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天才魔法オタクが追放されて辺境領主になったら、こうなりました  作者: 優木凛々
第5章 カスレ村へ

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11.魔法の鞄(改)

 

 ロッテが一緒に行くと決まり、

 大盛り上がりの中、集会は解散することになった。


 最後にテオドールが立ち上がり、

 魔の森の奥の村や、アリスとテオドールが来たことを他に漏らさないようにと念を押す。


 村長がうなずいた。



「わかりました。そもそも村から出ること自体ほとんどありませんからご安心ください」



 そして、集会が終わると、アリスとテオドールは集会所を出た。

 外は涼しい夜風が吹いており、澄んだ空には星々が静かに瞬いている。


 ランプを掲げて歩きながら、テオドールが心配そうに声を潜めた。



「さっきのあれ、本当に大丈夫ですか。ロッテさん、どう見ても戦えない普通の村娘ですよ」



 アリスはうなずいた。



「あの鞄を改造すれば、たぶん大丈夫だと思う」

「……アレですか」

「うん、とりあえず、やってみよう」



 その後、2人は村の端にある倉庫へと向かった。

 天井にランプを吊るすと、真ん中にミスリルの革鞄を置く。


 アリスはそれを眺めながら口を開いた。



「まず、これに椅子を取り付けてみたらどうかと思うんだよね。背もたれと足置きがあれば楽になりそうって話、覚えてる?」



 テオドールが、なるほど、という風にうなずいた。



「覚えています。やってみましょう」



 彼は外に出ると、のこぎりやトンカチ、ぼろぼろの椅子を持って戻ってきた。

 薪にする予定だったものを、もらってきたらしい。


 彼は、椅子の後ろの足をのこぎりで切り落とした。

 倉庫にあった縄で、鞄を椅子の座面を固定してみるが、どうもグラグラする。



「難しいですね……」



 彼らは試行錯誤を始めた。

 テオドールが縄を倍量使ってぐるぐる巻きにして、ようやく安定する。



「できましたね」

「うん、じゃあ、やってみよう」



 アリスは椅子に座ると、そっと魔力を流した。

 鞄がうっすらと黄金に光ると、ふわりと1メートルほどの高さまで浮かび上がる。


 アリスは軽く身じろぎをした。

 背面に寄りかかったり、足置きに足を置いたりする。



「これだったらだいぶ楽なんじゃないかな。足を付くところがあるし、寄りかかれるだけで結構違う」



 テオドールは考え込んだ。



「これだと魔獣に襲われたら危ない気がします。座っているだけで、丸腰ですから」



 確かに、とアリスが腕を組んだ。



「下手したら標的にされちゃうかもね。驚いたら落ちちゃいそうだし」

「もう少し安全面を強化した方が良さそうですね」



 ゆっくりと椅子を地面に降ろしながら、アリスが考え込んだ。

 しばらく考えた末、ゆっくりと口を開く。



「椅子じゃなくて、箱をくくりつけてみたらどうかな」

「箱」

「うん、箱に入れば、攻撃を防げそうだし」



 2人は倉庫の奥から、人が1人、足を曲げて座れる大きさの箱を見つけた。

 テオドールが、鞄と箱を見比べる。



「この2つを固定するとなると、ちょっと工夫が要りそうですね」



 彼は外に出ると、どこからか材木をもらってきた。

 材木や縄などを器用に使いながら、鞄と箱を固定していく。


 アリスが感心しながら言った。



「テオドールって、器用だね」



 テオドールが、口元が緩むのを隠すようにうつむいた。



「……昔、家でよくやっていたんです」



 彼によると、隣国に移住したばかりの時は家に余裕がなく、

 こうした大工仕事も家族全員で行っていたらしい。



「テオドールって兄弟いるの?」

「はい、兄と姉が5人います」

「5人!」

「ええ、お陰で空気を読んで動くのが上手くなりました」



 そんな話をしているうちに、鞄と箱が固定された。

 試しにテオドールが箱の中に入る。



「どう?」

「俺だとギリギリですけど、ロッテさんなら余裕だと思います」



 アリスは鞄に触れると魔力を流した。

 箱がややグラグラしながら、ゆっくりと浮き上がった。


 その後、アリスは倉庫の中で箱を動かしてみた。



「いけそうだね。乗り心地はどう?」

「少しグラついていますが、釘を打ち付ければ何とかできると思います」



 その後、アリスも中に入ってみた。

 四方を囲まれているため圧迫感はあるが、なかなか快適だった。



「蓋を閉めたら完璧じゃないかな」

「そうですね、あとは空気穴と覗き穴を付けるくらいですか」



 アリスは、出来上がった“飛ぶ鞄”ならぬ“飛ぶ箱”をながめた。

 ひとまずは解決したな、と思う。


 ふと壁の時計を見ると夜の11時。

 出発は明後日の早朝で、あと1日くらいある。


 アリスは思案した。



(このままでもいけそうだけど、もう少し何かできる気がする)



 アリスは、隣に立つテオドールを見上げた。



「もう少し色々試してみたいんだけど、付き合ってくれる?」

「もちろんです」



 テオドールが少し楽しそうにうなずく。


 その後、2人は深夜まで作業を続けた。






ちなみに、この翌日アリスたちは村の防御力強化に努めています。

後から閑話に出てくるのですが、気になる方もいらっしゃるかと思って先に書いておくことにしました。

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