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天才魔法オタクが追放されて辺境領主になったら、こうなりました  作者: 優木凛々
第5章 カスレ村へ

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【一方その頃】文官カミーユ2


こちらの続きになります

→ https://ncode.syosetu.com/n1001lf/66


 アリスが野菜箱で魔の森を爆走していた、ちょうどその頃。


 王宮の片隅にある執務室にて。

 傲慢そうな眼鏡の文官が、机に向かっていた。


 アリスを散々バカにした挙句に

 研究所から3日で無理やり追い出した文官、カミーユだ。


 彼はイライラとした様子で、爪を噛んだ。

 足を揺すりながら書類にペンを走らせる。


 しばらくして――、 



 コンコンコン



 ドアをノックする音が聞こえてきた。



「……入れ」



 イラつきを隠そうともせず鋭く声を掛けると、怯えた様子の少年文官が入ってきた。

 おずおずと頭を下げる。



「……カミーユ様、文官統括長様がお呼びです」



 カミーユは、ぎゅっと眉間にしわを寄せると、威圧的に腕組みをした。

 縮こまる少年文官を見据える。



「……統括長様が何の用だ」

「すみません、用があるから来るように伝えよ、と言われまして……」



 カミーユは、聞こえよがしに舌打ちすると立ち上がった。

 少年の横を通る際に、聞こえるように「気が利かないな」と囁くと、

 ふん、と鼻を鳴らして部屋を出る。


 肩をそびやかして廊下を歩きながら、カミーユは思案に暮れた。



(統括長様が一体何の用だ……?)



 そろそろ昇進の検討が始まる時期なのを思い出し、

 もしかすると、その件かもしれない、と思う。



(その可能性が高そうだな)



 彼は足早に廊下を歩いた。

 総括長の執務室に到着すると、控えめにノックをする。



「……入れ」



 中に入ると、厳めしい顔の統括長が窓を背に執務机の前に座っていた。

 カミーユは笑顔で一礼をすると、愛想良く口を開いた。



「お呼びと伺いましたが。いかがなさいましたか」



 統括長は、笑顔のカミーユをチラリと見た。

 無表情に机の上をコツコツと叩く。



「……これらについてだ」



 カミーユは首をかしげながら机に近寄った。

「失礼します」と言って机の上に目をやる。

 そして、



「……っ!」



 彼はさっと顔色を変えた。

 そこには、クレームと思われる書類や手紙が幾重にも広げられていた。



(な、なんだこれは!?)



 動揺するカミーユに、統括長が冷たい声で言った。



「……これらは全て君へのクレームだ。君はアリス・ブリックの仕事を引き継ぐと宣言したにも関わらず、ほとんど出来ていないようだな」



 背中に嫌な汗が流れるのを感じながら、カミーユは何とかごまかそうと必死に微笑んだ。



「いいえ、そのようなことはございません。彼女の仕事は全て、王立魔法研究所にきちんと引き継いでおります」



 統括長がすっと目を細めた。



「その魔法研究所からもクレームが来ている。『引き継ぎもなしに無理な仕事を大量に押し付けられて困っている』とな」

「そ、それは……」



 目を泳がせるカミーユに、総括長が低い声を出した。



「そして、アリス・ブリックを引き継ぎなしに、わずか3日で追い出したのはお前だということも、すでにわかっている」

「……っ!」



 カミーユは、大きく目を見開いた。



(な、なぜそれを……!)



 このことを知っているのは、ほんの数名だ。

 その中の誰かが漏らしたということになる。



(くそっ! 誰だ!)



 顔を歪めるカミーユを、総括長が冷たい目で見た。



「なぜ、このような真似をした」



(ま、まずい! 何とか切り抜けなければ……!)



 カミーユは必死に考えた。

 3日で追い出したのは、所長であるジャネットの指示だ。



(し、仕方あるまい! もう隠し通せない!)



 彼は必死に言葉を絞り出した。



「わ、私がアリス・ブリックを3日で追い出したのは、ジャネット・ファーガソン所長のご意向に従ったためです!」

「……ほう?」

「アリス研究員は情報を持ち出す恐れがあるため、早急に排除せよとのご指示でした」



 必死に叫びながら、カミーユは安堵した。

 ジャネットの名前を出せば、これ以上は追及されないはずだ。


 しかし、統括長は冷酷な目でカミーユを見下ろした。

 軽く口角を上げる。



「おかしいな。そのジャネット・ファーガソン所長からも、お前に対するクレームが入っている」

「…………は?」



 ポカンとするカミーユに、総括長が淡々と言った。



「所長はこう言っている。『カミーユ文官が、功を焦って勝手な判断を下した。そのせいで必要な引き継ぎが行えず、現場が混乱している』……とな」



 カミーユの顔から、一気に血の気が引いた。



「そ、そんなはずはありません! 私は所長に言われた通りに!」

「では、証拠を出してもらおうか」

「証拠……?」

「命令であれば、文書の類があるのだろう?」



 カミーユは、目を泳がせた。

 そんなもの、あるはずがない。


 総括長は、カミーユを冷えた目で見た。



「お前が所長の名前を勝手に使い、独断で暴走した。……それが我々の出した結論だ。違うか?」

「ち、違います!」

「では、反論の証拠を出してもらおう」



 カミーユは、呆然と立ち尽くした。

 ジャネットに全ての罪を押し付けられたのだと、ようやく理解する。


 崩れ落ちそうなカミーユに、統括長が背を向けた。



「……沙汰は追って連絡する。それまで自宅で謹慎していろ」

「お、お待ちください! わ、私は……!」

「……私は出ていけと言っている」



 冷たく遮られ、カミーユは言葉を失った。

 よろよろと執務室を出る。


 廊下には、カミーユの叫び声を聞きつけた人々が集まっていた。

 ボロボロになった彼を見て、ヒソヒソと囁き合う。


 その中に、自分がいつも馬鹿にしていた少年文官たちがいるのを見て、

 カミーユは屈辱のあまり奥歯をギリギリとかみしめた。


 少年たちの冷たい目で見られ、逃げるようにその場を離れる。


 そして、彼はそのまま建物を出ると、フラフラとした足取りで王宮を去っていった。





ここで第5章は終わりです。

お読み頂きありがとうございました!


もしこのお話を少しでも楽しんでいただけましたら、

ぜひ本編の下にある「☆☆☆☆☆」の評価ボタンを押していただけると嬉しいです!


作者が飛び上がって喜びます!


「イマイチだった」という方も、☆ひとつだけでも付けてくださると、今後の参考になりますので、ぜひご協力いただければと思います。


次は、挿話を1つ挟んでから第6章に入ります。



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