16. 愛の呪い
「何が分かったんだ?!」
「殿下は誰かを守るための呪詛があることをご存じですか?」
「誰かを守る?」
「ええ。代償型加護呪詛、通称"愛の呪い"。命と引き換えに、誰かを守護する呪いです。」
「随分とロマンチックな呪いがあるんだな。」
アランが目を丸くしながら言った。
「ロマンチックでしょうか?呪いは呪いですよ。」
「――まさかロクサンヌ様は愛する兄上を守ろうとして、その命を代償に愛の呪いをかけた?」
「あくまで仮説ですが。本来、遅かれ早かれ、依り代の魂は消失、もしくは魔王に吸収されるはずですが、それが起こらず、中途半端な形で魔王とアレクサンドル殿下が融合した形となってしまった。」
「その辺の事情が分かっていない魔王崇拝教の信者たちは、兄上の肉体と魔王との癒合を進めるため、兄上の魂だけを呪い殺そうとしているということか。」
「実行犯たちがどこまで理解して動いているのかは分からないですがね。有象無象の呪いを受けて、アレクサンドル殿下が生ける屍になってしまったので、魔王崇拝教も依り代を他に移すことも考えているかもしれません。」
「……王家の直系は兄上以外に、陛下と僕。」
「一般論で言えば、若く健全な肉体、そして魔王の魂を納めるにふさわしい魔力の器を持っている者が適しているはずです。」
「うむ。」
「――なるほど。それでどうするんです?魔王を封印できる光の剣を握れるのは殿下で、でも殿下が次の依り代の候補でもあるなんて。」
アランが焦ったように言った。
「まずは魔王をアレクサンドル殿下から引きはがします。そこを光の剣で封印する。魂だけの状態なら魔王も大きな抵抗はできないはずです。」
「……魔王を引きはがす?」
「魔王にも意思があるので無理矢理は難しいでしょうね。リュカ殿下があの部屋に行っても、肉体を奪い取ろうとしなかったのは、光の剣で討たれることを危惧してでしょうし。ただ魂は肉体を欲するものです。元の依り代がいよいよ使えないものにならないと判断すれば、動くしかない。」
「――レナ嬢、兄上に何をする気だ?」
「"呪い"を全て解かせていただきます。そう、魔物の呪いだけじゃなくて、その奥、アレクサンドル殿下に深く根付いたロクサンヌ様の愛の呪いも。」
「つまり兄上を殺すのか……。」
青ざめた顔でリュカが言った。
「ええ、当然リスクはあります。しかし守る方法もあります。ただこれは私にはできないことなので、リュカ殿下もしくはアラン様にご支援いただく必要があります。」
私は作戦の仔細を二人に伝えた。




