【悲しみの魔女編:イリスとの出会い】
はじめまして、えす椎名と申します。
ずっと書きたかった物語を、思い切って投稿してみました。
この作品は、
「なりたくなかったのに魔女になってしまった子」をテーマにしています。
シリアスもありますが、最後はちゃんと光が射す物語にしたいと思っています。
不慣れな部分もあると思いますが、
少しでも楽しんでもらえたら、それだけで幸せです。
どうぞよろしくお願いします。
ある日、かすかな気配で目が覚めた。
「……?」
誰も来ないはずのこの小屋に、誰かが近づいている。
息をひそめる間もなく──
扉が、音もなく“開いていた”。
そこに立っていたのは、燃えるような“真っ赤な髪”の女性だった。
知らない人。
でも、その存在だけで空気が変わるようだった。
「……」
彼女は何も言わないまま、静かにこちらを見ていた。
感情の読めない赤い瞳。
ただ、観察するように。
耐えられなくなって、私の方が先に口を開いた。
「……だ、誰……?」
赤髪の女性は、ゆっくりと部屋を見渡した。
声は低く、抑揚がない。
「……火の匂いがする」
まるで独り言みたいだった。
「でも、人の生活の匂いが……薄い」
胸がぎゅっと縮む。
彼女の言葉は、私の状況を一瞬で暴いていた。
「……ここに、ずっといるの?」
「……外に出たって、誰も……私を……」
言いかけると、女性は静かに目を細めた。
「……魔女、ね」
逃げるように視線をそらしたけれど、彼女は何も言わなかった。
責めもしない。否定もしない。
ただ、事実を受け止めているようだった。
やがて、彼女は私の前にしゃがんだ。
その動作も静かで、感情の色はない。
「死ぬ気なら止めない。
生きたいなら──出るといい」
シンプルで、冷たくも温かくもない言葉。
それでも、胸に突き刺さった。
「……生きたい、けど……」
泣きそうになった瞬間、彼女は短く名乗った。
「……イリス」
そして、手を差し出す。
「道はある。行くなら……ついてきて」
決して強引じゃない。
情けもかけない。
ただ、選択肢だけを提示してくれる。
その手に触れた時、ようやく呼吸が出来た気がした。
「……行く……」
小さく答えると、イリスは一度だけ頷いた。
こうして私は、イリスに拾われた。
お読みいただきありがとうございました。
まだ描きたい場面がたくさんあるので、少しずつ形にしていこうと思っています。
もしまた読みに来てもらえたら、とても励みになります。




