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天才魔法オタクが追放されて辺境領主になったら、こうなりました  作者: 優木凛々
第5章 カスレ村へ

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10.千里の道も一歩から

 

「……あのう」



 遠慮がちな声が聞こえてくる。

 アリスが振り返ると、そこには村長の娘ロッテが緊張した様子で立っていた。


 アリスが首をかしげた。



「はい、なんでしょう?」

「ええっと……」



 ロッテが緊張したように唾をのみ込んだ。



「魔の森の奥にある村の話、少し聞かせてもらえませんか」

「はい、いいですよ」



 アリスがうなずいた。

 そういえば、ロッテが一番真剣に聞いていた気がする、と思い出す。


 テオドールは村に手伝いに行くことになり、アリスがロッテに話をすることになった。

 アリスたちが泊まる予定の家に入ると、2人は向かい合って座った。


 ロッテが緊張したように尋ねた。



「森の奥にある村は、本当に豊かなのでしょうか?」

「はい、トマトやレタスなど、毎日食べきれないほど収穫されていて、ケチャップとか作ってます」

「そうなのですね。――あと、どんな人がいらっしゃるのですか?」



 アリスは考え込んだ。



「……男性と女性が6対4くらいで、若い人が多いですね」

「まあ!」



 ロッテが目を見開いた。



「あの、みなさんご家族でいらっしゃるのですか?」

「いえ、家族がいる人も独身の人もいます。特に男性は独身の方が多いと思います」

「……っ!」



 ロッテが軽く身を乗り出した。

 人に興味があるようで、職業や仕事、外見についてなど色々と尋ねてくる。


 そして30分ほどして、ロッテが立ち上がった。



「ありがとうございます。アリス様、だいぶ分かりました」



 そう言ってお辞儀をすると、考え込むような顔で出ていく。

 アリスは首をかしげた。



(……何だったんだろう?)



 なんか質問が偏っていた気がすると思いつつも、とりあえず魔法で塀を補強しようと、外に出る。



 *



 そして、その日の夜。

 アリスたちは『集会所』という名前の掘立小屋に移動した。

 村長と村の主だった者たち数名と共に、古い大テーブルを囲む。

 ロッテも来ており、集会所の隅に静かに腰かける。


 村長が軽く咳払いをすると、改まったように座り直した。



「……では、先ほどの話をしよう」



 その後、村人たちは話し合い始めた。

 昼間よりは少し落ち着いてはいるものの、やはり意見は分かれている。



(うーん、なんかさっきとあまり変わらないな……)



 堂々巡りする話し合いを聞きながら、アリスは思案に暮れた。


 基本的に、魔の森が危険だ、というのが前提にある気がする。

 実際は結界があるので危険はないんだが、口では言えても、証明するのは難しい。



(なんか、いい方法ないかな……)



 そして、彼女はふと思った。

 魔法陣を開発する時のように、まずは小さく始めてみてはどうだろうか。



(そうだよ、最初から全部解決したり、みんなで引っ越しすることを考えるから難しいんだ)



 アリスが口を開いた。



「あの、試しに誰か来てみたらどうでしょうか」

「…………へ?」



 その場の全員が目をぱちくりさせた。



「来てみたら……とは?」

「はい、1人か2人、実際に古城に行って暮らしてみるんです。それで安全だったら、希望者が来ればいいんじゃないですか」



 魔法陣も、まずは小さいものを作って実験して、上手くいったら大きくする。

 移住もそうやれば上手くいくのではないだろうか。



 アリスの言葉に、村長が考えてもなかったという風な顔をした。

 何人かが「なるほど」とつぶやく。


 その場の様子を観察していたテオドールが控えめに口を開いた。



「悪くないアイディアではないでしょうか。実際に見てみないと分からないことも多いですから、良い判断材料になるかと」



 すると、隅で黙って話を聞いていたロッテが顔を上げた。

 少し考えるような顔をした後、覚悟を決めたような顔で立ち上がった。



「行きます、私」

「…………え?」



 村人たちが目をぱちくりさせた。

 その場がシンと静まり返る。


 村長が動揺しながら口を開いた。



「い、行くって、お前……」

「はい、実際に行って、この目で確かめてきます」



 村長が目を見開きながらガタンと立ち上がった。



「ま、待ちなさい! な、なぜ……」



 ロッテが父親を静かに見た。



「私、ずっと思っていたの。何かを変えなきゃいけないんじゃないかって。同じように考えている若い人も多いわ」

「……」

「でも、誰かが踏み出さないと、みんな怖くて動けない」



 だから、とロッテが続けた。



「私が行くわ。行って、どういうところか見てきます。私の話を聞いて、行くかどうか決めればいいわ」

「い、いや! わしが行く! 村長であるわしが行った方がいい」



 村長の必死の言葉に、ロッテが首を横に振った。



「いいえ、父さんはこの村の村長よ。ここは、娘である私が行くべきだわ」



 ロッテの強い覚悟を感じる言葉に、村人たちが感動したような顔をした。

 さすがは村長の娘だ、とつぶやき合う。


 ロッテは、くるりと顔を横に向けると、アリスとテオドールを見た。

 覚悟を決めたように言う。



「帰るとき、どうか私も一緒に連れていってください。覚悟はできております!」

「…………は?」



 アリスは呆気にとられた。

 彼女を連れて帰るなんて、全くの想定外だ。


 チラリと横のテオドールを見ると、彼も困惑の表情を浮かべていた。

 その頬には「さすがに無理です」と書いてある。



(でも、待てよ……)



 アリスは、村人たちを見た。

 みんなロッテの献身に感動して、行くことに肯定的になっている。

 ここで水を差すのは良くない気がする。



(まあ……なんとかなるか)



 アリスは思った。

 研究を進める時も、ノリと勢いが大切なことがある。

 きっと今がそのときだ。

 幸いミスリルの鞄もあるから、あれを改造すれば、たぶん何とかなる。



(よし、決めた)



 アリスは顔を上げると、大きくうなずいた。



「分かりました。では一緒に行きましょう」



 アリスの言葉に、テオドールがピシリと固まった。

「マジですか」という顔でアリスを見る。


 そんな彼を他所に、ロッテが感謝を込めてアリスの手を握った。



「ありがとうございます! 私がんばります!」



 周囲から「がんばれよ!」といった歓声が上がる。

 アリスが真面目な顔で口を開いた。



「こちらにも準備が必要ですので、出発は明後日の朝にしたいと思います」

「ええ、もちろんです! 私も準備いたします!」



 ロッテが気合を入れるように言う。


 周囲から「がんばれよ!」「よろしくお願いします!」と言った歓声や拍手が沸き起こった。

 集会所は大盛り上がりだ。


 そんな中、テオドールが不安の色を浮かべた。





ロッテちゃんは20歳くらい、彼氏募集中です


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