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天才魔法オタクが追放されて辺境領主になったら、こうなりました  作者: 優木凛々
第6章 村人輸送と転移陣のその先

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08.アリス、転移先を探す(2/2)

 

 そして、光がふっと消え。

 光りを失った魔法陣の上からは、先ほど置いた荷物が消えていた。



「やった! 物だけの転移成功!」


 

 アリスはガッツポーズを決めた。

 笑顔でテオドールを振り返る。



「テオドール、行くよ! 急ごう!」

「え、どこに行くんですか?」

「尖塔のてっぺん! 15分後に、あの荷物から魔力が高く打ち上がるようになってる!」



 アリスは思ったのだ。

 厳密な場所が分からなくても、大体の場所が分かれば良いのではないか、と。

 だったら、向こう側の転移陣から魔力を打ち上げて、塔の上からその場所を確認すればいい。



(我ながらいい考え!)



 ドヤ顔のアリスの言葉に、テオドールがピシリと固まった。

 しばらく黙った後、ボソッと言う。



「……その魔法陣のある場所が、ドラゴンの巣の近くだったらどうするんですか?」

「……っ!」



 アリスは大きく目を見開いた。

 その可能性は考えていなかった。



(ど、どうしよう!)



 焦って今から止めに行くことを考えるが、もう魔力が残っていないため転移はできない。

 一瞬だけ頭を抱えたものの、彼女はすんと真顔になった。



(…………ま、仕方ないか)



 どうにもできないのであれば、もう開き直るしかない。

 彼女は悟りを開いたような穏やかな顔でテオドールを見上げた。



「もう送っちゃったし、諦めよう」

「……」

「結界あるから大丈夫だよ。それに、ドラゴンだって誰がやったかなんてわからないだろうし」

「……」



 テオドールが苦笑いする。


 アリスはランプを拾うとテオドールを見上げた。



「とりあえず塔に行こうか。せっかく送った訳だし」

「……そうですね」



 テオドールがため息をつきながらうなずく。


 2人は地下を出ると、速足で裏庭へ回った。


 裏庭の奥には大きな尖塔がそびえている。


 2人は塔の中に入った。

 アリスが壁際の螺旋階段をへっぴり腰で登ろうとすると、テオドールが呼び止めた。



「時間がなさそうですので、運んでもいいですか」



 アリスがうなずくと、テオドールが彼女を抱えた。

 足元に気を付けながら尖塔の階段を上り始める。


 アリスは塔の窓から外を見た。

 半月が昇り始めているのが見える。



(もうすっかり夜だ)



 そして、塔の最上階に到着すると、テオドールがアリスをそっと降ろした。

 眼下には、月明りに照らされた広大な森が見える。


 アリスは吹きつけてくる風に目を細めながら、キョロキョロと周囲を見回した。



「どこから打ち上がるかな」

「俺はあっちを見ておきます」

「じゃあ、わたしはこっち」



 そしてアリスが手すりにつかまり、遠くの山々に目を凝らした、その瞬間――



 ――ヒューンッ!



 空気を切り裂くような音が聞こえてきた。

 閃光が一瞬だけ森の輪郭を白く照らし、



 ドーン!



 低い響きとともに、弾けた光が、黒い空に大きな光の花を咲かせる。


 テオドールが呆気にとられたような顔をした。



「アリスさん、荷物の転移先から打ち上がるのって……まさか花火ですか?」

「うん、ただの光の柱より、こっちの方が派手で見つけやすいかなあと思って」

「…………」



 そんな会話をする間にも花火は次々と打ち上がる。

 赤、青、金の光が夜空に弾け、重なるように大輪の花が咲いていく。


 アリスは首をかしげた。



(なんか、近くない?)



 もっと遠くに小さく見えるかと思いきや、やけに大きく見える。


 どこから上がっているのだろうと、アリスが周囲を見回していると、

 横に立っていたテオドールが森の奥を指差した。



「あそこから打ち上がっています」



 目を凝らすと、そこには光る湖面が見えた。

 湖の向こうから光の筋が上がっているのが見える。



「……えっ!?」



 アリスは思わず目を見開いた。

 あの場所は間違いなく、結界探索の時、湖の対岸の霧越しに見えた遺跡群だ。



(あそこって、元王宮の遺跡がある場所だよね?)



 アリスは思わず苦笑した。

 転移というくらいだから、もっと遠い場所かと思っていた。



「……まさかの近さだったね……」

「そうですね……ここから半日くらいの距離でしょうか。魔獣の強さと数が問題になりそうですが」



 そんな会話をしている間も、花火は夜空を彩り続ける。


 下の方から人の声が聞こえてきた。

 見ると城の中から人々が出てきて、楽しそうに指を差したり声を上げている。



(どうなることかと思ったけど、みんな喜んでくれてるみたい)



 アリスが人々の様子をぼんやり見ていると、

 テオドールが花火をながめながら口を開いた。



「……なんだか建国祭を思い出しますね」

「花火が上がるんだっけ」

「はい、ここまで綺麗ではありませんが」



 テオドールがここで言葉をいったん切ると、穏やかに続けた。



「実は……今年の建国祭は、アリスさんを誘って一緒に行こうと思っていたんです」

「そうなの?」

「はい、花火を一緒に見たいと思って。――だから」



 テオドールが微笑んだ。



「場所はかなり違いますけど、こうして一緒に見られて良かったです」

「……そっか」



 アリスは夜空を見上げた。

 大きな花火が、次々と夜に咲いている。



 その後、しばらくして花火が止んだ。

 尖塔は再び夜の静寂に包まれる。


 静けさの中で、テオドールが月を見上げながら口を開いた。



「そういえば、結界を修復してから、そろそろ3か月経つのですが、気が付いていますか?」



 アリスは目をぱちくりさせた。



「もうそんなに経つっけ」






王宮遺跡は、第4章の結界探索で発見した場所です

詳しくはこちら⇒https://ncode.syosetu.com/n1001lf/63


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