【悲しみの魔女編:フィア】
はじめまして、えす椎名と申します。
ずっと書きたかった物語を、思い切って投稿してみました。
この作品は、
「なりたくなかったのに魔女になってしまった子」をテーマにしています。
シリアスもありますが、最後はちゃんと光が射す物語にしたいと思っています。
不慣れな部分もあると思いますが、
少しでも楽しんでもらえたら、それだけで幸せです。
どうぞよろしくお願いします。
イリス様から「来週、フィアが来る」と告げられたとき、私は返事をしながらも胸がざわついていた。
聖堂から来る“特別な人”。まっすぐで優秀で、きっと私とは違う。
また自分の居場所が揺れる気がして、落ち着かないまま一週間が過ぎた。
フィア様が城に着いてからの数日は驚きの連続だった。
誰にでも優しくて、侍女たちともすぐに打ち解ける。
それよりも何よりも、イリス様が少しだけ明るくなった。
言葉の端や表情の影が、ほんのわずかだけ柔らかくなっていた。
「……イリス様が、こんなふうに」
いい意味で裏切られて、胸の奥がじんわり温かくなる。
不安の重さが少し軽くなったころだった。
その一週間後、夕暮れ時にイリス様の炎が暴れた。
廊下が一瞬で赤く染まり、熱で空気が震える。
近づけば焼かれるような温度で、誰も動けなかった。
私は声を出そうとして、震えて何もできなかった。
そこで、光が生まれた。
フィア様が叫んだ名前と同時に、大地を照らすような白い光が一気に広がる。
太陽でも炎でもない、世界を塗り替えるみたいな光だった。
その光はイリス様の炎を押し返すのではなく、包み込んで、飲み込んでいった。
暴れていた赤が、白い光の中に吸い込まれ、音が静かに消えていく。
炎が“消えた”んじゃない。
フィア様の“大聖女の光”に溶けていった。
光の中心で、フィア様がイリス様にそっと手を伸ばした。
「大丈夫。もう、こわくないよ」
その声は光より優しくて、それを聞いた瞬間、胸が熱くなった。
イリス様を救んだのは、間違いなくフィア様だった。
その夜、私は眠れなかった。
不安はまだ消えてはいない。私は弱いし、失敗も多い。
でも、あの光を見てしまったら決めずにはいられなかった。
――フィア様の侍女として、精一杯がんばろう。
イリス様を救ってくれた人のそばで働きたい。
その力になりたい。
それが私にできる、せめてもの恩返しだと思ったから。
お読みいただきありがとうございました。
まだ描きたい場面がたくさんあるので、少しずつ形にしていこうと思っています。
もしまた読みに来てもらえたら、とても励みになります。




