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天才魔法オタクが追放されて辺境領主になったら、こうなりました  作者: 優木凛々
第5章 カスレ村へ

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04.テオドール、アリスにドヤ顔をされる(1/2)

 

 カスレ村に向かう、当日。

 まだ暗い早朝。


 旅の服装をしたテオドールが、1人朝靄に包まれた城門の前にいた。

 背中に荷物を背負い、手には食堂で渡された昼食を提げている。


 まだ星の瞬いている空を見上げながら、彼は口角を上げた。



(遠出日和だな)



 実を言うと、彼はカスレ村行きを心待ちにしていた。

 理由は、アリスと終日一緒にいられるからだ。



(最近、ゆっくり話をする時間がなかったからな)



 テオドールの生活は、基本的に早寝早起きで、仕事はほとんど外でしている。

 一方のアリスは、遅寝遅起き、ほとんどの時間を地下の隠し部屋か研究室に引きこもっている。


 生活時間帯が違うため、同じ部屋で寝起きしているにも関わらず、あまり会うことがない。


 テオドールの方からこまめに研究室に会いに行ったりしているものの、

 それでも時間は限られている。


 故に、魔の森を突っ切るという危険なミッション付きであるものの、

 テオドールは密かに今回の遠出を楽しみにしていた。


 加えて、彼は腕試しがしたいと思っていた。

 古城に来てから、オーウェンやエマ、フレッドなど、手練れの騎士と毎日のように手合わせをしている。

 魔獣も多く倒しており、確実に強くなっていると感じている。


 今回の遠征は、良い腕試しになるだろうし、

 アリスが危なくなっても、難なく対処できるようになっているに違いない。


 そんな訳で、少し浮かれた気持ちで待っているわけだが……



「……遅いな、アリスさん」



 準備があると言って、ずいぶん先に出たはずのアリスが、なかなか来ない。

 待っているうちに、周囲がどんどん明るくなってくる。



「……もしかして、研究に没頭して行くことを忘れているんじゃないか……?」



 普通の人間ならありえないことだが、アリスだったら十分にありえる。

「これは探しに行った方がいいかもしれない」、と真剣に考え始めた――そのとき。



「……テオドール!」



 後ろからアリスの声が聞こえてきた。

 パタパタという足音が聞こえてくる。



(……良かった)



 ホッとしながら振り返ると、アリスが走ってくるのが見えた。

 小さなリュックサックを背負い、手には大きな四角い鞄を提げている。



(なんだあれは……?)



 テオドールは首をかしげた。

 見たことがない上に、やたらと大きい。



(まさかあれを持っていく気か……?)



 そんなことを考えるテオドールに、アリスが歩み寄った。

 横に鞄をトスッと降ろすと、彼を見上げる。



「お待たせ」



 まっすぐに見上げる青い瞳にやや照れながら、テオドールが微笑んだ。



「いえ、大丈夫です。今来たところです。……ところで、その鞄で行くんですか?」

「うん」



 アリスは嬉しそうにうなずいた。

 しゃがみ込むと、鞄の留め金を外し、カパッと中を開ける。

 中は銀青色の金属製で、朝の光を浴びて静かに光っている。


 テオドールが、思わず目を見開いた。



「これ、前に俺が持って行った鞄ですよね」

「うん。革職人ノーマンさんが革張りにしてくれた」



 テオドールが小さく眉を寄せた。


 この鞄は、男性2人がかりで何とか持ち上がるくらいの重さで、

 テオドールですら身体強化魔法なしでは運べなかった。

 なぜアリスが軽々と持ち運べたのだろうか。



「……この鞄、確かものすごく重かったですよね」

「うん、実は調べたら面白い魔法陣が付いててさ」



 彼女は鞄を閉じると留め金を掛けた。

 鞄に触れながら軽く魔力を流す。


 そして、取っ手に手をかけると、軽々と持ち上げた。



「ね? この通り、魔法を通すと、ものすごく軽くなるんだ!」



 テオドールが目を丸くした。

 これは便利だ。



「すごいですね、重量制限はないんですか?」

「うん、ない。そういう原理じゃないから」



 そして、彼女はニヤリと笑った。



「でも、本番はここからだよ」

「本番?」

「うん、見てて」



 アリスは鞄を下にそっと置いた。

 取っ手の金属部分を触り、ゆっくりと魔力を流す。


 鞄がぼんやりと光を放ち始めた。

 周囲がうっすらと金色になる。

 そして――



 ふわり



 鞄がゆっくりと宙に浮きあがった。



「……っ!」



 テオドールは思わず息を呑んだ。

 目の前に浮かぶ鞄を信じられない気持ちで見つめる。


 鞄は地上から1mほどの高さまでゆっくりと上がった。

 そのまま、ふよふよと浮かぶ。


 テオドールは、思わず声を上げた。



「これ、まさか飛んでいるんですか!?」




(つづく)





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