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夜更かしから始まる青い春  作者:


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5/6

ep.5ー漫画借りちゃう大作戦ー


 さて、そろそろか。

 時刻は23:30になっている。

 俺は先週、マユと天月さんと約束したとおり、いつもよりは早めだがコンビニへ向かう準備を始める。


 準備と言ってもトイレへ一応行くぐらいで身支度というようなことは……。

 いや、待てよ。

 マユはともかくとして天月さんも来るんだよな?

 この部屋着スウェットとボサボサの髪の毛ではとてもじゃないが恥ずかしくて会えない。


 まあ、髪のセットくらいはしていくか。

 この時間帯だと親が起きていないか不安だ、そっとドアから聞き耳を立ててみる。


 もう寝室だろうか?

 音は聞こえてこない。


 恐る恐るドアを開けると、家の中は静寂に沈んでいた。

 よし、と慎重に、だが早く階段を降りてゆく。

 この忍足は幾度と改善を重ね身につけた、俺の奥義でもある。


 リビングの明かりも点ついていない。


 よしっ。


 誰にするでもないが静かに頷き、薄暗い廊下を進む。

 そうしてたどり着いた洗面台。

 髪のセットをするなんていつぶりだろうか、服もできればまともな服を選抜して着ていこう。


 なんだか胸がそわそわしていた。


 と、スマホの通知音が鳴る。

 天月さんからだ……。

 メッセージを表示させようとする指が震える。

 

 やっぱりやめましょうとか、そういう断りの連絡だったり……。

 夜遅いしもう寝たいだろうし、そもそも俺引きこもりだしそんな男を相手にする余裕なんてないだろうし……と、意を決して目を瞑りタップした。


 そっと目を開けるとメッセージが表示されている。


 〈天童君!12時、先週と同じコンビニで!待ってます!〉


 すぐ、行きます。


 サッと髪をセットし、俺が持っている服の中で1番おしゃれであろう服を着て玄関へ。


 美少女のためならっ!


 いつもとは違う時間、いつもとは違う気持ち。

 玄関のドアにかける手は、やはり少し震えている。

 大丈夫だ、いつも通り。


 呼吸を落ち着けて静かにドアを開ける。


 いつもはこの一歩がすごく重い。

 だけど今日は背中がふわりと軽い、そんな気がした。



 「天童君!こんばんは!」


 「待たせたねっ!天月さん」


 「ううん、待っていないわ。でね、天童君、その……」


 「どうしたんだ?」


 天月さんは俯きながら髪をかきあげ、頬を紅く染めている。


 「き、今日の私……どうかな?」


 少しだけ顔を上げると目だけをこちらにやり、また逸らす彼女。


 「すごく可愛いよ、天月さん」


 その言葉を聞いて俺を見上げた天月さんの瞳は闇空に浮かぶ月のように輝いていて吸い込まれそうだ。

 彼女の肩に優しく手を乗せてジッと見つめると、目を静かに閉じた。

 そうして俺はそっと顔を近づけーー。


 「あ、来た!おーいケンヤ!」


 「天童君!こんばんは!」


 突如として俺の夢は終わりを迎える。

 コンビニへ行くまでの間で完璧に練り上げた俺の妄想青春。

 が、脆くも崩れ2人の声によって現実へ引き戻された。


 夢破れてなんとやら、だ。


 「よお、マユ、天月さん、元気してたか?」


 「元気してたか、じゃねえよ、なんで毎朝出てこねえんだよ!」


 両手を腰にやりジーッと睨むマユ。

 俺は引きこもりなんだ、朝は寝ている、と言うと胸張って言うことじゃねえだろ!とケツを蹴られた。


 いってぇ……本気で蹴っただろ、こいつ……。

 マユを見るとまだこちらをジーッと睨んでいる。


 「まあまあお二人とも!温かいお茶でも」


 クスクスしながら天月さんが指差す先には煌々と輝くコンビニ。


 「そうだね、ケンヤの奢りな」


 こちらをジーッと睨みつつ店内へ歩いていくマユ。

 なんか集られているだけのような……。


 「天童君、なんかこの前までと雰囲気違うね!」


 「あ、いや、別にふ、普通だよ……」


 そう言われると照れ臭い。

 雰囲気違うって、いい意味で、だよな?


 ふーん、と言いながら顔をふいに近づけてくる、天月さん。

 いい匂いがする、ていうか近い!

 こんな距離縮めてくる感じなの?!


 「……おい、ケンヤ。変な気起こすなよ」


 背後からかなり鋭い声が飛んできた。


 「もー、マユー!変な気って何ー?大丈夫だよー!」


 その声に反応した天月さんは体をサッと向けてマユの方へ行ってしまった。


 ああ、天月さん……肩を落としながら俺も2人に続いた。



 「いらっしゃいま……せー!」


 コンビニへ入店するといつも見かける店員……が、なんか今間のおかしい挨拶じゃなかったか?

 まあいいか。


 マユにおい、何飲むんだ?と聞くとさっきのは冗談、引きこもりに奢らせるわけないでしょ、とのことで各々好きな飲み物を買った。


 天月さんのは奢ろうとしたが、全力で拒否されたので諦めた。


 「ほうじ茶一点で150円です。ポイントカードありましたらお願いします」


 「あ、大丈夫です」


 そう言いながら小銭を置いたその時だった。


 「あ、あのー……チャンプまだ置けなくて……すみません」


 小声でそっと声をかけられた。


 なっ……!店員さんに認知されてしまっていた。

 これは由々しき事態だ。

 コンビニ店員に俺は裏でチャンプマンとか、そう言われているのだろうか……。


 まあ毎週決まった曜日決まった時間に来てチャンプだけ買っていたらそうなるか。

 ーー誰かに気が付いてもらえていたのか、そう思うと恥ずかしさよりも嬉しさ、とは少し違う。


 胸が、温かくなった。


 「あ、いえ……お構いなく……」


 レシートを受け取り彼女の顔をふと見る。

 いつもはただのやり取りで意識はしていなかった。

 

 「ありがとうございました」


 彼女の笑顔が、やけに眩しく感じた。



 深夜、コンビニ前のベンチに並んで座る美少女、ひきこもり、ギャル。

 間に挟まれた俺は世の男子的には非常に喜ばしい状況だ。

 そんな中で嬉しさもありつつ何か宙ぶらりんとしたような空気も感じ、そわそわもしている。


 「でさー、凛。集まったはいいけどなにすんの」


 確かに、マユの言葉に頷き天月さんを見やる。


 「何というのは……ないわね!」


 潔く言い切った、真っ直ぐな目をして。


 「ないのかよ!……まあ最終的にはケンヤに登校してもらうこと、が目標なんだよね」


 うんうん!と頷く天月さん。


 「じゃあさ、月曜日から学校に来れば?」


 マユはあっけらかんと言った。


 天月さんはえっ……?と発してから動かない。


 俺は……行けるなら、行きたい。


 でも。


 「そんないきなりは……無理、かな」


 マユと天月さんはどんな顔をしているだろうか、意識せずとも俺は下を向いてしまっていた。


 そうか、そうだよね、と静かに呟くマユの声。


 「あ!そうだ!それなら逆にこっちが行けばいいんだ!」


 いいアイディア思いついちゃった!とベンチから勢いよく立ち上がる天月さん。


 全く話しが見えず天月さんへ顔を向ける、と、へへんと笑顔を浮かべていた。


 「どこへ……?」


 当然の俺の問いに間髪入れずに


 「天童君の家!」


 俺は、ほへ?というような情けない声を出してしまった。

 マユは、おお!その手が!と感心しているが一体なんのために家へ?!


 「題して、漫画借りちゃう大作戦!です!」


 ふんすっ!と意気揚々な天月さん。


 「あー、なるほど、じゃあそういうことで」


 マユは悟ったようにあっさり納得している。


 「そ、そういうことでってどういうことで?!」


 「そういえばケンヤめっちゃ漫画持ってるよって前、凛に話したなーって。凛も漫画好きだし」


 「か、か、勝手にぺらぺらと……」


 なにをどこまでどう話したのか、今度詳しく聞く必要がありそうだ。


 「ケンヤ、こんなに心配してくれているんだ、な?」


 「でも……いいの?天月さんはその、男子高校生の部屋にいきなり1人でって……」


想像するとなんだか恥ずかしいような、それでいてドキドキするような。


 はあ?と、隣から気が抜けたような声。


 「私も行くに決まってんだろうが。てか何か想像しただろ、変態」


 「なっ!そういうことじゃ……!」


 「あはは!2人とも息ぴったり!それじゃ、決まりね!日時は……」


 まったく、この2人は。

 人の予定も聞かずに……まあ俺の予定はないんだが、勝手に行く日付と時間を相談し始めた。

 身勝手で困った奴らだ。

 だが、その身勝手さにどこか心地よさも覚えていた。


 誰かを自分の家に呼ぶのなんていつぶりだろうか。

 いつも穏やかな夜が、少しだけ賑やかになった。



「面白かった!」


「次話以降も読みたい!」


「今後どうなっていくの?」


と思ったら


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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!

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