないのか?」


「多分?」


「王都にいなかったお前は知らないかもしれないが、アレクサンドル殿下が外に出てこなくなって、リュカ殿下の婚約者争いは熾烈なんだよ。迂闊に近づいて襲われた令嬢なんてザラだ。」


「思ったより物騒ですね。」


「ああ。」


 その時だった。馬車が急停車した。


「どうした!?」


 窓から外を覗くと、武装した男たちが道を塞いでいる。盗賊か。ちょうど人気のない道に入ったところを狙われたようだ。


「ヒヒヒ。俺たちはオランジュ侯爵令嬢に用がある。降りてこい。」


 薄汚れた男たちが笑う。兄も窓の外を見ながら、敵の数を数えていた。


「おい、コートを借りるぞ。お前はこれ被ってろ。俺が声かけるまで開けんじゃねーぞ。」


 シャルル兄様は自分の着ていたコートを私に渡すと、束ねていた長い銀髪を振りほどいた。代わりに私の薄紫色のロングコートを羽織ると、無言のまま馬車の外に出た。


「おお、お前か。すげーべっぴんじゃねーか。こりゃとんだ上玉だ。」


「きれいな顔してお前何したんだ?大人しくしていたら命だけは助けてやるぞ。」


 シャルル兄様は端正な顔立ちで、顔だけなら女性と間違われてもおかしくはない。これはもしかして、どこかの令嬢の差し金か。シャルル兄様の言う通りになってしまった。


 自分にできることを考えていると、男の高笑いが雄叫びに変わった。


「ぎゃああああ!」

「ぐわぁ!」

「お前、なにもんだ!?」

「おのれえええ!!!」


 剣と剣がぶつかり合う音が響く。


 窓から再びこっそり外の様子を伺う。シャルル兄様が華麗な剣さばきで盗賊を圧倒している。しかし多勢に無勢。これは緊急事態だ。兄の身に何かある前に、闇魔法を使って何とかしなければ。タイミングを見計らっていると、馬車の扉が開いた。


「おい、全員、返り討ちにしたぞ。あとで憲兵に報告しねえとな。」


「へ、ぜんいん……?ありがとうございます。」


「しまった!!全員倒したら、黒幕が誰か分からない。ああ、しくじった。」


 安堵したのと同時に、シャルル兄様らしいなと思って、私は噴き出すように笑った。兄様も「おい、笑うな」と言いながら、一緒に笑っていた。


 憲兵にこの襲撃を報告したが、こうなってしまった以上、誰が依頼主かは分からないだろう。そして、この事件はリュカを思った以上に心配させた。


「何で、うちの馬車に王家の警護がつくんだよ!」


 シャルル兄様が不機嫌に吠える。タイミング的に私とリュカの接近を妬む令嬢の仕業が疑われたが、魔王崇拝教の関与も完全には否定できない。作戦遂行の前に、私に危害が加えられるのは避けたいのだろう。


「なんかあったら幻影で何とかするって言ったのに……。」


「あっ?お前なんか言ったか?」


「いえ、何も。」


 こうしてシャルル兄様と喧嘩しながら、通学するのもすっかり日常になっていた。

シャルルお兄ちゃん大活躍回でした!

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