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天才魔法オタクが追放されて辺境領主になったら、こうなりました  作者: 優木凛々
第5章 カスレ村へ

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08.困窮するカスレ村

 

 オオカミの撃退後、

 ケガ人の手当てをしたり、塀を魔法でとりあえず塞いだりすること、約1時間後。



「本当にありがとうございました」

「命拾いしました」

「なんとお礼を言ったら良いのか……」



 アリスとテオドールは、村の中心にある土の広場に立っていた。

 2人の前には、村長を初めとした村人たちが並んでおり、深々と頭を下げている。



「もうダメかと思ったら、テオドール様が魔獣どもを蹴散らしてくださいまして……」

「アリス様の魔法も、本当にすごかったです」

「おねえちゃん、かっこいい!」



 村人たちが、キラキラした目で2人を見る。

 アリスがきまり悪げに頭を掻いた。



(なんか……ちょっと恥ずかしいな……)



 こういうのはどうも慣れない。

 テオドールが、話題を変えるように口を開いた。



「ところで、何かあったのですか? 3カ月ほど前は柵がなかったと思うのですが」

「ええ、実は最近、森から魔獣が出てくるようになりまして……」



 1か月ほど前から、村の周辺に大きめの魔獣が出てくるようになったらしい。



「急遽柵を作って対応しているのですが、数が増える一方なんです」

「畑も踏み荒らされてしまって……」



 村人たちが疲れ切った顔をする。

 包帯を巻いている者もおり、どうやら怪我人も出ているらしい。


 話を聞きながら、テオドールが考え込むように視線を伏せた。

 しばらく黙った後、尋ねる。



「……なぜ魔獣が増えたのか、何か心当たりはありますか?」



 村長が首を横に振った。



「わかりません、ご存じの通り、魔の森は得体のしれない魔獣の巣窟ですから」



 村長の言葉に同意するように、村人たちが身震いする。



 *



 その後、アリスは泊まっていた家の倉庫に魔法インクを取りに行くことになった。

 村長が家と倉庫の鍵を持ってきてくれる。



「どうぞ、これが倉庫のカギです」

「ありがとうございます」



 アリスは鍵を受け取りながら、村長を見た。

 相変わらず人が良さそうではあるが、頬がこけている。



(……なんか、痩せたな)



 彼女はお礼を言うと、テオドールと共に倉庫に向かった。

 歩きながら、声を潜める。



「なんか大変なことになってるね」

「そうですね……顔色の悪い人が増えましたね」



 テオドールも深刻そうな顔で言う。

 塀を直すのを手伝いながら聞いたところによると、魔獣が増えた影響で遠くの畑に行けなくなり、食料が不足しているらしい。



「あと、増税があるみたいですね」

「そうなの?」

「はい、村長さんが頭を抱えていました」



 アリスは眉間にしわを寄せた。

 あの感じの悪い国王と王妃の仕業だな、と思う。



(あの人たち、ロクなことしてないんだね)



 2人は倉庫の前に到着すると、鍵を開けて中に入った。

 広い倉庫は、ガランとしており、隅の方に、アリスが持ってきた荷物の箱が積んである。


 テオドールは箱を床に並べると、アリスを見た。



「俺、村を手伝ってきます。村長さんとも少し話したいですし」

「うん、いってらっしゃい」



 アリスはゴソゴソと魔法のインクを探し始めた。

 読みかけの本や古代魔法辞典などを見つけ、参考になりそうなので持っていくことにする。


 革鞄に荷物を詰めながら、アリスは思案に暮れた。



(この村、たぶん相当ピンチだよね)



 魔獣に襲われ、食べ物は足りず、税金まで増える。

 死人がでてもおかしくない。



 アリスは、王宮から追い払うために押しつけられた、形ばかりの領主だ。

 でも、親切にしてもらったことを思えば、この状況を何とかするべきではないだろうか。


 荷物を詰め終わると、アリスは、パチン、と鞄の留め金をかけた。

 物置の外に出て、テオドールを探して歩き始める。


 歩きながら、彼女は考え込んだ。


 魔法で高い壁を作ることも考えるが、

 そもそも土地が痩せていることを考えると、根本的な解決にはならないだろう。



(となると……村ごと古城に移住ってのはどうだろう……?)



 古城は食べ物もいっぱいあるし、何より結界があって安全だ。

 ビクトリアも受け入れたいと思っている。



(なんか良さそうな気がする)



 そんなことを考えながら、村の中央の広場に近づくと、テオドールがいるのが見えた。

 村長や村人たちと深刻そうに何か話している。


 アリスたちを見て、彼は笑顔になった。

 村長も人が良さそうな笑みを浮かべる。



「荷物は見つかりましたかな?」

「はい、お陰様で」



 村長が、「それは良かったです」とニコニコ笑う。



 村長の顔を見ながら、アリスは思った。

 自分が色々考えても仕方ないし、とりあえず本人たちに聞いてみよう、と。


 彼女は口を開いた。



「あの、村長さん、実は大切な話があるんです」

「大切な話……?」



 村長が目をぱちくりさせた。

 テオドールが、「え、まさか今ここで言うんですか」という風に目を見張る。



「ええっと、なんでしょう?」



 戸惑う村長に、アリスが真面目な顔で言った。



「村長さん、引っ越しする気はありませんか?」

「……え、引っ越し?」



 村長が困惑の表情を浮かべた。



「ええっと、一体どちらにですかな?」

「魔の森の奥です」

「え?」



 アリスが、木々が禍々(まがまが)しく揺れる森の方を指さした。



「あっちの魔の森の奥に、村があるんです」

「……………………え、村?」



 村長が、ポカンと口を開けた。

 村人たちも呆気にとられたような顔で固まる。


 その場がシンと静まり返るなか、

 テオドールが「あなたという人は……」と言いたげな苦笑い浮かべた。





誤字脱字報告ありがとうございます!

助かっております (*'▽')

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