表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/16

【業火の魔女編:回想ー母の声】

はじめまして、えす椎名と申します。

ずっと書きたかった物語を、思い切って投稿してみました。


この作品は、

「なりたくなかったのに魔女になってしまった子」をテーマにしています。

シリアスもありますが、最後はちゃんと光が射す物語にしたいと思っています。


不慣れな部分もあると思いますが、

少しでも楽しんでもらえたら、それだけで幸せです。

どうぞよろしくお願いします。

庭園から戻った夜。

フィアが眠ったあと、イリスは静かに自室の奥――封印された鏡の前に立った。


黒い水面のような鏡が揺れ、そこから“声”が滲み出す。


『――随分と幸せそうじゃないの。いいご身分だねぇ、イリス』


その声を聞いた瞬間、イリスの表情は凍りついた。


「……母さん」


鏡の中から現れたのは、赤黒い焔をまとい、冠を戴いた女性。

かつて大陸を恐怖で覆い尽くした前代・業火の魔女――イリスの母。


『あんた、忘れてないよね?

 大陸は私たちを裏切った。恐れ、縛り、排除しようとした。

 あんたはその恨みを……“果たすために生まれた”んだよ』


イリスは小さく首を振る。


「そんなこと……私は、ただ……守りたかっただけだ。みんなを……」


『守る? 笑わせないで。

 あんたは弱かった。泣きながら叫んで、救えもしないのに「大切な人を守りたい」なんて。

 結局あんたは、炎で覆うことしかできなかった。国を焼くしかできなかった。

 あれが“限界”だったんだよ』


イリスの胸が痛む。

500年前の惨劇――止められなかった炎、泣き叫ぶ声、後悔。


母の声はそこに楔を打ち込むように迫る。


『でもね、イリス。今度は違う。

 フィアが来た。あの子がいるからこそ、あんたは“完全な魔女”になれる。』


「フィアを……利用するなんてしない」


『利用? あら、今だって利用してるじゃない。

 あんた、あの子を“心の支え”にして安心してるんでしょ?

 あの子がいれば、あんたは不安も弱さも隠せる。

 ……ねぇイリス。認めなよ。あの子がいなければ、また壊れるんだって。』


イリスの肩が震える。

図星だった。


『だから――フィアを傍に置きなさい。

 愛して、甘えて、依存しなさい。

 そして“全てを焼き尽くす理由”にしなさい。』


「違う!私はもう誰も傷つけたくない!」


『違わないよ。

 本当はずっと思ってる――“あの時みたいに全部燃えてしまえば楽なのに”って』


沈黙。

否定できない。

心の奥底で、確かにそう思ってしまったことがある。


母はその沈黙を待っていたかのように囁く。


『あんたの弱さは、炎が埋めてくれる。

 だから全部、燃やしなさい。今度こそ大陸ごと。

 そうすれば苦しまなくて済む。愛した子を失うこともない』


鏡に伸びた母の手が、イリスの頬に触れそうになる。


『弱さを抱えたまま生きるくらいなら――全て燃やして終わらせなさい。

 それが“私たち”の幸せでしょ?』


ぱちり、と炎が灯り、鏡の中の母の瞳が妖しく光る。


『さぁイリス。

 次の炎は、迷いなく世界を焼き尽くすための炎にしなさい。』

お読みいただきありがとうございました。

まだ描きたい場面がたくさんあるので、少しずつ形にしていこうと思っています。

もしまた読みに来てもらえたら、とても励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ