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天才魔法オタクが追放されて辺境領主になったら、こうなりました  作者: 優木凛々
第5章 カスレ村へ

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07.カスレ村の攻防

 

 出発して3日目の朝。

 2人は、野営の跡を綺麗に片付けると、再び森を進み始めた。

 旧街道をひたすら進んでいく。


 ときおり出てくる魔獣と戦いながら、アリスは首をかしげた。



「なんか魔獣増えてない?」

「そんな気がしますね」



 以前であれば、森の入り口が近づくにつれ、魔獣の数がどんどん減っていた。

 しかし、今回は全く減る様子がない。


 そして、戦いながら進むこと、しばし。

 目の前が明るくなってきた。出口だ。


 アリスはホッと胸を撫でおろした。



(良かった、今回は早かった)



 ちらりと横をふよふよと浮く革鞄を見て、たぶんこれのお陰だよね、と思う。



(案外活用の範囲が広いのかもしれない)



 その後、2人が森を抜けると、少し先に以前滞在した小屋が立っていた。

 ドアを開いて中に入ると、ガランとした部屋が少し薄汚れていた。

 暖炉には、そこまで古くなさそうな炭が残っている。


 アリスは暖炉の前にしゃがみ込んだ。



「誰かここに来たのかな」

「……そうかもしれませんね」



 アリスの後ろで、テオドールが警戒するように部屋の中に素早く目を走らせる。


 その後、2人は小屋を出てカスレ村に向かった。

 アリスはキョロキョロと周囲を見回した。



(なんか、すごい久し振りな気がする)



 村が遠くに見える場所まで来ると、アリスの目に丸太で作られたと思わしき柵が映った。

 おそらく人の背丈より高いくらいの高さで、村をぐるりと囲んでいるように見える。


 アリスが首をかしげた。



「あんな柵、あったっけ」

「いえ……前は低めの石垣だったと思います」



 そう言いながら、テオドールが立ち止まった。

 シイッと人差し指を口元に当てる。



「……何か聞こえませんか」

「え……?」



 アリスは音を集めるように片手を耳元に当てた。

 特に何も聞こえない。



(わたし、耳悪いのかな?)



 そして、更に耳を澄ませようとした、その瞬間。



 ……うわあああ!!!



 風に乗って、人の悲鳴が聞こえてきた。

 魔獣のうなり声のようなものも聞こえてくる。



「……え!?」



 アリスは思わず目を見開いた。

 とっさのことに立ちすくんでいると、隣でテオドールが素早く動き出した。



「アリスさん、急ぎましょう!」

「う、うん!」



 アリスはハッと我に返ると、慌てて走り出した。

 転びそうになるものの、並走している鞄につかまって何とか耐えつつ、全力で駆け抜ける。


 そして、村がよく見える場所に到着して、彼女は息を呑んだ。

 オオカミのような魔獣の群れが村を囲んでいる。

 見ると、柵が一部壊れており、鍬や鋤を持った村人が懸命にオオカミのような魔獣と戦っているのが見える。



「ええっ!」



 目を見開くアリスを、テオドールが鞄ごとすくい上げて風のように走り出した。

 オオカミたちの少し後方に素早くアリスを降ろして剣を抜く。



「アリスさん、魔法お願いします!」


 そう叫ぶと、彼はすごいスピードで走りだした。

 一瞬でオオカミ数匹を切り飛ばす。


 アリスはポケットから素早く魔法陣の紙を取り出すと、魔力を込めて詠唱した。



起動カンターレ水球アクア魔法陣スフェアラ】!



 一瞬でアリスの周囲に無数の水の小球が浮かび上がった。



「行け!」



 アリスの声を合図に、水球がオオカミたちめがけて矢のように襲い掛かる。



 ギャアアア!



 オオカミたちが叫び声を上げた。

 次々と水球に体を撃ち抜かれて倒れていく。


 アリスを襲おうとする個体もいるが、飛びかかる前にテオドールに切り伏せられる。



 キャイン!



 村を取り囲んでいたオオカミたちが怯えたように退却していく。


 テオドールは素早く壊された塀の中を覗き込んだ。

 緊迫した顔でアリスの方を向く。



「中にかなり入ってます!」

「え!」



 アリスは急いで鞄と共に塀の中に入った。

 塀の中はさらに激しい唸り声や怒号が響いていた。


 村のあちこちで、魔獣と村人が戦っており、地面に倒れている人もいる。


 テオドールが塀の付近にいた村人数人に叫んだ。



「塀をふさいでください!」

「わ、わかった!」



 村人たち数名が必死に置いてあった丸太で塀をふさぎ始めた。



「俺、行ってきます!」



 テオドールが瞬く間に村の中に走り込むと、村人たちを襲っているオオカミを一掃していく。

 そのあまりの人間離れした様子に、アリスはポカンとした。



(すごい……)



 そして、オオカミはテオドールに任せて、自分はケガ人を助けようと歩き出した、その瞬間。



「キャー!!!」



 横の物陰から女性の悲鳴が聞こえてきた。

 見ると、そこには獰猛なうなり声をあげるオオカミがいた。

 その前には、ミルフィくらいの女の子がおり、目を見開いて動けなくなっている。



「……っ!」



 アリスは反射的に持っていた鞄に魔力を込めた。



「行け!」



 オオカミに向かって射出する。



 シュンッ!



 鞄はオオカミめがけて空気を切り裂くように飛んでいった。



 ガンッ!



 オオカミが一瞬で吹っ飛ばされ、近くにあった家の壁に激突して動かなくなる。


 アリスは女の子に駆け寄った。



「大丈夫?」

「う、うん……」



 女の子が目を見開きながら、こくこくとうなずく。

 そのとき。



「やった! 倒したぞ!」

「これで最後の奴だ!」



 という声が聞こえてきた。

 ワー! という歓声が上がる。


 アリスがその声の方向を見ると、広場で村人たちが勝どきの声を上げていた。

 女性たちが慌てて倒れている男性に駆け寄るなど、手当てを始める。



(危ないところだったっぽいけど、とりあえず良かった)



 ホッとするアリスに、テオドールが剣の血を払いながら近づいてきた。





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