【業火の魔女編:500年前の聖女】
はじめまして、えす椎名と申します。
ずっと書きたかった物語を、思い切って投稿してみました。
この作品は、
「なりたくなかったのに魔女になってしまった子」をテーマにしています。
シリアスもありますが、最後はちゃんと光が射す物語にしたいと思っています。
不慣れな部分もあると思いますが、
少しでも楽しんでもらえたら、それだけで幸せです。
どうぞよろしくお願いします。
空が割れた。
大陸中に黒い炎が広がり、命の気配が飲み込まれていく。
「……終わればいい。この世界なんて全部……」
炎の中心でイリスが微笑む。泣きながら笑う、壊れた表情で。
その奥で、甘く冷たい声が囁く。
『そうよイリス。全部燃やしてしまいなさい。
500百年前のように弱さを見せないで。
あなたは愛されなかった。救われなかった。
なら与える必要なんてない。燃やし尽くせばいい』
炎が一段と強く脈打つ。
「……うん。もう、いいよね。だって……私を守ってくれた人なんて、一人も──」
世界が終わろうとしていた、そのとき。
「イリス!!」
灼熱の嵐の中へ、フィアが駆け込んだ。
「やめて!! そんな顔で終わらせないで!!」
「来ないで……! 死ぬよ……!」
「死んでもいい!! それでも私は、あなたを一人にしない!!」
叫んだ瞬間、フィアの胸に刻まれた紋章が強烈な光を放つ。
黒炎が押し返され、イリスが目を見開く。
「……その光……まさか……」
光の中に浮かび上がる、白銀の羽根と聖なる円環――
五百年前の“聖女”だけが持っていた紋章。
フィア自身にも理解が押し寄せた。
「思い出したの……私、500年前……
本当はあなたを救おうとしたのに、救いきれなかった」
フィアの声は震えていた。
「あなたが大陸全土を焼こうとしたとき、
私は“災厄を抑えること”しかできなかった。
正義を装って、あなたの痛みから目をそらした。
……あなたをひとりにしたのは、私なの……!」
光と黒炎が衝突し、空が激しく揺れる。
『惑わされないでイリス。
幸せなんて存在しない。
あなたは壊れてしまえばいいの。
そうすれば二度と苦しまなくて済むでしょう?』
「違う!!」
フィアは涙をこぼしながら叫ぶ。
「幸せがあるかどうかなんて、誰にも決められない!
呪いも、罪も、怒りも!!
そんなものより──イリスの“本当の願い”の方がずっと強い!!」
その言葉に、イリスの瞳が揺れた。
黒炎が暴れ、呪いが軋む。
イリスは胸を押さえながら崩れ落ちる。
「……私の、願い……?」
「誰も失いたくなかった。
ただ、大切な人たちに笑っていてほしかった。
傷つけるためじゃなく──守るために生きたかった。
それが……あなたの願いだったはず!」
イリスの目から一粒の涙が落ちる。
「う……あぁぁぁぁ……っ!!」
盛大な爆発音とともに黒炎が砕け、世界を覆っていた呪いが霧のように溶けていく。
フィアは傷だらけのイリスを抱きしめた。
「あなたはずっと頑張ってた。
だからもう一人で苦しまなくていい。
今度こそ、私はあなたを救う──
“前の生”ではできなかったことを、今度こそ果たす」
震える声で、イリスは囁いた。
「……助けて……フィア……私……生きたい……」
「うん、生きよう。これからは一緒に」
二人を包む光は温かく、大陸の災厄は完全に消滅した。
お読みいただきありがとうございました。
まだ描きたい場面がたくさんあるので、少しずつ形にしていこうと思っています。
もしまた読みに来てもらえたら、とても励みになります。




