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そんなに欲しいなら

少々残酷な表現があります。ご注意ください。


夫が国王に即位して、十一年が経った。


ミュゼルシアはこの間に四回の妊娠をし、六人の国王の御子の生母となった。

四人の王子と二人の王女。御子たちは全員が紺碧の瞳を持っている。


また、子育てをメリーアが一手に引き受けてくれる傍ら、国王を支える第二王妃としても尽力した。

子供を抱き上げることは終ぞなかったが、時おり姿を見かけるとつい頬が緩んだ。


そして、この年の冬。

ミュゼルシアは、ロイドとルウと半日を過ごし、一つの決断をする。


「……姫君。いいのですね?」


年齢相応に皺の増えた精悍な顔立ちを厳しく顰め、ロイドが低く問う。

ルウは不満げに唇を尖らせている。


「いいのよ。ふふ、やっと手放せるわ」


嬉しそうに、母が生きていた頃のような無垢ささえ感じる笑顔に、ロイドとルウは頷くしかない。


そして、要請に応じて待っていたテオバルトは、執務室に入ってきた二人目の妻の姿に、思わず絶句することとなる。


「陛下。嫁いだ時の『望みを一つ叶える』お約束、果たしていただきにまいりました」


目を黒い布で隠し、心の奥底から信じる唯一の護衛の手を取って入室してきた異母妹は、口元に笑みを称えていた。


美しい銀の髪、六人もの子を産んでも嫋かで魅惑的な体躯。

初めて会った時から、彼女はいつも視線を釘付けにする。


最初に見たのは、立太子の式典の最中。

まだ幼子と呼べる年齢の彼女は、何もかもを見透かすような紺碧の瞳で場を支配した。

この少女にこそ膝を折るべきと、本能が告げたくなるほどに。


それから年月を経て、再会した彼女は眩く気高い高嶺の花でありながら、欲して焦がれる女性へと変貌していた。

第二妃にと言葉にしたのは、売り言葉に買い言葉のように彼女からだったが、テオバルトは心を読まれたかと思った。


妹で、十も年下の彼女に、いつでもテオバルトは片想いしている。

テオバルトを見る彼女の紺碧に熱が灯ることは、ついに一瞬もないのに。


「……目、を、どうしたのだ」


平伏したくなるほど、抗えないほど美しいあの瞳を。


テオバルトの問いに、ふふと笑った彼女が小さく首を傾げる。

とうに二十代の半ばを過ぎたというのに、相変わらず彼女は昔のままだ。


「抉り取りました」


しかし、告げられたのは想像だにしない残酷な事実だった。


声を失うテオバルトの前に、護衛がそっと一つの箱を差し出す。

震える手で蓋を開けると、神殿魔法で保存された紺碧の瞳が二つ鎮座していた。


呆然と異母妹を見やる。

清々しさすら漂う笑みを穿いて、彼女はくすくす喉を鳴らした。


「陛下。離縁してくださいませ」


婚姻前も今も、一度もテオバルトの名を呼ばない麗しい声音が弾む。


「世継ぎの心配はありません。執務も後継をしっかり育てています。王妃もメリーア様がいらっしゃいます」


世継ぎの生母であっても、第二妃のままがいいと希望したのは、そういえば彼女の方だったと思い出す。


率先して閨の務めを果たして子を孕み、意欲的に国政に取り組み、王族に生まれた責務を周りの誰もが認める実績でこなしてきたのは。


「紺碧の瞳は王家にお返しします。離縁してくださいませ」


すべて、この日のためだったのだ。



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