真実
「お姉さま、お部屋の掃除をいたしますわ。」
「・・けっこうよ。」
「え?」
「いらないって言ってるのよ。」 「え、で、でも・・。」
「しつこいわね。いらないって言ってるでしょ。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「このくらい自分でやったほうが早いの。ていうか、私の部屋の物にさわらないでほしいのよ。」
邪魔だからさっさと出ていきなさい、と私は妹の方を見もせずに手をひらひらと振って出ていくように合図をした。
すると妹は一瞬、間を置いてから”わかりました”とポツリと言い、そのままスタスタと出て行った。
「・・・・・・・・・・・。」
妹の足音が廊下の向こうに消えたのを確認してから、私は自分の机の前まで来ると引き出しから”ある物”を取り出した。
それは”長い長い呪文"の書かれた1枚の紙きれであった。
・・・・・・・・・・・・・。
時々、思う。
シンデレラをいじめても私たちに何のメリットもないのではないか?と。
母親と上の姉のいきすぎた嫉妬心には少々、呆れているのは事実だった。
(やはり私がやるしかないのね。)
ため息をついた私はついに覚悟を決める事にした。
*******************************
***********
「いってらっしゃい。12時までには帰ってくるんだよ。」
「ええ。ありがとう。魔法使いさん!」
シンデレラが馬車に乗って去っていくのを見届けた後、身を潜めていた私は物陰から出てくる。
(これでいいんだ。)
正直に言うと、当初は母や姉のように美しいあの子に嫉妬していた。
・・でも、シンデレラと一緒に過ごすうちに彼女は心まで美しいのだ、と知ってからそれまでの自分の行いを恥じた。
母と姉は相変わらずだったが、せめて自分だけは彼女の味方でいようと思った。
あの二人の手前もあるし、堂々と愛想よくふるまうのは難しいけれど。
掃除もなるべく自分で行うようにした。
実際、"見られてはいけない物だらけ"なのが事実ってのもあるが。
私はふっと笑った。
それに、今夜の舞踏会でもしあの子が王子の目に止まるような事があれば、こちらとしても恩恵を受けられるのは間違いないから。
「あなたは優しいお姉さんね。でもいいいんですか?そんな事してしまって。」
「いいのよ。それにシンデレラの味方をしていた方が今後のメリットが大きいじゃない?」
魔法使いの問いかけに私は笑って答える。
「それにしてもよく私を召喚できましたね。お嬢さん。・・自分で言うのもなんですが、なかなかいないんですよ。私を呼べる人。高等魔法の使い手か、あるいは術者としてよほど秀でていないと。」
「私は母達のように社交的ではないし、友達もいないから部屋で本ばかり読んでいたの。中でもとりわけ、魔術系の古文書や文献に凝っていた時期があって。いろいろ試してみたりしたわ。・・でも苦労したのよ。呼び出すの。それまでは小さな怪物や悪魔とかばかり呼び出してしまって。今回はたまたまうまくいってラッキーだったわ。」
”真実”を知ったシンデレラを通して国王が彼女を”宮廷魔術師”として任命したのはまた別のお話。
完




