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天才魔法オタクが追放されて辺境領主になったら、こうなりました  作者: 優木凛々
第6章 村人輸送と転移陣のその先

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01.アリス、カスレ村移住者輸送作戦を開始する

 

 アリスが、ビクトリアから

 “カスレ村からの移住者輸送方法の考案”を依頼された、2日後。

 夏らしい青空が広がるお昼過ぎ。


 古城内の会議室に、5人の人物が集まっていた。


 この会議の主催者である、魔法研究者のアリス。


 経験豊かな鍛冶師のオヤジ、ガンツ。

 木工職人であり建築士でもある、眼鏡の中年男性フィンロイ。

 地図や地形のスペシャリスト、リット。

 そして、身体強化が使える騎士テオドール。


 ガンツ、フィンロイ、リットの3人が、

 どこかワクワクした表情を浮かべている。


 そんな中、アリスが珍しく真面目な顔で口を開いた。



「それでは、これから“移住者輸送作戦”を始めます」



 *



 2日前に、ビクトリアから


「それで……できれば安全性の高い方法がいいと思っているの。ほら、小さい子が多いから、迫力がない方がいいわね」

「できれば秋まで、目立たない方法で」


 といった依頼を受け、アリスは色々と考えた。

 ビクトリアが条件として出した


 ・安全性が高い

 ・目立たない

 ・秋まで終わらせる


 という3つの条件に合う輸送方法と言えば……



(やっぱり転移魔法だよね!)



 ワクワクしながら実現に向けて考えてみる。

 しかし。



(うーん、ちょっと時間かかるかも……)



 まだ分析しきれていないし、

 作れたとしても、人を転移させて問題がないか、検証もしなければならない。

 秋までに間に合わない可能性もある。



(……となると、やっぱり例の野菜箱か)



 例の野菜箱とは、浮遊の魔法で野菜箱を浮かせて移動する方法だ。

 カスレ村からロッテを無事に(?)運んできた実績がある。



(実績がある分、アレを使うのが一番確実で早いよね)



 渋々転移魔法を諦めて、野菜箱を使うことにする。


 しかし、現在の“飛ぶ野菜箱”は、

 浮かぶミスリル鞄に野菜箱を縛りつけただけのものだ。

 積載量が少ないので、移住には使えない。



(つまり、アレを移住向けに改造しないとダメってことだよね)



 ――という訳で、“例の野菜箱”を改造するべく、古城内の有識者を集めた、という次第だ。



 *





 アリスの会議開始を宣言した後、

 フィンロイが、興奮が隠し切れないように、眼鏡がくいっと上げた。



「いやいや、話を聞いた時は、胸が高鳴りましたよ。空飛ぶ乗り物なんて、生きているうちに見れるとは夢にも思いませんでしたからね!」

「おうよ! 人間ってのは長く生きてりゃいいことがあるもんだな!」

「ホントです! 世紀の大発明に自分が関われるなんて!」



 ガンツとリットが笑顔で同意する。

 どうやら、みんなものすごくやる気らしい。



(こういう時って、いい物できるんだよね!)



 アリスはワクワクしながらコホンと咳払いをすると、計画の説明を始めた。



「カスレ村からの移住者は、若者や家族連れを中心に、15人から30人くらいだそうです」



 ガンツが、なるほどと腕を組んだ。



「てことは、少なくとも4,5人は運べるようにする必要があるんだな」

「はい」



 アリスはうなずいた。



「それと、ビクトリアさんからは『安全性を重視して欲しい』と言われています」

「確かに、乗り物は安全じゃないとダメよね」



 リットが、納得したようにうなずく。



 ――その後、まずは実物を見た方が良いということで、5人は裏庭の倉庫へ向かった。


 アリスが雑然とした倉庫の中に入ると、隅に野菜箱が置いてあるのが目に入った。

 箱の下には大きめの革鞄がくくりつけられている。



(こうやって改めて見ると、ちょっと不思議な外見だね)



 そう思いながら、アリスが「これです」と指を差すと、

 リットが首をかしげた。



「これ……本当に浮くんですか?」



(確かに、見ただけじゃ飛ぶなんて信じられないか)



「じゃあ、実際乗って飛んでみましょう」



 アリスの言葉に、3人がバッと振り向いた。

 目を輝かせて口を開く。



「それはいい! 賛成だ!」

「さっそく試そう!」



 どうやら3人とも乗りたくてウズウズしていたらしい。


 テオドールが、身体強化を使って野菜箱をひょいと持ち上げると、

 5人は城壁の外にある空き地へ向かった。


 テオドールが、誰もいない空き地の真ん中にズシンと降ろす。



「じゃあ、最初に誰が乗りますか?」



 アリスの言葉に、3人が熱心に話し合い始めた。

 じゃんけんにより、まずはフィンロイが乗ることになる。



「いやはや、楽しみだね」



 フィンロイがワクワクした様子で野菜箱の中央に座った。

 続いて、前方にアリス、後方にテオドールが立ち乗りをする。


 この光景を見て、リットが微妙な顔をした。



「……こうして見ると、不思議な光景ですね」

「まあ、冷静に考えたら、大の大人が3人箱に乗ってる訳だからな」



 ガンツが、ガハハとおかしそうに笑う。



「じゃあ、いきますよ」



 アリスは、床のミスリルに手を置いて魔力を流した。

 箱の底のカバンがぼうっと光り、野菜箱がふわりと浮かび上がる。



「……っ!」



 フィンロイ、ガンツ、リットが大きく目を見張った。


 野菜箱は1メートルくらいのところまで浮くと、ふよふよと停止する。



「す、すごい!」



 リットが思わずと言った風に叫んだ。

 フィンロイは感動で目を潤ませている。


 ガンツが驚愕しながらも、箱の下を覗き込んだ。



「飛んでいる……とは、少し違いそうだな」

「魔力でできた柔らかい地面がある感じですね」

「これって、これ以上高くは飛ばないんですか?」



 ワクワクしたようなリットに問われ、アリスは考え込んだ。



「できなくはないけど、バランスが難しいんだよね。このくらいの高さがちょうどいい感じ」



 その後、実際に進んでみようという話になり、

 アリスがポケットから紙を取り出した。

 静かにつぶやく。



起動(カンターレ)そよ風:魔法陣(アウラ)



 紙が輝きを帯び、背後から風が吹いてきた。

 同時に、まるで氷の上を滑るように、野菜箱がすうっと前に進み始める。



「おお!!」



 フィンロイが喜びの声を上げた。

 リットとガンツが目を輝かせながら追い掛けてくる。


 アリスは密かにドヤ顔をした。

 ここまで素直に驚かれると、なんだかすごいことをしている気持ちになる。






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