【業火の魔女編:初めての食卓】
はじめまして、えす椎名と申します。
ずっと書きたかった物語を、思い切って投稿してみました。
この作品は、
「なりたくなかったのに魔女になってしまった子」をテーマにしています。
シリアスもありますが、最後はちゃんと光が射す物語にしたいと思っています。
不慣れな部分もあると思いますが、
少しでも楽しんでもらえたら、それだけで幸せです。
どうぞよろしくお願いします。
翌日の朝。
扉をノックする音で目が覚めた。
「フィア様、朝食のご用意ができております」
侍女に案内され、長い廊下を抜けて食堂へ入ると――
そこにいたのは、イリスだった。
昨日と同じ赤い髪、同じ瞳。
ただ今日は、炎の中にいた時よりずっと柔らかい雰囲気を纏っている。
「来てくれて嬉しい。座って」
促され、向かいの席に腰を下ろす。
テーブルには見たことのない料理がずらりと並んでいた。
「……全部、私のために?」
「うん。君の好みを調べて、できる限り再現したつもりだ」
調べた――その言葉に一瞬、背筋がざわついた。
だが、皿に盛られた料理は緻密で繊細で、綺麗で。
どう見ても「おもてなし」そのものだ。
「いただきます」
ひと口食べると、驚くほど味が好みだった。
故郷の味が、記憶の奥を刺激するように広がる。
「……美味しい……!」
思わずこぼれた感想に、イリスがふっと微笑む。
「良かった。君の笑顔が見たくて、何度も作り直したんだ」
そんなことを言われたら、胸が少し熱くなる。
食事の間、イリスは威圧も命令もせず、ただ話をしてくれた。
フィリス王国が滅ぶ前の風景、季節や文化、花の名前――
どれも穏やかで、美しい記憶だった。
「昔はね、この国にも四季があった。春には庭園が花で埋まってね……君はきっと、楽しんでくれただろうな」
「私が? その頃は生まれていませんよ?」
「……そうだね。ごめん、つい昔話に浸ってしまった」
どこか、寂しそうだった。
けれどその表情が一瞬で消えて、代わりに優しい眼差しが向けられる。
「少し歩かない? 君に見せたい場所がある」
お読みいただきありがとうございました。
まだ描きたい場面がたくさんあるので、少しずつ形にしていこうと思っています。
もしまた読みに来てもらえたら、とても励みになります。




