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悪役令嬢ですが、呪ってません!~断罪回避のため闇魔法を隠していたら、王子に正体がバレました~  作者: 志熊みゅう


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2. 遭遇

 お茶会を避けても、闇魔法を隠しても、ストーリーの筋に関わる大きなイベントを避けられるという保証はない。もしも原作通り、私に疑いの目が向いた時、自己弁護をしなければいけない。そのためには呪いを知る必要がある。私はテディベアのポールをベッドに寝かせ、幻影魔法を使って私に見せかけた。毎晩のように寝室を抜け出して、書斎に籠って、闇魔法を学んだ。


 闇魔法を勉強しはじめて、気づいたことがたくさんある。まず幻影は闇魔法の中でも上級な術なのだ。生まれてから今まで感覚的にできていたことも、理論を学ぶとさらに応用の幅が広がった。呪術はさらに奥が深かった。漫画ではあっさりとしか描かれていなかったが、一口に呪いと言っても、その種類によって術の構築の仕方が全く違う。なんと闇魔法の適性が無くてもかけられる呪いもあるのだ。


 別荘で過ごすうちに、季節がいくつも巡った。私も十一歳になっていた。


「――呪い返しか。」


 ほとんどの術を学び終わり、私は祖父が最期にやり残した仕事に取り組むことにした。それは完全な"呪い返し"。現在、それぞれの呪いごとに、対処法はある程度確立されているが、その全てをまとめて防ぐ術は"不可能"だとされている。そのため、複合型の呪いではそれを防いだり、解呪するのは極めて難しいのだ。


「えっ!この術式もうほとんど完成していないかしら?!」


 私は興奮した。呪いを熟知していたお祖父様らしい原理的ながら斬新な術の構築。あと少し洗練させれば、実用的な術式になると確信した。それからというもの、呪い返しを完成させるために、毎日裏山の魔物を狩った。狙いは呪いを得意とする"レヴナント"。


「Maledictionem retroverte!――呪いよ、反転せよ!」


 鏡のように反転した呪いがレヴナントに突き刺さる。うめき声と共に消失した。


「よし!」


 今の術式も悪くないのだが、魔力負荷が大きい呪いだと弾き飛ばすのにも大きな魔力が必要だ。闇魔法の天才・私レナなら"できる"が、実用的とは言い難い。どうしたら魔力の節約ができるか、それが今後の課題だ。


 その時だった。


「ぎゃああああ!」


 森の奥から、少年の叫び声が聞こえた。


「子ども!?この森は魔物の巣窟だというのに。」


 自分の体も子どもであることをすっかり忘れ、私は声のする方に急ぐ。森を抜けると、湖畔で金髪の少年が、ドラゴンの一種であるワイアームに果敢にも立ち向かっていた。勇者や剣士に憧れる平民の子だろうか。年は分からないが、私より幼く見える。


「お、女の子?!君がなんでこんな森にいるんだ。早く逃げろ!」


「何をおっしゃっているんですか?私は叫び声が聞こえたので、助けに来たんですよ。」


「は!?僕は光の勇者だ。僕は負けない。女に守られてたまるか。」


「――そうですか。」


 光の勇者ね――。私の態度が気に食わなかったのか、真っ青な瞳に睨まれる。そこまで言うならお手並み拝見だ。さっきまで泣きそうな顔をしていたくせに。


 ――バサッバサッ。


 少年の剣がワイアームを切り裂いていく。太刀筋は良いと思う。けれど、ワイアームの特性はその驚異的な再生能力。切った先から身体がつながっていく。


「急所を……急所を打たなければ、こちらがやられる。――それで君は何をしているんだ、とっとと逃げろ。」


「――だから助けに来たって言っているじゃないですか?」


「助けるだと?」


「Oboedientia absoluta!――絶対服従!」


 ワイアームの眼を凝視して詠唱する。圧倒的に魔力が格下の相手にだけ通用する闇魔法の一種だ。ワイアームが攻撃をやめて、頭を垂れた。


「――お前、この辺の子じゃないね。自分の巣にお帰り。」


 ワイアームはそのまま踵を返して、東の山の方へ飛んでいった。一部始終を見ていた少年は剣を持ったまま、ガタガタ震えていた。


「ドラゴン種は下手な人間より賢いんですから、殺したらかわいそうですよ。」


「ありがとう。助かった。――お前、闇魔法が使えるのか?何者だ?」


 今のを見て、すぐに闇魔法と分かるのか。子どもだからと思って舐めていた。


「だったらなんですか?それに『何者だ?』はこちらのセリフです。スクレ湖およびその付近の森はオランジュ侯爵家の領地。あなたが不審者です。」


「すまない名乗り遅れた。――"リュック"という。もしかして君はオランジュ侯爵家の血縁者か。」


「――関係者ではありますね。ですが、あなたに名乗る必要はない。」


「そうか。あの家の令嬢が病弱で領地に籠っていると聞いたから、まさかと思ったが。」


「どうしてその病弱な令嬢が森で魔物を狩っていると思ったんですか?」


「それはそうだな。すまん。」


 じっと彼の目を見据えてそう答えると、顔を赤らめて彼は俯いた。


「隣の森というと、レーヴの森でしょうか?安全なところまでお送りしますよ。」


「ありがとう。お前強いんだな。」


 リュックは母親とお兄さんが病気らしい。移るといけないからこちらに預けられたそう。僕は勇者になる、そしたらお前を従者にしてやると言われたので、丁重にお断りした。私は森を案内し、滞在先だという隣の森の山荘まで届けた。

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