表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才魔法オタクが追放されて辺境領主になったら、こうなりました ※第2部準備中  作者: 優木凛々
第1章 魔法研究者アリス、辺境に追いやられる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/56

05.ヴァルモア領への旅路


本日1話目です。


やや説明&伏線回です。



 

 ヴァルモア領への旅は順調に進んだ。

 天気にも恵まれ、青い空や若葉色の木々が街道に彩を添えている。


 そんな中――、



「いたたた……」



 アリスは馬車の中で顔を顰めながら首元を押さえていた。

 手元には魔法書が広げてある。

 熱中し過ぎて動かなかったところ、体が固まってしまったらしい。


 痛そうに首をさすっていると、テオドールが馬で近づいてきた。

 状況を察し、苦笑いする。



「アリスさん、たまには動いた方がいいですよ。置物が馬車に乗ってるみたいです」

「うん、まあ、そうなんだけどさ」



 そう言いながら、アリスは窓から外を見回した。

 街道を行き交う馬車や、遠くに見える大きな街などが見える。



「……こうやって見ると、世界って広いんだね」

「そうですね。俺も遠征に出るとそう思います」



 気持ちよさそうに窓から顔を出すアリスを見て、テオドールが目を細めた。

「何かあったら呼んでください」と言って、馬に乗って去っていく。


 アリスはしばらく外をながめた後、ちょこんと座り直した。

 魔法書を再び広げる。



(もう少し読もう)



 ちなみに、領地経営については、とりあえず着いてから考えることにした。

 実際に見てみないと、よく分からないことも多いからだ。



(今考えたところでどうしようもないしね)



 とりあえず到着したらがんばろう、と思いながら、再び本に没頭する。



 *



 旅の3日目あたりから、景色が変わってきた。


 大きな街は見なくなり、小さな街や村などを見るようになった。

 街道も人が減り、周囲の景色も山野へと変わっていく。



(なんか雰囲気がちょっと変わってきた気がする)



 周囲の変化ともに、アリスは1つ違和感を覚え始めた。



(……なんか、テオドールが変なんだよね)



 常に気にしてくれるし、面倒も見てくれる。

 冗談を言ったり、からかってきたり、パッと見、いつも通りのテオドールだが、

 ふとした拍子に見せる表情が、どこか暗い気がする。


 考え込むような顔をしていることも多く、話しかけても気が付かないこともあった。

 2年ほどの付き合いだが、こんな彼は初めて見た。



(何かあったのかな……?)



 聞いてみようかと思うが、聞く機会もないまま、旅を続ける。



 *



 そして、4日目の午後。

 アリスたちは、ヴァルモア領のすぐ隣にある、小さな街に到着した。


 ここで、テオドールを除く騎士3人は王都に戻った。

 ここからアリスが住む予定の城までは、テオドールと2人で行くことになっているらしい。




 ――そして、この日の夜。

 アリスとテオドールは、翌日の相談をすることになった。

 泊っている宿の食堂に集合し、テーブルを挟んで向かい合って座る。


 ランプの光の下、テオドールが地図を広げた。



「明日向かうのは……この村です」



 アリスは彼の指先に目をやった。

『カスレ村』と書いてあり、魔の森のすぐ近くだ。


 テオドールによると、明日の午前中、ここから迎えが来るらしい。


 アリスは身を乗り出して地図をながめた。



「わたしの住むお城ってどこにあるんだろう?」



 テオドールが、村の近く、森の入って少し進んだ場所を指差した。



「このあたり、と聞いています」

「入口かと思っていたけど、少し奥なんだね」

「……そうですね」



 テオドールは相槌を打つと、真面目な顔でアリスを見た。



「念のため確認しておきたいのですが、アリスさんは攻撃魔法が使えますか?」



 万が一のことを考えて、アリスの戦闘能力を押さえておきたいらしい。


 彼女は思案に暮れた。


 『攻撃魔法』とは、敵にダメージを与えることを目的とした強力な魔法だ。

 使うためには、膨大な魔力と才能が必要で、使える者はごくわずかだ。


 アリスは魔法研究者なので、魔法陣そのものは作ることができる。

 でも、作るのと使うのは話が別だ。



(そもそも攻撃魔法なんて使ったことがないんだよね。専門外だし)



 考え込むアリスを見て、テオドールが安心させるように微笑んだ。



「大丈夫ですよ。もし戦闘になったら、すぐに隠れてもらえれば問題ありませんから」

「わかった、ありがとう」



 うなずきながら、アリスは思った。

 これを機に、なんかすごい攻撃魔法の魔法陣とか研究してみるのも面白いかもしれない、と思う。




 *




 そして、この翌日の昼前。

 アリスたちが泊っている宿の前に、1台の幌付きの馬車が停まった。

 のんびりとした雰囲気の中年男性が降りてくる。


 アリスとテオドールを見て、彼は人が良さそうな笑みを浮かべた。



「初めまして、私はカスレ村の村長をやらせていただいている者です」

「はじめまして、領主のアリスです」



 いい人そうだな、と思いながらアリスが挨拶すると、村長が少し驚いた顔をする。




 その後、3人は村に移動することになった。


 テオドールは、村長の乗って来た馬車にアリスの荷物を積むと、自らは馬に乗った。

 アリスは、御する村長の隣にちょこんと座る。



「では、行きましょう」



 村長が鞭を当てると、馬がいなないた。

 どんよりと曇った空の下、街を出て、森の中を伸びる街道を進み始める。


 生暖かい風を頬に感じながら、アリスは周囲を見回した。

 今まで石で作られていた街道は土へと変わり、人が全くいない。



(行く人があまりいないのかな)



 アリスがキョロキョロしていると、村長がのんびりした感じに口を開いた。



「先ほどは驚いてしまってすみません。予想よりお若かったもので、つい」

「大丈夫です。気にしないで下さい」



 そう言いながら、アリスは思った。

 そういえば、前の領主ってどんな人だったんだろうか。


 馬に揺られながら、アリスが尋ねた。



「前の領主ってどんな方だったのですか?」

「前の領主様……ですか」



 村長が考え込んだ。



「……そういった方はいないですね」

「え? わたしの前に領主だった人ですよ?」

「はい、私が知る限り、領主様はアリス様が初めてです」



 村長によると、なんと今までヴァルモア領に領主がいたことはないらしい。



「村のことは自分たちで行っておりましたので」



 税金も、王都から手紙が来るので、

 その通りに穀物を集めて、隣の領に納めに行くらしい。



「ですので、お上から手紙が来て、ここまで迎えには来たのですが、領主様がどんなものかよく分からずにおりまして……」



 村長が恥ずかしそうに言う。



(え……)



 アリスは呆気にとられた。

 村長の話を、頭の中で整理する。


 そして、彼女は思わず叫んだ。



「わたし、いらないじゃん!」



 隣に座っていた村長がビクッとする。

 近くの枝に停まっていたカラスが、アリスに同意するように、カア、と鳴いた。






また夜投稿します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ