【悲しみの魔女編:侍女としての日々】
はじめまして、えす椎名と申します。
ずっと書きたかった物語を、思い切って投稿してみました。
この作品は、
「なりたくなかったのに魔女になってしまった子」をテーマにしています。
シリアスもありますが、最後はちゃんと光が射す物語にしたいと思っています。
不慣れな部分もあると思いますが、
少しでも楽しんでもらえたら、それだけで幸せです。
どうぞよろしくお願いします。
イリスに拾われたあと、私は彼女の屋敷で侍女として働くことになった。
そこでは何人もの魔女が侍女として働いていて、皆がそれぞれまったく違う雰囲気を持っていた。
朝、仕事を教えてくれたのは無表情の女性だった。
「ここはあなたの担当区域。静かにやればいい」
必要なことだけを淡々と告げるその人は、何を考えているのか全くわからない。
でも、その静けさが少し安心した。
一方で、廊下を歩いていると、別の侍女がぱっと顔を出した。
「あ、新入りちゃん! ねぇねぇ、昨日のイリス様さ〜」
と、まくしたてるように話しかけてきて、仕事中でも気にせず笑っている。
「仕事、詰まったら呼んでね? あたし面倒見いいんだから!」
と勝手に胸を張るから、思わず苦笑いがこぼれた。
仕事自体は難しく、失敗も多かった。
緊張すると手元から弱い火がふっと漏れてしまい、布を焦がしたり、ほこりを燃やしかけたりする。
「あっ、ご、ごめんなさい…!」
慌てて謝る私に、近くにいた侍女が軽く手を振った。
「気にするほどじゃないわ。ほら、水呼ぶから止めるわよ」
別の侍女は私の肩をぽんと叩きながら言う。
「ここにいるの、みんな魔女でしょ? 火くらいで誰も騒がないよ〜」
そう言って笑われると、胸の重さが少し軽くなった。
そして、イリスは相変わらず変わらない調子だった。
私が失敗した時も、仕事が遅れた時も、淡々と同じ声で言う。
「問題ない。続きを」
叱るでもなく、慰めるでもなく、ただ事実だけを告げるその声に、なぜか救われる。
最初は怖かった屋敷も、気づけば穏やかであたたかい場所に変わっていた。
そして──
私は、久しぶりに“明日が来るのが嫌じゃない”と思えた。
お読みいただきありがとうございました。
まだ描きたい場面がたくさんあるので、少しずつ形にしていこうと思っています。
もしまた読みに来てもらえたら、とても励みになります。




