【業火の魔女編:炎の城の夜】
はじめまして、えす椎名と申します。
ずっと書きたかった物語を、思い切って投稿してみました。
この作品は、
「なりたくなかったのに魔女になってしまった子」をテーマにしています。
シリアスもありますが、最後はちゃんと光が射す物語にしたいと思っています。
不慣れな部分もあると思いますが、
少しでも楽しんでもらえたら、それだけで幸せです。
どうぞよろしくお願いします。
ふかふかのベッドに腰掛けながら、落ち着かない視線を部屋に走らせる。
(歓迎されている……でも、理由がわからない)
魔女イリスはこの城を“呪いの中心”とし、世界を焼き尽くした存在だ。
それなのに、なぜ私の到着を予期していたように部屋を用意し、炎を道案内に寄越し、侍女まで待機させていたのか。
「……まさか、来ることを知っていた?」
胸の奥で嫌な予感が疼いたとき――
コン、コン。
扉を叩く音。
自動的に扉が開くわけでもなく、丁寧に二回だけ叩く、礼儀正しい訪問。
「入ってもいいかな、フィア」
声を聞いた瞬間、心臓が跳ねた。
イリス。
それだけで、この場の空気が熱を帯びる。
「どうして……私の名前を?」
驚きよりも恐怖が勝った。
まだ名乗ってすらいないのに。
イリスはゆっくりと歩み寄り、目の前に立つ。
紅い瞳は、燃えているのに、どこか悲しそうで。
「ずっと……待っていたんだ。君を」
「……待って、いた?」
「500年前も。それより前からも、ずっと」
意味が分からない。
500年前、私は誕生してすらもなかった。
そんな私のことをイリスが知っているはずがない。
イリスはそっと手を伸ばし、私の頬に触れそうになって止めた。
「やっと会えた。絶対に君を失わない」
その一言で、城の炎が一斉に揺らめいた。
まるで感情に呼応するように。
胸の奥が痛む。
(この人……私を知っている?
それとも……知ってはいけない何かを?)
「フィア。君は知らなくていい。ただ――」
イリスの声は震えていた。
「“今度こそ皆を…幸せにしてみせる”」
そう言うと、イリスはくるりと身を翻して部屋をあとにした。
炎が閉じた扉の周りでちりちりと弾け、
部屋の中に残されたのは、息苦しいほどの沈黙と、意味不明なほど温かい胸の鼓動。
(どういうこと……?)
“会ったことがないはずの相手に、存在を喜ばれる”
その不気味な違和感が、眠りを拒むように意識の中に居座り続けた。
お読みいただきありがとうございました。
まだ描きたい場面がたくさんあるので、少しずつ形にしていこうと思っています。
もしまた読みに来てもらえたら、とても励みになります。




