【悲しみの魔女編:魔女だから】
はじめまして、えす椎名と申します。
ずっと書きたかった物語を、思い切って投稿してみました。
この作品は、
「なりたくなかったのに魔女になってしまった子」をテーマにしています。
シリアスもありますが、最後はちゃんと光が射す物語にしたいと思っています。
不慣れな部分もあると思いますが、
少しでも楽しんでもらえたら、それだけで幸せです。
どうぞよろしくお願いします
……冷たい石の感触が、頬に伝わる。
薄く目を開けると、見慣れない路地裏の天井――建物の裏側が見えた。
体を起こすと、服の袖が焦げて破れているのが目に入る。皮膚には赤く痛む火傷。
昨日の記憶が、断片的に胸を刺した。
――気づいたら、ふたりが倒れていた。
それ以上は思い出したくなくて、頭を振る。 家を飛び出したのも、ほとんど無意識だった。
ここがどこなのかもわからない。
ただ、戻れないということだけは確かだった。
「……生きないと」
泣きたくなるのをこらえ、私は路地裏を出た。
市場は朝の活気で満ちていた。
少しでも働ければ、ご飯が食べられるかもしれない。
勇気を振り絞って、店先の男に声をかける。
「あ、あの……手伝えること、ありますか……?」
男の視線が私の焦げた袖に落ちた瞬間、その表情が強張った。
「……火の魔女か」
その一言に、空気が変わった。
「ち、違――」
「違わねぇだろ! うちは火事になったら終わりなんだよ! 魔女なんて雇えるか!」
怒号が飛ぶ。
周囲の人々が「魔女だって……」とひそひそ声を立てる。
別の店へ行っても、結果は同じだった。
「うちは無理だ」「出ていけ」「近づくな」
「魔女なんて厄災の元だ」
ついには兵士にまで追い払われ、私は走って逃げた。
太陽が傾き始めた頃、足がもう動かなくなって、私はまた同じ路地裏に戻ってきた。
壁にもたれ座り込むと、体の芯から疲れが押し寄せる。
「……どうして……」
私が、何をしたというのだろう。
手のひらを見つめても、そこにはただ震えしかない。
火を出せる体が、そんなにいけないのだろうか。
働くことすら許されない世界。
行く場所なんて、どこにもない。
「……ねぇ……わたし、どうすれば……」
声は小さく、誰にも届かない。
路地裏は静かで、風が少し吹いただけ。
私は膝を抱え、そのまま小さく丸くなった。
誰も来ない路地裏で、
ただひとり――小さく、震えていた。
お読みいただきありがとうございました。
まだ描きたい場面がたくさんあるので、少しずつ形にしていこうと思っています。
もしまた読みに来てもらえたら、とても励みになります。




