19. 作戦
放課後はリュカに呼ばれて、生徒会室に集まった。まだ学園に入学していないアランの妹も神殿から外出許可を得て、部屋に来ていた。
「あら、今は神殿はお忙しいのではなくて?」
「ふふ。今日はお兄様のところに誕生日プレゼントを届けに行くと言って許可を取りました。はじめまして、聖女・カトリーヌです。」
神官服に身を包んだカトリーヌは、フードの隙間からアランと同じ黒髪をのぞかせていた。聖女の証である金色の瞳がきらきらと輝き、美しい。
「こちらこそよろしくお願いします。オランジュ侯爵家令嬢のレナと申します。」
お辞儀を済ませると、テーブルの上のマカロンが目に入った。
「これ、令嬢たちに人気のパティスリーのマカロンじゃないですか!好物なんです。お一つ頂いてもよろしいでしょうか?」
「いくつでもどうぞ。君のために用意したからね。」
「えっ本当ですか?殿下、ありがとうございます!早速頂きます。」
やっぱりおいしい~!よく私がここのマカロンが好きだって分かったな。リュカのスイーツ選びのセンスには脱帽だ。
「早速本題だが、レナ嬢、兄上の呪いが解けそうというのは本当か。」
「ええ、実物で試していないので、確実とは言えませんが、レヴナントの呪詛で検証し、共通骨格を狙った解呪に成功しています。原理的にはあの呪いもこれで解けるはずです。アラン様の禁術はどうですか?」
「ああ、最近は少しずつ大きいもので練習しているよ。」
アランが窓辺を指さす。ぶつぶつと何やら詠唱すると、窓辺で羽ばたこうとした鳥が静止した。
「素晴らしいですわ。あと、カトリーヌ様のお役目ですが、一旦命をつなぎとめることに専念してください。残った呪いは私が後処理しますから。」
「はい、頑張ります!」
「そうだ呪い返しのペンダントは王宮魔術師に言って、試作品を作らせた。レナ嬢、見てもらってもいいか。」
「すごい!こんなにたくさん。」
渡されたペンダントの術式を一つずつ確認する。私の作ったものと遜色無さそうだ。
「全て確認しましたが、良い出来だと思います。」
「では、作戦は全員このペンダントを付けて行う。実はオレリア嬢の代役で、カトリーヌ嬢が兄上の邪気払いを命ぜられた。邪気払いと見せかけて塔に入り、作戦を遂行する。」
「はい、分かりました。――やはり、オレリア様の力は戻らないのですか?」
「……神官長たちが話しているのを盗み聞いたんですけど、どうやらオレリア様は聖魔力だけではなく、魔力そのものを失っているみたいなんです。そんなこともう前代未聞で。ジュベール公爵は、養子縁組を解消するとまでおっしゃっているそうです。」
カトリーヌが少し言いづらそうに答えた。
「――作戦決行の前に、オレリア嬢に会いに行こうと思ってね。彼女の知っていることを話してもらう。」
リュカが眉間にしわを寄せて言った。
「その面会、私もついて行って大丈夫でしょうか?もちろん、彼女を刺激しないように幻影で身を隠します。魔力のない者が幻影を見破ることはまず不可能ですから、気づかないでしょう。」
「分かった。そちらはカトリーヌ嬢の都合に合わせて神殿へ行く。日程が決まったら、また連絡する。」
「ありがとうございます。」




