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天才魔法オタクが追放されて辺境領主になったら、こうなりました  作者: 優木凛々
第6章 村人輸送と転移陣のその先

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09.これから、と……

 


 しばらくして花火が止んだ。

 尖塔は再び夜の静寂に包まれる。


 静けさの中で、テオドールが月を見上げながら口を開いた。



「ところで、アリスさん。結界の修復をしてから、そろそろ3か月経つの、気が付いてますか」



 アリスは目をぱちくりさせた。



「もうそんなに経つっけ」

「はい」



 テオドールがうなずいた。



「結界の稼働をまず3か月間監視して、その結果を踏まえて今後の方針を決める――そんな話をしていたのを覚えていますか?」

「うん、覚えてる」



 アリスがこくりとうなずくと、テオドールが尋ねた。



「アリスさんは、今後どうしようと思っていますか?」

「どう考えているか……」



 アリスは手すりに寄りかかりながら思案した。


 当初の計画では、結界の安全が確認できたら、テオドールと森を出ようという話になっていた。

 結界はとても安定しているので、計画通りならば、3か月経った時点で森を出ることになるのだが……



(ちょっと難しいかな……)



 ここに来て数か月、木を乾かしたり、野菜箱を動かしたり、アリスしかできないことが増えた。

 分析しきれてない魔法陣も残っているし、この地に眠る古代都市にも物凄く興味がある。

 ここにいる人たちの役に立ちたいという気持ちも強くなった。


 アリスは横にいるテオドールを見上げた。



「あのさ、もう少しこの古城にいてもいいかな。わたし、まだやりたいことが残ってるんだ」



 テオドールが微笑みながらうなずいた。



「わかりました。もう少しここにいましょう。俺もこの場所で学べることがたくさんありますし」

「ありがとう、テオドール」



 アリスが感謝の目を向けると、テオドールが口角を上げた。



「それに、アリスさんは、放っておいたら、とんでもないことをしそうなので」

「……そんなことないと思うけどな……」



 アリスが不服そうな顔をする。

 それを見て、テオドールがおかしそうに「アリスさん、口、とんがってますよ」と笑った、その瞬間。



 びゅうっ



 尖塔を冷たい風が吹き抜けた。



(寒……)



 アリスが思わず身をすくめる。

 テオドールが慌てたように言った。



「冷えてきましたね、戻りましょう」

「そうだね」



 夜の階段は危ないということで、テオドールがアリスを抱き上げる。


 抱えられながら、アリスは周囲を見回した。

 さっきまで光と音が溢れていたとは思えないほど静まり返っている。

 ―-と、そのとき。



「…………!」



 突然後ろから視線を感じ、アリスはビクリと肩を震わせた。

 背中がゾワッとして、思わず振り返る。



「どうしました?」



 テオドールが不思議そうな顔をする。



「……誰かに見られた気がして」



 アリスは暗い湖の対岸、さっきまで花火が上がっていた王宮遺跡の方を凝視した。

  闇に沈んだ廃墟は、まるで巨大な獣がうずくまっているかのように静まり返っている。



「……やめてください。俺、そういうの苦手なんです。……帰りましょう、早く」



 テオドールが少し早歩きで階段を下り始める。

 彼の腕の中で揺られながら、アリスはもう一度だけ後ろを振り返った。


 月明りの森は静まり返っている。



(……気のせいかな)



 内心首をかしげながらも、おとなしくテオドールの胸に寄りかかる。





 ――2人が塔から消える様子を、王宮遺跡の闇の中から4つの目がジッと見ていた。





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